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フィリピン情勢からみえてくるアメリカのリベラルの内部矛盾

“Is there a more elastic word in the English language than the word liberal?”

英語の中でliberalという単語ほど、伸縮自在な言葉はないのでは?
(BBCより)

リベラル liberal という言葉は、寛大で心が広く、革新的、あるいは進歩的という言葉と共通しています。民主的で、人種差別などを否定し、人権を尊重する考え方を示します。
 
アメリカであの人はリベラルな人だといえば、基本的にその人は良い評価を得ていると考えられます。つまり、彼らは個々人の人権 human rights を尊重し、移民に対しても、他の文化にも寛容 tolerant で、自然や動物の保護にも積極的です。彼らの多くは比較的経済的にも余裕のある中産階級で、海外に居住した経験のある人も多くいます。もちろん海外を旅した経験も有している人がほとんどです。そんな彼らは一様にトランプ政権には批判的です。
 
そんな彼らが支持するオバマ前大統領のとき、フィリピンで大きな変化がありました。デュテルテ大統領が就任し、彼が麻薬との戦争を宣言したのです。デュテルテ大統領は、警察に対して抵抗する者は容赦なく殺害することを認め、麻薬や麻薬にかかわる組織の撲滅に乗り出しました。
フィリピンの刑務所は逮捕された麻薬中毒者で溢れ、劣悪な状態となりました。また、麻薬にかかわる人は容赦なく警察に殺害され、さらには賄賂を受け取る政治家にまで粛清の手が伸びました。
 
この状況をみたオバマ大統領は、フィリピンで人権が尊重されていないことへの懸念を表明しました。それはそれでアメリカのリベラルな人々の世論を代弁したコメントだったのです。確かに、麻薬犯とはいえ、裁判を受け、刑に服し更生される権利があります。警察はあくまでも行政組織です。そんな行政組織は余程のことがないかぎり、裁判にかけずに被疑者の命を奪う権利はないはずです。
 
しかし、オバマ大統領の指摘を受けたデュテルテ大統領は、強く反発しました。そしてデュテルテ大統領のオバマ大統領へのコメントが乱暴だったために、その表現がメディアに取り上げられ、アメリカではデュテルテ大統領は人権を無視するヤクザのような大統領というイメージが定着したのです。特にリベラルと呼ばれる人々にはデュテルテ大統領のやり方は異常だったのです。
 
では、フィリピンではどうだったのでしょう。フィリピンの人は、長年政府の腐敗と麻薬の弊害に悩まされてきました。デュテルテ大統領は強権ながら、その双方に鋭くメスをいれたため、多くのフィリピン人がデュテルテ大統領の手腕に賛辞をおくりました。実際、街角から犯罪や麻薬への脅威が払拭され、政治家の腐敗も少なくなりました。確かに、フィリピンでは腐敗と麻薬の被害は、我々の想像する以上に深刻だったのです。
 

 

フィリピンには以前、マルコス大統領という独裁者がいました。
彼に暗殺されたとされる、ベニグノ・アキノ氏の遺志を継いだとして大統領になった夫人(コラソン・アキノ)は、まさにフィリピンに民主主義をもたらした人として、そして女性の大統領としてアメリカのリベラルな人々の支持を受けました。アキノ大統領は、アメリカ軍基地を産業施設に変えて、アメリカ軍をフィリピンから締め出したことで、アメリカ政府との対立はあったものの、多くのアメリカ人は彼女を女性の民主化の旗手として応援したのです。その影響もあり、日本でも彼女は高く評価されています。

しかし、フィリピン人の中には、アキノ大統領への不満がくすぶっていました。彼女はフィリピンの中でも華僑系の富裕層の出身で、正に富と腐敗の上に成り立っている政権だと多くの人が思っていたのです。暗殺された夫のアキノ氏は、実は夫人の手にかかったのではないかという噂まで流れているのです。
マルコスは実はベニグノ・アキノ氏に政権を譲ることを意図していたともいわれています。こうしたことの真実はわからないものの、この二人の政治上のライバルが、以前は友人であったこともまた事実なのです。
 
