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海外の人と仕事を進めるノウハウについて

“Intercultural communication is used to describe the wide range of communication processes and problems that naturally appear within an organization or social context made up of individuals from different religious, social, ethnic, and educational backgrounds.”

(異文化コミュニケーションは、異なる宗教や社会、民族、そして教育環境が生み出す課題やコミュニケーションのプロセスを幅広い視野でとらえて使用される言葉である。)
ウィキペディアより

世界のビジネス文化の多様性と意識の違い

「海外の人とどう働くか」というテーマを考えるとき、まず海外の人が日本人と仕事をするにあたって、「どのような点に不満を持っているか」を知っておく必要があります。
 
今まで内外を含め、4000人の企業エグゼクティブに対して、いかに日本人が海外で仕事をし、海外の人がいかに日本人と業務を共にするかというノウハウについて研修をしてきました。
その中で、海外の人が口を揃えて語るのが、「日本人と情報を共有することの難しさ」でした。しかし、このことを日本人側に伝えると、「十分に説明してあるのにどうしてだろう」と首を傾げます。
 
一方、日本人は海外の人に対して、「品質管理が雑で、物事の締め切りを守らない」と不満を言います。完璧な準備を求め、その上で仕事を進めたがる日本人からしてみると、まず動きながら調整をして仕事を進めようとする海外の人のビジネス文化に馴染めないのです。
一口に海外といっても、アジア諸国もあれば欧米もあり、そのビジネス文化は多様です。日本人が知っておかなければならないことは、”日本人の仕事のやり方も、その多様なビジネス文化の一つに過ぎない” という事実です。日本だけが特別でもなければ、仕事への取り組み方が秀でているわけではないのです。

ビジネスで世界に通じる2つのコミュニケーションのノウハウ

ここで、考えたいのは二つの異なる方策です。
一つは、「海外の人を ”海外から” ということで特別に意識するのではなく、同僚として仲間に受け入れてゆく」ことです。つまり、このことは日本人だけの機微の問題だからといって海外の人に情報を選んで伝えることは控えたいのです。情報をうまく共有するには、主観ではなく、客観的にその情報の背景やロジックを説明する必要があります。阿吽の呼吸ではなく、できるだけ詳細に理由や状況を伝える必要があるのです。
 
そしてもう一つは、「海外の人の文化背景や、ビジネスコミュニケーションの方法への理解と尊重の精神を養う」ことです。つまり、最初に日本の事情をオープンに共有し、日本の職場で「ガイジン」として相手を分け隔てるのではなく、同時に、海外から来た人の背景を尊重するという二つの異なるアプローチを共有させることが必要なのです。

文化の違いを補う確認方法

先にも触れましたが、ビジネス文化は、欧米とアジアでは著しく異なります。また、欧米でも、一例を挙げれば、ドイツとアメリカとでは水と油といってもいいほど、コミュニケーションの方法が異なります。
であれば、海外の人とうまくコミュニケーションをして、ビジネスを進めてゆくための方程式は存在しないのです。
 
ただ、一般的にみて、日本人は海外の人よりも詳細な質問や確認を相手にすることを遠慮しがちです。異文化環境では、相手と理解し合っているかを積極的に確認しない限り、誤解が累積するのです。また、仕事の途中で、うまく進んでいるかどうかを、具体的に伝え合うフィードバックを怠りがちです。日本語環境でのコミュニケーションスタイルは、英語に比べると、自らの意図を間接的に相手に伝え、一をいうことで十を理解してもらおうとしがちです。これが情報共有の不足へと繋がってゆくのです。
つまり、相手のコミュニケーションスタイルにいかに対応するかを、その人が所属する文化への理解を深めながらノウハウとして蓄積してゆかなければならないのです。その上で、日本人のコミュニケーションの方法を相手と共有しなければならないのです。
 
問題は、日本人が自らの文化について、それがあまりにも日常的なことなので、客観的に理解し、説明できないことです。
そのためには、彼らから積極的にフィードバックを受けることも必要です。彼らがどのように我々のことを思っているか、満足しているのか、あるいは誤解していないのか、常に言葉で確認するのです。この「言葉」で確認するという行為を繰り返すことで、お互いの意思疎通が促進されます。
 
異文化環境では、こちらが「おかしいな」と思っているときは、相手も疑問に思ったり不快に感じたりしているはずです。お互いにしっかり仕事をしてよい結果をだそうとしながら、コミュニケーション文化の違いに気付かないために誤解が拡大するのです。
オープンに意見を交換する中で、試行錯誤を繰り返し、双方が歩み寄るフェアな環境を創造する必要があるのです。
 

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外国人とビジネスをするためのテクニックを学ぶなら

『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊

*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

ビジネスシーンの英語コミュミケーションに悩む、すべての人に!

『エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~』山久瀬洋二エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~
山久瀬洋二 (著者)
IBCパブリッシング刊

*TOEIC では高スコアを取っていても、実際のビジネスの場では役に立たないという人が多いといわれます。それは TOIEC で高得点を取る技能に走って、最も大切な異文化コミュニケーション力を培っていないからです。異文化コミュニケーションの本質を習得できれば、中学英語と、そこに自らの仕事に関する専門用語を加えるだけで自分の意思を理解してもらえます。本書では、日本人の思考やビジネス文化に基づいて英訳することで生じる誤解などを解説し、文化の異なる相手と交流するスキルを伝授します。

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未来型のCore Competenceの創造とは

“China e car venture future mobility names brand Byton, eyes U.S.,Europe.”

(中国の未来型の自動車へのカーベンチャーはアメリカとヨーロッパを視野にバイトンというブランド名を)
ロイターより

“Byton has revealed an electric vehicle that it thinks presents a glimpse at the future of how we will drive and interact with cars.”

(バイトンは将来我々がいかに運転とデジタル上のインタラクションとを共有してゆくかというテーマを見据えた電気自動車を披露)
BBCより

Byton が自動車業界に本格参入

中国とヨーロッパ、そしてアメリカの頭脳を集め、自動車産業に新しい台風の目を創造しようという動きが注目されています。ロイター通信、BBC放送などが積極的に報道しています。コンシューマーテクノロジー分野での見本市で知られる CES(Consumer Electronics Show が、現在ラスベガスで開催されています。
そこで注目されたのが、中国の資本により BMW Apple などの技術者が共同して開発した新型の電気自動車 Byton でした。
Byton という名前は、Bytes on Wheels からきています。Byton の母体となる Future Mobility Corp. は中国の電気自動車開発会社で、ここに BMW の技術部門で活躍してきた Carsten Breitfeld 氏が中心となって制作してきたのが Byton という車です。

この車は、我々が日常触れているインターネットの世界を車に導入し、車とインタラクティブな環境との究極の融合を目指した製品で、開発センターは南京とカリフォルニアのサンタクララ、ミュンヘンにあります。そして、技術者の中には、Google やApple、さらには TeslaNissan に関わった人々までが含まれています。
Byton はまずアメリカとヨーロッパの市場で2019年にデビューし、その後販売ネットワークを拡張してゆくことになっています。もちろん中国も重要なターゲットです。

人材ネットワークが Core Competence のあり方を変える

このプレスリリースが物語ること。それは人のネットワークです。
今まで企業はその企業が持つ Core Technology(コアテクノロジー,基幹技術 を基に、その企業技術と文化をいかに大切にしながら海外に進出し、そのテクノロジーを海外に移植してゆくかというテーマに没頭していました。日本の企業はその典型です。ですから、海外に進出するとき、自らのスペックに対するこだわりが極めて強く、海外で採用した社員もそのスペックを学ぶことにプライオリティをおかされてきたのです。これが通常のグローバル企業の Technology transfer(技術移管)のあり方でした。そしてこの Core Technology によって育まれるのが Core Competence (強い競争力)であると考えてきたのです。この企業経営の土台が根本から変化しようとしているのです。
ある意味で日本人が一番苦手としている、海外の知恵とネットワークして、コンセプトを造り、そこに資本を投下して製品を作ってゆくという手法が Byton をはじめとした自動車業界をも席巻する世界各地のベンチャー企業の手法となっているのです。

