その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

エグゼクティブ・コーチング(27) 海外企業経営:「忠誠心」ではモチベーションはあがらない


企業が海外に進出するときに気をつけなければならないことはなんでしょう?

海外に企業が進出するときに、相手の国の法律上の問題や、安全面での配慮などを気にする企業は多くあります。
ですから、ここではそうした一般的な課題には触れません。
それよりも、企業が現地で成功するために必要なマネージメントスキルについて語ってみます。

まず、必要なことは、現地の社員のモチベーションへの配慮です。
現地社員の離職率を下げ、この会社で働くことが、いかに本人にとってやり甲斐のあることかと実感できる会社になれるかがキーポイントです。
その時に、考えなければならないテーマが、ロイヤリティ、すなわち忠誠心という考え方です。
日本企業は、企業への忠誠心を向上させることと、社員のモチベーションを向上させることを同一視し、時には混同します。

しかし、この考え方は日本企業独特のもので、ビジネスに「忠誠心」というエモーショナルな価値観を持ち込むことが、逆に現地の社員のモチベーションを下げてしまうということもあるということに気付いている人は多くないのではないでしょうか。

そもそもモチベーションとはいったい何でしょうか。
文化の異なる場所で人をマネージするとき、我々はまずその国の文化にとって何が社員のモチベーションを向上させるのかということを、しっかりと理解する必要があるのです。
そして、日本とは異なる文化背景でのモチベーション向上に見合ったシステム構築と、研修制度、さらには日々のマネージメントでのスキルビルディングに注力しなければなりません。
その土台の上に、企業としての「ニーズ」や売上げなどの目標設定を現地の組織にダウンロードしてゆく必要があるのです。

まず、異なる文化が存在することを認識し、どこが違い、どこを尊重するべきかを考えます。
例えば、アメリカの場合では、社員は自らのキャリアアップに直結するマネージメントを上司や会社に求めます。
つまり、会社人間として企業の全体観を把握するのではなく、その個人のプロとしての技能向上や、目標にいかに企業が真剣であるかという視点で、本人のモチベーションが上下するのです。
従って、そうした社員にいかに日本企業のビジョンや経営論、さらには日本流の仕事の進め方を教えても、それはモチベーションの向上とは無縁のものになってしまいます。

現地に合った組織造りのテーマに悩むのは、日本企業だけではありません。
例えば、あるフランスの企業で、常にフランスの本社から、現地の文化に未経験な者を現地のトップにもってくることで、多くの摩擦を引き起こしている例なども、私はみてきました。
同様に、日本企業では、いつまで立っても現地でその組織を担う人が育たず、日本人と現地の社員の双方が不満をもったまま、常に日本のヘッドクォーターからマネージメントクラスの人々が送られてくるケースも、よく知られた事実です。

こうした課題を、より前向きに解決し、現地の組織を育ててゆく第一歩は、なんといっても「価値観の違いを認め。それをスタートにして、いかに双方の文化が融合したハイブリッドな組織を造るか」ということにあるのです。

その第一歩である、異文化を認識することから、その文化に合った組織造りをいかに進められるかというテーマは、企業が海外に進出して成功するかどうかの大きな岐路ともなるのです。

その上で、現地の文化を理解しながら、本社のニーズを伝達し、業績を向上させてゆくノウハウを真剣に考えなければなりません。一見当たり前にも思える課題が充分にこなされていないのです。
次回は、そうしたステップについて、さらに考えてみたく思います。

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