アメリカのリベラルといわれる人の良心は、常に世界の人権と民主化の問題に目を向け、独裁者や強権を振るう政治家に懐疑的です。しかし、アメリカがそんな海外の政権を冷戦やその後の世界の覇権争いの中で自分の思うように操ろうとしてきたこともまた事実です。そうした国々の国民の多くは、アメリカのリベラルと呼ばれる人々に対して複雑な意識を持ちます。
植民地としての苦しい体験や、その後の冷戦の間での様々な矛盾にもがいてきたアジアやアフリカの現状を、アメリカの理想で一刀両断することへの憤りがそこにはあるのです。
デュテルテ大統領を支持しなければならないフィリピンの社会事情への無理解を糾弾したいのです。そして、なによりもアメリカはそんなフィリピンの宗主国であったことを、多くのアメリカ人が忘れていることも事実なのです。
 
世界をステレオタイプで型にはめてみることは、人々の心にお互いへの不信感を醸成します。
複雑に絡み合った世界の事情、そして背景や歴史をじっくりと見つめることが必要です。
アメリカのリベラルといわれる人々に求められていることは、自国になぜメキシコに壁をとまで言い切るトランプ政権が、彼らの意に反して生まれてしまったのか。そして、世界の人々がなぜアメリカのいう「民主化」や「自由」という呼びかけにアレルギー反応を起こすのかを、自分の尺度から距離をおいて見つめ直すことなのかもしれません。
 

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英語力だけじゃない、世界に通用するスキルを身につけるなら

『日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context』ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context
ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)
グローバルビジネスのスキルを学びながら、英語学習にもなる。ビジネスパーソンのための対訳読み物。
20年間で、海外の日系企業の5000人を超えるビジネスパーソンと面談を行ってきた著者が教える、「日本人のためのグローバルビジネスで成功するためのヒント」。日本人以外の人々とのコミュニケーションやビジネスに対する見方を説明しながら、日本人の問題点を指摘し、その解決方法を伝授。グローバルに成功したいビジネスパーソンのみなさんに、英語力よりももっとはるかに大事なことをお教えします。

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アメリカの移民社会を象徴する「テヘランジェルス」

“Iranian Americans or Persian American are among the highest educated people in the United States.”

(イラン系、あるいはペルシャ系アメリカ人はアメリカ合衆国の中でも最も教育レベルの高い人々である)
(Wikipediaより)

 
ロサンゼルスにシャリフとキャシーというカップルがいます。
シャリフは中東のレバノンにルーツを持つ名家の末裔で、彼の父親はイラクで生活していました。一方、キャシーはイランにルーツがあり、父親は以前イランを支配していたパーレビ国王の支持者でした。
 
二人の両親は共に祖国の政変によって投獄され、過酷な人生をおくりました。
「私はイラン人というよりペルシャ人なの。何世紀にもわたってイランで生活してきたペルシャの人々。そう我々は意識して、今のイランと自分とを分けているわけ。カリフォルニアには、そういったアイデンティティ(identity)を持つ人が多くいるのよ」キャシーはよくこのようにいいます。
 
イランは中東の大国です。そして、もともと王国でした。
国王であったパーレビは、アメリカとも良好な関係を維持しながら、西欧化を進めていました。
当時は冷戦の最中。ベトナム戦争につまずいたアメリカが、その間隙を縫うように中東に爪を伸ばしてきたソ連の動きを警戒していた頃のことでした。
伝統的にインドと友好関係を維持してきたソ連は、まず政治的な混乱に乗じてアフガニスタンに侵攻し、インドの西側、つまり中東の東端を抑えます。
 
そしてイランはアフガニスタンと国境を接しています。
当時イランには西欧化に反発する保守的なイスラム教徒が多くいました。彼らには急激な西欧化による貧富の差などの怨嗟もありました。そうした人々が立ち上がり、1979年に革命を起こし、親米政権であったパーレビ国王を国外に追放したのです。革命の暴徒はアメリカ大使館を占拠し、アメリカに対する強い憎悪を剥き出しにします。イランは西欧化途上の国家から、保守的なシーア派のイスラム教国へと変身したのです。
これはアメリカにとっては不幸なことでした。当時、アメリカはベトナム戦争の後の世論の揺れ戻しの中で、リベラルなカーター大統領が政権を担っていたのです。イラン革命はそんなカーター大統領の穏健な外交政策に大きな打撃を与えたのです。
 