昔、Silicon Valley(シリコンバレー)と Silicon Alley(シリコンアレー)のコラボという発想がありました。
ハイテク産業都市が集中するシリコンバレーで技術を開発し、もともと出版産業などが多くコンテンツを制作することのできるニューヨークの alley(路地)で技術にコンテンツを注入して製品化するというのが、電子ブックなどの開発の背景にあったのです。

自動車産業の場合、この Silicon Alley にあたるのがコアテクノロジーを有する既存の自動車メーカーと下請けネットワークでした。ここに世界中の未来型知識を導入することが、現在版の Silicon ValleySilicon Alley のコラボなのです。engine(エンジン)と chassisシャシ,車台)の技術にいかに世界の知恵と結合させ、integrate(統合)してゆくかが課題なのです。

日本の製造業の課題とは

そもそも、Byton はなぜ日本のマーケットをターゲットにしていないのでしょうか。おそらく日本は日本の自動車業界が既にネットワークしているため、進出が難しいと思ったからでしょうか。それとも、日本に進出するには日本独特のガラパゴス的な要望に応えてゆく必要があり、その手間とコミュニケーションの難しさを考えたとき、とりあえず日本はスキップしておいたほうが効率的と思ったのかもしれません。こうしたことから推測し、考えなければならない日本の産業に求められる将来像。それは、「世界の人材と自由に交流できるノウハウと人の養成」に他なりません。そして、日本のノウハウの輸出というスタンスから、日本のノウハウと世界の知恵との融合というスタンスに、製造業の戦略をシフトさせることから、新たなCore Competence(強力な競争力)を創造することが必要です。
そのための発想と組織構造を企業が育成してゆくことが求められているのです。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。

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100年経っても変えることのできなかった課題とは

United Nations

“What we demand in this war– is that the world be made fit and safe to live in, and that it be made safe for every peace loving nation which like our own, wishes to live its own life, determine its own institutions, be assured of justice and fair dealing by the other peoples of the world as against force of selfish aggression.”

(我々がこの戦争を通して求めること、それは我が国の国民同様に平和を求める全ての人々が、安全に生活でき、自らの生命と国家を維持し、利己的な抑圧によって他の人々が被害を受けない公正な世界を創造することでなければなりません)

1918年に発表された「14カ条」

2018年の新年にあたって、100年前を振り返りたいと思います。
ここに紹介したのは、ちょうど100年前の1月8日に、当時のアメリカ大統領ウッドロウ・ウィルソンがアメリカの議会で世界に向け提案した「14カ条の原則Fourteen Points)」と呼ばれる声明の序文の一部です。
1918年は第一次世界大戦が終結した年にあたります。
第一次世界大戦は、列強の植民地をめぐる覇権争いと民族運動とが引き起こした惨劇でした。それは、機関銃や毒ガス、戦闘機の導入など、過去にはない近代兵器がはじめて本格的に投入された殺戮戦だったのです。戦死者は2000万人にのぼりました。

そして、この戦争を通してヨーロッパ全土が荒廃する中で、世界の超大国へと成長したのがアメリカだったのです。ウィルソン大統領は、そんなアメリカの指導者として、戦争の再発を防ぐためにこの声明を発表したのです。この提案を元に発足したのが、現在の国連United Nations) の前身となる国際連盟League of Nations)だったことも知っておきたい事実です。

そこで注目したいことは、この14カ条の骨子です。そこでうたわれていることは、秘密外交の禁止開かれた交易や公海での航行の自由軍備の縮小、そして民族問題の解決への期待に他なりません。特に民族自決という課題の中では、混乱する中東情勢をそこに住む民族の自由意志で解決するべきだという意図が述べられています。

100年後も変わらない中東問題や軍拡問題

それから100年を経た2018年冒頭、この14カ条の声明からさほど世界が前進していない事実に我々は愕然とします。中東問題は以前よりさらに複雑になり、そこに住む人々の悲しみや怒りが、テロ行為をうみだし、それが新たな憎しみの連鎖につながっています。軍縮どころか、世界の主流は軍拡へと進みつつあります。
実は、14カ条の提案を受けて、さらにそれを前進させたのが、1928年に締結された不戦条約Kellogg Briand Pact)でした。
これは列強間で「国際紛争の解決の手段として武力を使わない」という条文で知られた国際条約です。この一文、どこかで聞いたことがありませんか?実はこの条文が法制化され、戦争放棄という第9条に取り込まれたのが日本国憲法だったのです。

