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楽天田中投手のガッツポーズから見える business とパーソナルの境界線: 野球での一幕に business への教訓が

【海外ニュース】

Marlins, Braves almost brawl over Jose Fernandez’s home run. Braves didn’t like the 21-year-old phenom’s trot around the bases.
(USA Today より)

マーリンズとブレーブズ、ホセ・フェルナンデスのホームランで舌戦。ブレーブズは、21歳の天才が並足でベースを回ったことに憤慨

【ニュース解説】

去る9月11日のこの記事は、同日フロリダ・マーリンズとアトランタ・ブレーブズとの試合中、マーリンズのルーキー、ピッチャーのホセ・フェルナンデス選手が、6回裏にホームランを打ったときにおきた一悶着を報道しています。
彼はキューバからボートピープルとして亡命後、野球の才能を買われ入団します。そしてその日、彼はメジャー初の記念すべきホームランを打ったのです。
ところが、この祝福されるべき快挙をブレーブズの選手は憮然として眺め、本塁ベースに戻ってきたフェルナンデス選手に喧嘩腰で文句をつけました。
ブレーブズのマイク・マイナー投手もそれに加わるや、マーリンズのプレイヤーはこのキューバ出身のルーキーを庇うために駆け寄り、乱闘一歩手前の状況になったのです。

原因は、ホームランを打ったあと、フェルナンデス選手が早足ではなく、ゆっくりとダイヤモンドを回ったことでした。しかも、一打の直後、走ることなく球の行方を悠然と見たあとで、ブレーブズのベンチにも視線を送ります。これを、ブレーブズ側は侮辱ととったのです。

ここで思い出すのが、今年の日本シリーズ第2戦で、楽天の田中投手がピンチを切り抜け、巨人の打者ホセ・ロペス選手を三振で打ち取ったあと、ガッツポーズをしたことに、ロペス選手が不快感を示した一件です。

なんでこんなことにと多くの日本人は思ったかもしれません。でもこれは、business に対する考え方の違いなのです。

プロ野球で選手がプレーをすることは、business 行為に他なりません。
英語圏では business である以上、仕事をしっかりやり、それをこなすことは当然要求されること。プロジェクト全体が完了してそれを祝福することはあっても、ビジネス上の一つ一つのプロセスで、ガッツポーズをすることはあり得ません。
そのため、ロペス選手との対決で、田中がガッツポーズ、それも感情を込めたアクションをしたことは、相手からみると、単なるパーソナルな侮辱ととられてしまったのです。

‘Hey, man, you’re a kid but you’re in the big leagues. You need to do what big leaguers do.’
(おい、お前はまだガキか。メジャーリーグにいるなら、それらしくしろ)、ブレーブズのキャッチャーはそう言って詰め寄りました。そして後日、フェルナンデスは、自らの行為を恥じ、謝罪したのです。

英語の business という言葉には、我々が思う以上の深みがあります。
Nothing personal という言葉があるように、個人的感情ではなく、仕事として戦い、ビジネスと個人的な感情を完全に分けるのが常識なのです。
従って、ビジネスの中で個人的な感情表現を察知したとき、欧米ではそれは disrespect、つまり敬意のない子供っぽい行為ととられたり、侮辱ととられたりすることがあるのです。

日本の田中投手のガッツポーズと、キューバ出身のフェルナンデス選手の並足。両方のリアクションから、business に対する彼らの考え方が実はよく見えてきます。文化の違う環境での思わぬ落とし穴に注意というわけなのです。

<関連動画>
Marlins vs. Braves Benches Clear After Jose Fernandez Homers FULL VIDEO

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