硬化したアメリカの世論によって、アメリカに再びレーガン大統領による保守政権が誕生します。
レーガン政権は、イランに対抗するためにイランの西にあり、スンナ派サダム・フセイン政権に接近します。フセイン政権はシーア派のイスラム教徒への弾圧も進め、イランと緊張関係にあったのです。アメリカはさっそくイラクに援助を行います。その結果1980年にイラクとイランは戦闘状態になり、多くの血が流されたのです。ところが、その後サダム・フセインが増長し、アメリカが支援していたクエートを自国の一部と主張して侵攻したことが、その後のイラクとアメリカとの確執の原因になったのです。
 
一方、アフガニスタンを占領したソ連は、現地のイスラム教徒の抵抗にあい、泥沼の内戦になやまされます。最終的にソ連はアフガニスタンから撤退し、アフガニスタンにはソ連とアメリカ双方に強く反発するイスラム教過激派が支持するタリバン政権が生まれたのです。
アメリカは、イラクとイランの双方との関係を失い、アフガニスタンにまで影響力を喪失したことになります。
ところが、アフガン侵攻などの失敗もあってソ連も経済的に瓦解し、国家自体が崩壊したのです。その結果冷戦体制が終焉します。これはアメリカにとってはありがたいことでした。
冷戦崩壊後10年少々でアメリカは、タリバン政権が温存していたアルカイダが起こした同時多発テロ事件を契機に反タリバン勢力支援し、アフガニスタンを抑え、イラクにも侵攻し、サダム・フセイン政権を崩壊させたのです。
 
ロサンゼルスの西、太平洋に面したサンタモニカに向かうと、途中にウエストウッド Westwood という街があります。すぐ横は有名なビバリーヒルズです。
この一帯はペルシャ人街で、通称:テヘランジェルス Tehrangeles と呼ばれています。ここにはイラン系のみならず、中東系のレストランなどが並ぶ地域です。彼らの多くが、今回解説した70年代以降中東を見舞った混乱によってアメリカに移住してきた移民たちなのです。
 
「私たちはパーレビ氏(革命で亡命したパーレビ国王の息子)がイランに戻り、宗教と政治とを分離した民主的な国家を作ってくれることを祈っているの。まだ時間はかかるかもしれないけど」
キャシーの娘は今ドイツでAIの技術者として活躍しています。そして、彼女のボーイフレンドであるシャリフは、アメリカに移住してきたあと、アメリカへの留学生のための保険を扱う仕事で成功し、ロサンゼルスで裕福な生活をしています。彼は、イラクで民主化運動をしていたということでサダム・フセイン政権によって8年間も投獄されていた父親をアメリカに引き取り、その最期をみとりました。
 
アメリカには、複雑な国際関係によって祖国を失った人々が多く生活しています。アメリカは国際政治の舞台では超大国として利権を維持しようとしながら、一方でその結果流入してきた移民の才能を活かし、活躍の場を与えてきました。その結果成長したのが、シリコンバレーなどのハイテク産業でもあることを忘れてはなりません。
 

今、トランプ政権はこうした移民を制限しようとしています。しかし、海外からの移民をステレオタイプ(stereotype)によって一つの色に塗り替えてゆくことは、単純に誤った知識によって社会を硬直化させる結果しか生み出さないことが、このエピソードからもわかってくるのです。

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アメリカ人と文化の壁を超えてビジネスをするために!

『トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義』山久瀬洋二 (著)トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義
山久瀬洋二 (著)
国家・民族・言語・宗教の境界を超えてアメリカ人と対等にわたりあう、80の絶対法則!
欧米をはじめ、日本・中国・インドの大手グローバル会社で100社4500人の異文化摩擦を解決してきたカリスマコンサルタントである山久瀬 洋二氏が、トランスナショナルなアメリカ人を正しく理解し、対等にビジネスするための奥義を、豊富な事例と図解でわかりやすく説明します。英語よりも、MBAよりも、もっとずっと大切なものがここにあります。

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「アメリカの裏庭」という意識を嫌うメキシコとは

Latin America is no longer the “US’ backyard” and the US shouldn’t be “lecturing less developed countries” on “rights and freedoms,” while breaching international law with massive surveillance campaign itself.