しかし、不戦条約の精神はその後踏みにじられてしまいます。
第一次世界大戦から僅か20年で、それよりさらに多くの犠牲者を出した第二次世界大戦が勃発したのです。それは、1930年代になって世界中が軍拡競争へと走った末の結末でした。当時、国際連盟にしろ、不戦条約にしろ、違反した国への懲罰規程が曖昧でした。しかもそれぞれの国が他国への侵略はまずいとしながらも、自国の防衛のために武力を行使することは条約に抵触しないというスタンスをとったのも、不戦条約が有名無実になっていった原因でした。

戦後、日本は不戦条約の精神を取り入れた憲法を持つことができました。とはいえ、世界各国では戦後になっても自国の防衛という名目で軍備拡張や核兵器の開発競争が是認されました。そのつけが、北朝鮮問題や中東問題へとつながってしまいました。そして、日本もそうした新たな世界情勢への対応を模索する中で、着実に軍備を拡張してきたのです。

今、日本人も意識したい「14カ条」の精神

最後に、もう一つ注目しておきたいことがあります。
ウィルソン大統領の提言で発足したのが国際連盟ですが、それが発足したとき、アメリカは加盟しなかったのです。議会が条約を批准しなかったからです。当時、日本は国際連盟の憲章の中に人種差別の撤廃を盛り込むように主張していました。アメリカに根強かった日系人差別を念頭においてのことでした。
こうしたことがアフリカ系アメリカ人への差別などの人種問題を抱えていたアメリカの議会を硬化させたことも事実でした。
同時に、当時戦勝国であった日本の中国への進出には、列強の多くが譲歩し、その後の日中関係の悪化が第二次世界大戦への導火線の一つとなったことも忘れてはなりません。

ウィルソン大統領の14カ条の提案から100年。今、日本では憲法改正の論議も熱を帯びています。2018年が1918年から20年間の動乱の経験を我々が繰り返す起点の年になるのかどうかが問われています。そうした意味でも、この一年の内外の動きを注視してゆきたいものです。
全ての人にとって良い一年でありますように。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

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アメリカの動向に翻弄されるエルサレムに思いを寄せて

“The president declared Jerusalem as the capital of Israel, delivering on a campaign promise to his evangelical supporters.”
(大統領はエルサレムをイスラエルの首都と宣言。これは福音教会の支持者への公約に基づいている)

New Republic誌より

世界の反発を煽るエルサレムの首都宣言

エルサレムをイスラエルの首都として認め大使館を移動させるというトランプ大統領の決定に、世界が反発しています。この見出しにある evangelical supporters とは、福音教会に属する人々の支持者、つまりトランプ大統領の支持母体だった保守的なキリスト教(プロテスタント系)の人々のことです。

先週、シアトルから友人が来日しました。
彼とはここ数年同じプロジェクトの仕事をしています。
彼はエリトリア Eritrea という国からのアメリカへの移民です。紅海に面し、エチオピアやソマリアなどと国境を接するこの国は、古い歴史を持ちながらも近年は政情不安が続いていました。彼も若い頃にエリトリアからサウジアラビアに逃れ、そこで英語教育関連の会社に勤務しました。その後、私と共通の友人の経営する会社に勤め渡米。今ではシアトルで同社の社長をしています。つまり、彼は中東からアメリカに渡ってきた移民なのです。そして彼は敬虔なイスラム教徒 Muslim です。

そんな彼がエルサレムをめぐるアメリカの対応に憤ります。
京都で、彼とモロッコ人の友人、それに教徒在住のアメリカ人と夕食を共にしました。彼とモロッコ人の友人とは、イスラム教の戒律に従った食事、ハラールフード Halal だけしか食べることができません。そして、仕事をしながらも夕暮れどきには、メッカに向かいお祈りをします。実際は、1日5回はお祈りの時間があるのです。京都にも、そんなイスラム教徒が祈りのために集う場所があることを知りました。

エルサレムはイスラム教徒にとっても、キリスト教徒にとっても、そしてユダヤ教徒にとっても聖地なのです。長い歴史の中ではそこで数々の宗教的な対立もありました。しかし、多くの時代、彼らは共存し、交流も盛んだったのです。

