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日本企業の不調は製品ではなく構造の問題

【海外ニュース】

Young and Global Need Not Apply in Japan
(New York Timesより)

若くグローバルな人材は日本では不要

【ニュース解説】

ニューヨークタイムズに、日本企業にとって、そして日本人にとって耳の痛い記事が掲載されていました。日本企業が海外で教育を受けた人材を求めていない実情が、克明に解説されていたのです。大企業の多くが、海外で大学を卒業した優秀な学生に対して門戸を閉ざし、外国人の優秀な若者にも狭き門となっており、それがひいては企業の国際的な競争力を低下させていると、同紙が批判しているのです。

日本企業が海外で教育を受けた人材をとらない理由にはいくつかあるようです。まずあげられるのが、就活制度であると同紙は解説します。

“Shukatsu” refers to the system in which Japanese companies typically hire the bulk of their workers straight from college and expect them to stay until retirement.
(シュウカツとは、日本の会社が新卒者をまとめて採用するシステムで、そうした人材の多くは定年まで会社に勤務すると期待されている)と同紙は説明します。従って、長い間海外で勉強してきた場合、就活のタイミングを逃してしまうというわけです。

次にもっと深刻な問題として指摘しているのが、日本企業が相変わらず日本のビジネス文化に合致した人材しか大切にしないという閉鎖的な体質がある点です。海外で教育を受けた人は、得てして日本のビジネス文化に適応できず、すぐに辞めてしまう傾向にあります。それ以上に、企業側も例えば自分の意見をはっきり表明し、自己PRをしっかりするといった海外で教育を受けた人の態度を好まず、お互いに阻害し合う傾向にあるのです。
Notoriously insular, corporate Japan has long been wary of embracing Western-educated compatriots who return home.
(悪名高い島国根性の日本企業は、長い間欧米で教育を受け帰国した同胞の受け入れに慎重だった)というわけです。

同紙は、こうした就職に不利な状況もあって、海外に留学する日本人の若者の数がどんどん減少していることも指摘します。例えば、韓国は、人口では日本の半分でありながら、日本より多くの学生を海外に送り出しているのです。

日本企業が国際的な競争力を失いつつある大きな原因は、こうした人材育成の問題と無縁ではありません。先日、海外からの留学生を積極的に受け入れているある大学の関係者と話をしたとき、そうした優秀な人材が日本企業に就職しても、すぐに失望して辞めてしまう実情について語ってくれました。そして、すぐに退職する海外からの人材をみて、ますます日本企業は海外への門戸を閉ざしてしまうのです。

異文化に対して柔軟でない限り、こうした悪循環を是正することは不可能です。そして、今韓国や中国、そしてインドなどからの新たな競争にさらされる日本企業は、世界中から優秀な人材を受け入れる懐の深さを持たない限り、ますます遅れをとり、世界のビジネスシーンから取り残されてしまうことは明白です。海外で教育を受けた人材や、海外からの人材を受け入れて育てるには、新卒を採用し教育する方法とは全く異なったノウハウが必要です。

日本企業に就職したのだから、そのやり方を学ぶのは、やってきた者の責任だなどという発想では人は育たず、そうした尊大な態度に耐えられなくなった優秀な人材は海外の競争相手に流れてゆきます。第一、もしそういっている日本人がアメリカや中国の企業に入社したら、アメリカ流、中国流に自分を器用に切り替えられるかということを考えれば、いかに異文化に順応することが困難なことかはよくわかるはずです。彼らに対するしっかりとした受け入れ態勢が必要なことは、日本企業が真の国際企業になってゆくための第一歩なのです。

Japanese companies here are missing out on the best foreign talent, and it’s all their fault.
(日本企業は海外のトップクラスの人材を逃している。これは自業自得なのですが)これは同紙が引用したシカゴ大学卒業の日本人のコメントです。日本企業が負け戦なのは、製品のせいではないのです。世界で闘える優秀な人材を育成できない社内構造の問題、そして日本の硬直した就職制度に起因する問題なのです。

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