(ラテンアメリカはもはやアメリカの裏庭ではない。アメリカは新興国に対して人権と自由について講義するなんておこがましい。自分こそ他国を自らの思い通りに管理しようと国際法を常に無視しているにもかかわらず)
RT Newsより

トランプ政権になって、メキシコからの移民の問題が話題となっています。
我々は、メキシコのことを考えるとき、アメリカの存在があまりにも大きく、経済格差もあることから、メキシコをアメリカから切り離してみることを忘れがちです。
 
先日カリフォルニア州からのメキシコの玄関口ティワナに出張しました。車で国境を越えてメキシコに入れば、確かにそこがいかにアメリカにぴったりとくっついた場所であるかを実感します。
 
しかし、日本に帰国しようと、ティワナからロサンゼルスに飛んで、日本への帰国便に乗り継ごうとアレンジ(arrange)を試みたとき、ロサンゼルスまでの旅客機がないことに気付きます。ティワナからはメキシコの首都メキシコシティに飛んで、そこから日本への帰国便に乗り継がなければなりません。
そうなのです。アメリカに接しているとはいえ、メキシコは独立した大国です。ティワナに住む人の目は、アメリカではなくメキシコに向けられていて当然なのです。移民問題等で、我々がついつい誤解しがちな中南米のもう一つの顔。つまりアメリカとはまったく異なるラテンアメリカの文化圏がそこにあり、メキシコシティはその核の一つであるということを、忘れてはならないのです。
 
ティワナからメキシコシティまでは空路で3時間かかります。アメリカの側にある国としてついつい捉えがちなメキシコは、実は国土は日本の5倍以上と広大で人口も日本と同規模。経済的潜在力もGDPでいえば世界11位という大国なのです。メキシコの人がトランプ政権の処置に憤りを感じる理由の一つは、不公正な移民政策への抗議ではないのです。豊かなラテンアメリカの伝統を引き継ぐメキシコという国家のプライドを踏みにじったからなのです。
 
16世紀以降にマヤ文明アステカ文明といった先住民の国家群のあったメキシコはスペインの侵略を受け、その後先住民の文化とスペイン文化が融合します。我々はともすれば、スペイン側が侵略者であると一方的に考えがちですが、当時の中南米はそもそも先住民同士でも勢力争いが続いていました。そうした彼らの目からみれば、スペインの侵攻も、ヨーロッパの中南米の植民地化ではなく、単に今までみたことのない別の部族の侵略と捉えたはずです。
 
いずれにせよ、メキシコをはじめ中南米の広範な地域では、それ以来アングロサクソンのプロテスタントによって開拓されたアメリカとはまったく異なる文化圏が形成されたのです。
メキシコの中央部には、そうした文化の香りが漂う美しい街並みを残す都市が点在しています。銀山の街として、過去にはスペインに収奪されたこともあった古都グワナファト。そこから車で1時間半ほどのところにあるサンミゲル・デ・アジェンデなどを訪ねると、古い教会や昔から変わることのない街並みが旅人を魅了します。中南米の街はどこにいっても中心街に大きな教会と広場があり、そこを核に旧市街が広がります。その風景は、メキシコからアルゼンチンやチリに至るまで、どこの地域にも共通しています。
 
 
そして、ラテンアメリカの国々のほとんどがスペイン語圏です。
英語はなかなか通じません。英語は一部の人がビジネス上のニーズで話す言葉にすぎないのです。そして、ラテンアメリカの人々の多くは敬虔なカトリック信者です。プロテスタントの常識や宗教観が席巻するアメリカとは対照的です。
その昔、これらの地域は、中南米の鉱物資源の恩恵を受けようと、スペイン人が現地の人々を奴隷として酷使した過酷な歴史を経験しています。メキシコの場合、19世紀初頭から独立運動の波が高まり、現在のメキシコに至りました。
 