危ぶまれる多民族の共存

京都に住むモロッコから来た友人は、ベルギーのアントワープに住んでいたことがありました。アントワープは、ダイヤモンドの取引で有名な都市で、その取引にはユダヤ系の人々が多く関わっています。エルサレムと同様に、そこでもユダヤ系とアラブ系の人々が同居しているのです。
「ベルギーにいた頃、そんなユダヤ系の奴らとも友達だった。子供同士お互いの家に行って遊んでいたよ」
彼はそう述懐します。
「アメリカでも同様さ。狂信的な人々を除けば、宗教の違いはさほど問題ではなかったんだよ」
そういう私の京都の友人はユダヤ系です。イスラエルといえばユダヤ系の人々が建国した国家です。しかし、実のところ、多くのユダヤ系の人は今回のトランプ大統領の決定に強い懸念をいだいているのです。

“Despite the mess in Washington—the swamp, it appears, not only has yet to be drained, the accumulating muck would appear to be getting stickier and deeper.”
(ワシントンで起きている混乱、でもその混乱の沼は未だにそのままで、汚泥は粘りをまし、深みを形成しているよ)

これは、ユダヤ系のガールフレンドとニューヨークに暮らす私の親友からのクリスマスのメッセージです。彼は、ガールフレンドが精神的に辛い思いをしているといいます。トランプ政権の決定が宗教的な対立を煽り、人々の間に微妙な不信感が生まれつつあるからです。京都に住む友人も同様でした。

アメリカと日本との思わぬ共通点のリスクとは

そして、シアトルから日本を訪れたエリトリア出身の友人もコメントします。
「俺だってアメリカの国籍を持っている。れっきとしたアメリカ人だよ。イスラム教徒でも、ユダヤ教徒でも、アメリカに来て、税金を払って、法律を守ってちゃんと生活している。確かに、我々の文化背景は違うだろう。一部のアメリカの人はそんな文化背景の違いに配慮しない。それがトランプ政権を生み出したんだよ」
彼はそう言って面白いジョークを言います。

「世界中の多くの人は他国と国境を接した国で生きている。だから、バイリンガル bilingual なのは当たり前。いいかい。トライリンガル trilingual、マルチリンガル multilingual なんて言葉があるよね。俺は最低でもエリトリア語、アラブ語、英語を使えるよ。それは当然のことだろ。でだな。1ヶ国語しか話せない人のことを何ていうと思う?モノリンガル?違うんだ、1ヶ国語しか話せない人のことをアメリカ人というんだよ」

つまり、アメリカは大国で、そこに住む人は英語を話していればそれでいい環境にあるため、バイリンガル以上の人が少ないと彼は言いたかったのです。
こう言われた時、私は日本のことをチラッと考え、どうコメントしていいかわからなくなりました。多くの日本人は日本語しか話せないのですから。日本、そしてアメリカの常識は世界の非常識というわけです。

エルサレムに暮らす人は、ヘブライ語(ユダヤ系)、アラブ語やアラブ系の様々な民族の言葉、さらにアルメニア語など多数の言語に接して生活をしています。
だからこそ、エルサレムは、多民族、多宗教、そして多国籍の人々が共存する象徴的な都市なのです。その地位を強制的にユダヤ系の国家の首都とした時に、この地域に長年続くイスラエルとアラブ系の人々との対立はさらに深まってしまうはずです。

2017年はトランプ政権の成立とその余波で揺れた一年でした。友人のいう mess in Washington(ワシントンの混乱)が来年は解消されるでしょうか。人々の間に広がる宗教や民族の違いへの不信感が少しでも緩和されることを願っています。そして、そのためにも、日本人もより閉鎖的にならないようにしたいものです。そのためにも、日本人の語学力の向上も必要なのではと思う今日この頃です。

どうぞよい新年をお迎えください。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。

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日本人の謙虚さが誤解されないために

“The squeaky wheel gets the oil”
(車輪が軋んでオイルをさす)

