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「なぜ日本人はグローバルな時代に適応できないのか」と批判されて

一人のアメリカ人が私のところにやってきて、
なぜ、日本人はこのグローバルな時代に適応できないんだろうと、ぼやいたことがありました。

え、グローバル? それって何?

そこで、私はとぼけてたずねました。

だって、今ビジネスの世界は正に様々な人が世界中から集まって、一緒に戦略を打ち立てて、業績をあげなければならないのに、日本人はどうしても自分の殻に閉じこもって、皆と一緒にプランを共有しようとしないよね。英語ができないから?それとも、日本の組織が「コンサーバティブ」で、グローバルな世の中に対応できないから?

え、英語が下手で、組織も対応できていないの?

私は再びとぼけて質問しました。

だってそうじゃない。僕は何度も彼らに意見はないかって会議で聞くんだけど、あいつら、黙ってるだけで何も喋りはしない。彼らだけでこそこそと何か話しているみたいだけど、その話している内容すら明かしてくれない。閉鎖的だよ。

つまり、プレゼンのときにうまく情報を聞き出せなかったんだ。

そうそう。本当に気まずい会議だったなあ。彼ら、僕の提案が嫌いだったんだろうか。なぜか率直に話してくれない。彼ら独特のプライドがあるのかなあ。なんか馬鹿にされたみたいで、いやな気分だったよ。

で、君はどうしたの?

だからさ。しょうがないから、僕は自分の意見を話して、質問はないかって聞いたけど何も反応がないので、僕の提案でいっても構わないんだねと、念を押したんだよ。すると、彼らは「そうだね、ちょっと考えてみるけどね」っていうだけなんだ。僕は時間がないんだよ。その場でちゃんと意見が欲しいんだよ。

なるほど、提案に対する反応がなくて困ったんだね。

そうそう、そうなんだ!

じゃあ、次回はこうしたらどうだろう。
まず、プレゼンをしてさ、その後で質疑応答をするときに、ちょっと休憩をとって、彼らに考える時間を与え、さらにその後で、彼らを小さなグループに分けて討議してもらえばいい。質問や懸念材料を書き出してもらうんだよ。そして、それぞれのグループの代表に発言してもらえばいい。

それで、彼らの意見を聞き出すことができるの?

そりゃそうさ。彼らは、組織の中に上下関係もあれば、他の人が異なる意見を持っているとき、自分だけが発言しても構わないか迷っているのさ。組織の和を保とうとするのは、彼らのビジネス文化だからね。だから、彼らだけの時間を与えて、グループで討議してもらい、まとめてもらえば、リラックスしてどんどん意見がでてくるはずだね。それって、日本人だけじゃない。文化の異なる人たちと仕事をするときの、情報を引き出す一つの戦略だよ。

フーム。

だからさ、グローバルってことは、そんな異なるビジネス文化を理解して、それぞれに、ちゃんと対応する知恵を持つことだよ。アメリカ人の君のコミュニッケーション・スタイルだけに従うことが、グローバルになることじゃないんだから。もちろん、日本人のほうも、自分たちだけのやり方に従っていてはダメだけどね。お互いに努力して歩み寄らなければ。

まあ、そうだけどね。それにしても、せめて英語だけでもうまくなってくれればいいのにね。

君の気持ちはよくわかる。確かに英語は今や世界言語だからね。
とはいえ、外国語を話すのは難しいよ。産まれてからずっと英語を話している君にはなかなか理解できないかもね。そういえば、君は彼らが日本語を喋るのを聞いてどう思う?

まるで機関銃みたいに速いよね。

それは、君が日本語を理解していないから、そう聞こえるんだよ。
日本人は英語は多少知っているけど、君が日本語を聞いているときと同じような気持ちで英語に接している。だから、君の方でゆっくり話したり、簡単な単語を選んでしゃべったりという努力は必要さ。それ、やってる?

だって、ゆっくり話すのはガキに喋ってるみたいでやりにくいよ。

大丈夫。まずそこからさ。君の日本人の同僚は喜ぶと思うよ。スラングも通じないから気をつけて。簡略にすることを常に心がけようよ。

<この会話で私がやったこと>
アメリカからやってきた彼は、日本人とコミュニケーションができず、うんざりしたため、日本人はグローバルじゃないと、いきなり批判からはじまった。
まず、彼の感情を抑えないと、問題の本質がみえてこない。

だから、多少とぼけて彼に質問を繰り返し、それで、本当の問題が何かを引き出したのです。

もし、私が、最初に彼が言った批判にただ対抗して、日本人の立場を説明しても、状況は悪化するだけだったでしょう。質問してガス抜きをしてやりながら、相手から正しい情報をとろうとしたのです。

ここでのアドバイスは、質問力を持つこと。感情に感情で対応しないこと。そして何よりも、相手の話したことの背景にある本当の問題点が何かを理解するように努めることです。

このような会話例、まだ続きます。次回もお楽しみに。

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