 
メキシコにディエゴ・リベラという画家がいました。今では世界的に有名になった女流画家フリーダ・カルロとの愛憎劇でも知られる人物です。
1930年代、ニューヨークにロックフェラーセンターが建設されたとき、その中心となるビルの壁画の制作をロックフェラーは彼に依頼しました。ディエゴ・リベラがその壁画にレーニンを描き入れたことから、反共の砦アメリカを代表する資本家ロックフェラーは激怒。壁画は破壊され、ロックフェラーは別の画家にその制作を依頼し直すというハプニングがありました。
以来、ディエゴ・リベラはロックフェラーを堕落した資本家の象徴として風刺したといいます。メキシコ人のアメリカへの意識を垣間見るエピソードです。今、ロックフェラーセンターに描かれている壁画を仰ぎ見れば、リンカーンがそこに登場し、その後マテリアリズムで世界を凌駕したアメリカの栄光を象徴するような風景に圧倒されます。その壁画の場所に、ディエゴ・リベラ のレーニンがあったことなどなかったかのように。
 
アメリカとメキシコ。この二つが対等な、それでいて切ってもきれないアメリカ大陸の大国であることを、アメリカ人の多くはロックフェラーのように、気づいていないのです。
トランプ大統領に代表される多くのアメリカ人が、中南米やカリブ海諸国を「アメリカの裏庭」(America’s backyard)と意識して、思うままに操ろうという意識が横行する現実にそろそろメスがはいってもよいのかもしれません。
 

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アメリカ人と文化の壁を超えてビジネスをするために!

『トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義』山久瀬洋二 (著)トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義
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欧米をはじめ、日本・中国・インドの大手グローバル会社で100社4500人の異文化摩擦を解決してきたカリスマコンサルタントである山久瀬 洋二氏が、トランスナショナルなアメリカ人を正しく理解し、対等にビジネスするための奥義を、豊富な事例と図解でわかりやすく説明します。英語よりも、MBAよりも、もっとずっと大切なものがここにあります。

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メキシコでの日米談義はグローバルなコメントから

“Car plants from Michigan to South Carolina could pay more for the steel used to make engines and auto parts. Farmers across the Midwest would be a prime target for China, the biggest buyer of some American crops.”

(今回のトランプのアメリカの産業を保護するという関税は)ミシガン州やサウス・カロライナ州の自動車製造業はエンジンと部品の調達コストがあがるだろう。そして、中西部の農家も、最大の作物の買い手である中国の輸入制限という報復の対象になるはずだ。
CNNより

「メキシコ人はプライドが高いんだよ。実は本音でいえば、多くの人はアメリカ嫌い。トランプ政権のメキシコ蔑視の発言はそれに拍車をかけたことになるさ。でも、とはいえ、経済的にはアメリカは大きな影響力を持つ。だから、多くのメキシコ人は英語も勉強しようとしているし、アメリカに移住した親戚や友人にも期待しているんだ。」
メキシコ中部の中核都市グアダラハラのレストランで、そこに暮らすマイケルというアメリカの仕事仲間と夕食を共にしました。
「実はね。メキシコ人で英語をしゃべれるのは人口の5%に過ぎない。その5%の中に英語の初心者もいれば、上級者もいる。いかにこの国で英語が通じないかということがわかるだろう。」
すると、アメリカから一緒にグアダラハラに飛んできて夕食に同席したもう一人の知人が私に質問します。
「でも、メキシコ人はトランプ政権に強く反発しているよね。声にだして。日本ではどうなんだい。今回、鉄鋼やアルミにアメリカは関税をかけると発表したろ。日本人は黙ってそれを受け入れるのかねえ。」
これを受けて、もう一人のアメリカ人が言います。
「あれって確か中国に向けられたものだよね。日本も対象なんだ。でもさ、日本は軍事でもアメリカにタダ乗りしているし、まあ関税でもかけないとバランスが取れないんじゃない。」
「それって、事実に反するんだよ。」
私はそう言って反論しました。
「日米安保条約があって、アメリカ軍は日本に駐留しているけど、その経費のかなりは日本がもっているんだよ。むしろアメリカはその経費によって日本に軍隊をおいて極東でのプレゼンスをもつことができるという利益を受けている。知らなかったの。」
「そんな事実アメリカ人は誰も知らないよ。なぜなら日本はそのことを全然主張しないから。主張しなければアメリカの世論に届かないじゃない。」
確かに彼らのいう通りです。我々が思っているより強く主張して、初めて海外にはじんわりとメッセージが伝わるのだということを、日本人は知らなすぎます。日本人の考え方やスタンスについて、自分たちはちゃんと言っているというものの、実際はそのほとんどが的確に伝わっていないことがあまりにも多すぎるのです。
「じゃあ今回の関税の問題も、日本の声はアメリカには届いていないようだね。」
「そうだよ。韓国やヨーロッパ諸国はアメリカに強く反発した。でも、日本からの声は届いていないよ。韓国やヨーロッパ諸国もアメリカにとっては大切な友好国だろ。でも彼らはいうべきことははっきりいうさ。日本人って何か遠慮しているのかな。それともはっきり言いすぎることは美徳じゃないと本気で思っているんだろうか。だから日本だけはしごを外されたんだよ。」
 