アメリカのことわざより

英語を学び、海外の人と英語でコミュニケーションをするにあたって、この格言を是非知っておいて欲しいのです。

気持ちを”外”に表す文化

車輪はスムーズに回転しているときは音をたてません。しかし、オイルがきれてくるとギーギー!!と音をたてて、車輪の不調を訴えます。言い換えると、ギーギーと音をたてると、人がそれに気付き、オイルを注すのです。

このことから、この格言は、「自分の気持ちをしっかりと言葉で表明しない限り、人は取り合ってくれないよ」ということの例えとして、アメリカ人の間で使用されているのです。

気持ちを”内”に秘める文化

日本人の好きな言葉に「謙譲の美徳」というものがあります。言い換えれば、自分のことを主張するのではなく、控えめであることが日本人には良しとされています。
つまり車輪が軋んでも、あえてそれを声にださず、じっとしていることで、逆に控えめな良い人だということで、日本人は阿吽の呼吸でオイルを注してくれることになります。

しかし、この日本人の発想が海外では「日本人は何を考えているかわからない。不可解で付き合い辛い人たちだ」という「誤解」へとつながるとしたら…それは極めて不幸なことといえましょう。
でも、この誤解は実際に世界のあちこちで起こっているのです。

コミュニケーション方法の違い

海外と日本とでは、コミュニケーションの方法そのものが異なる場合が多々あります。アメリカをはじめ多くの国では、自分の意思や主張をしっかりと語って、初めて相手に意図が伝わります。

それには言いたいことを瞼の内側に具体的な画像で描いてみて、それを客観的にできるだけ詳しく語らない限り、相手に自分の意図が伝達されないことを意味しています。
しかも、強調するところはしっかり強調し感情的ではなく、それでいてはっきりとした口調で相手に意思を伝える必要があるのです。

(伝えた量)÷(距離・文化差)=???

日本人が100伝えたつもりでも、実は10も意図が伝わっていないことがよくあるのです。
控えめな表現に慣れている日本人が、日本人同士で語り合うときと同じ発想で英語で話をすることがその原因です。

英語で話をするときは、自分の気持ちをちょっとしつこいぞと思うぐらいに表明して、初めて相手が意識してくれると思うべきです。

人のメッセージは、時間と距離が長くなり、他の文化圏へと伝達しようとすればするほど、伝わりにくくなります。
家族で会話をしているときは、100パーセント伝わっているメッセージが、他人とではそうはいかなくなることはよくあることです。それが、文化の異なる相手に伝えるのではなおさらというわけです。

「車輪が軋んでオイルをさす」

ですから、そのリスクを補うためには、「明快で詳細なメッセージの伝達」に加え、相手に注目してもらうための「強い視線」や「大きなジェスチャー」、さらには「豊かな表情」を総動員しなければなりません。

“The squeaky wheel gets the oil”

これから、海外の人とコミュニケーションをするときは、必ずこの格言を思い出して、表現方法に工夫を加えるようにしていただきたいのです。

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Inspirational Proverbs and Sayings for Business英語力を鍛える学習書

ビジネスで使える英語のことわざ・名言100 Inspirational Proverbs and Sayings for Business

ビジネスシーンでも使える英語の名言やことわざを、日英対訳で堪能しよう!MP3形式音声付き!
庶民の生活や知恵から出た社会常識を示す言葉、ビジネスやスポーツ選手の経験からくる事柄の本質をうまくとらえた言葉、人生の真実や機微を端的にまとめた先人の言葉。本書で集めたことわざ・名言は、その教訓や戒めを再認識させ、また、ビジネスシーンでの会話を鮮やかに彩る言葉として実際に使ってみたくなるものばかりを厳選しました。教養を高め、会話にも使えることわざ・名言集。

english_inspirationalラダーシリーズ Level:3
Inspirational Proverbs and Sayings 心に響く英語のことわざ・名言100
庶民の生活や知恵から出た社会常識を示す言葉。ビジネスやスポーツ選手の経験からくる事柄の本質をうまくとらえた言葉。そして人生の真実や機微を端的にまとめた先人の言葉。本書で集めた100の名言・ことわざは、現代の生活にも通じ、我々にその教訓や戒めを再認識させてくれるものばかり。100の言葉には意を汲んだ和訳つき。

『エグゼクティブ・コーチング』エグゼクティブ・コーチング
山久瀬洋二・著
IBCパブリッシング刊

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