このアメリカ人のコメントには確かに耳を傾ける必要があります。
こちらでは、親しい友人が様々なことで口角泡を飛ばすように議論します。横でみていると喧嘩をしているように見えることも。でも、彼らはそうした議論をしてこそ、相手との理解を深めることができるというスタンスを持っていることを忘れてはなりません。異なる意見を戦わせることは、むしろ良いことなのです。
日本人で流暢に英語をしゃべり、海外通と呼ばれ教養もある人が、この一点を理解していないために、海外との交渉で思わぬ失敗をする場面が多いのです。
軍事や経済での日米の交渉も例外ではありません。正直なところ、こうした点を踏まえることのない、日本の官僚、大企業の幹部の交渉力のなさには苛立ちを感じるほどなのです。
ですから、今でもアメリカでは、日本に対する様々なステレオタイプが横行しています。ここで取り上げた日本タダ乗り論に加え、日本では女性が奴隷のように差別されている。ほとんどの日本人は内気ではっきりものを言わない。日本人は中国や韓国へ戦争責任について何も謝罪していない。日本には言論の自由がないなどなど。
 
確かにこれらのステレオタイプ(Stereotype)には、それなりの原因があるかもしれません。しかし、はっきりと英語で自らのスタンスを語ることのできない日本人が得る不利益は思っているよりも大きいのです。
「おいおい、アメリカ人は利益があると思えば、平気でスタンスを変えるよ。例えば、関税のことでも同様さ。トランプは今ひどい支持率だろ。だからアメリカの産業を自分が支えていることを強調するために、日本をスケープゴート(scapegoat)にするなんて当たり前のことなんだ。事実に反してもね。俺は中東の出身だからよくわかるけど、アラブ系の人がどれだけそんなアメリカの政策の被害にあってきたことか。トランプ政権はその最たるもの。知ってるかい、中東の混乱のため、俺の親戚の住むレバノンには、シリアから200万人の難民が流れ込んでいる。日本はこうしたことに何もしていない。俺たちからみても日本人は大人しすぎる。大人しければ、アメリカはこれ幸いにアドバンテッジ(advantage)をとってもいいと彼らは思っているんだ。」
同じテーブルにいたイラン系のアメリカ人が話し出します。
「いいかい。なんだったっけ今の日本の首相。」
「安倍首相かい。」
「そうそう、アベ。彼がトランプとゴルフをしたから大丈夫だって。馬鹿な話だよ。結果としてヨーロッパの多くの国はトランプを強く批判して、自分の国の利益を守ったじゃない。仲のいいことと、ビジネス上の利益とは違うんだよ。そこのところがどうしてわからないんだい。」
 
グアダラハラの夏の夜は、メキシコの話題から日本人論へと移りながらふけてゆきました。
その話題に加わる私の複雑な気持ち。それが、海外を実感したときに抱くやるせなさなのです。この気持ちを一人でも多くの人が共有できるようになったとき、日本は少しずつ変化してゆくはずです。そんな未来が来ることを祈りたいものです。
 

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外国人とビジネスをするためのテクニックを学ぶなら

『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊
*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

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アメリカ人の意識にある頑なさとは

“Christians remain by far the largest religious group in the United States, but the Christian share of the population has declined markedly. In the past seven years, the percentage of adults who describe themselves as Christians has dropped from 78.4% to 70.6%. “

(アメリカでは今でもキリスト教徒が最大多数を占めているがその比率の減少が顕著。この7年間で自らをキリスト教徒であるという成人は78.4パーセントから70.6パーセントに減少した)
Pew Research Centerの報告書より

アメリカの社会を理解するには、最初にアメリカにやってきた移民集団の背景を理解することが極めて大切です。なぜ、今この話題に触れるかといえば、それが現在のトランプ政権を産みだし、右傾化するアメリカ社会のメカニズムを解き明かす鍵になるからです。
 
よくアメリカはプロテスタントの国だといわれます。1620年にピルグリム・ファーザーズ(Pilgrim Fathers)と呼ばれる人々が、メイフラワー号に乗ってアメリカに移住してきたことが、現在のアメリカの起源であるかのようにいわれていることもその原因でしょう。それは的外れな感想ではありません。
 
アメリカにはバイブル・ベルト(Bible belt)と呼ばれる地域があります。アメリカの東西両海岸に挟まれた内陸、東はインディアナ州あたりから西はコロラド州やネブラスカ州あたりに至る中西部と呼ばれる広大な地域がそれにあたります。ここでは、様々なプロテスタント系の人々が独自のコミュニティを維持しています。また、アメリカ南部からテキサス州に至る地域も同様です。
 
宗教改革ののち、ヨーロッパは旧教であるカトリックと新教と呼ばれるプロテスタントとの確執で長年にわたり戦火が絶えませんでした。こうした混乱や迫害を逃れ、多くのプロテスタント系の人々が、新天地を求めてアメリカにやってきたのです。彼らにとって未開の地であったアメリカは文字通り神によって与えられた地promised landということになります。17世紀から19世紀にかけて、イギリス系のみならず、オランダ系、ドイツ系、フランス系など、ヨーロッパ各地からそうした人々が海をわたってきたのです。
 
やがて彼らの宗教観がアメリカ人の価値観となり、後からきた移民もそうした価値観や道徳心に馴染むことによってアメリカ人となっていったのです。
ヨーロッパからの移民が奴隷として酷使した黒人や、同じく迫害によって海をわたってきたユダヤ系、さらにヨーロッパではプロテスタントと対立していたカトリック系の人々も例外ではありません。アメリカ社会に溶け込むには、そうした人々もマジョリティとしてアメリカ社会の礎を築いてきたプロテスタント系移民の抱くモラルや価値観を受容することが必要だったのです。
 
では、そもそもプロテスタントとはどういう人々であったのかを我々は理解する必要があります。プロテスタントとは文字通り「抗議protestする人々」です。ヨーロッパ社会に君臨していたローマカトリックが長年にわたって築き上げた権威や儀式を放棄し、本当の信仰は個人と神との関係によるもので、儀式や権威に従えばそれでよいというのはおかしいのではと抗議した人々がプロテスタントと呼ばれる人々です。
 
ですから彼らはローマ教会の拘束から自らを解き放ち、自活するために勤勉に労働をし、神に対して直接責任をもって信仰を貫こうとします。彼らにとっての教会とは、そうした思いを抱く人々が集う場所で、ローマカトリックのような権威の象徴としての教会は排除されるべきだと主張します。もっといえば、プロテスタントの人々は、原点的な信仰に回帰しようとした人々なのです。
 
長年彼らはそうした宗教観を堅持してきました。その結果、皮肉にも彼らはアメリカ社会の土台を形成する最も保守的な人々となったのです。勤勉、貞節、聖書への無条件の服従など、現代社会を造ってきたアメリカの多くの人々が、我々が考えるより遥かに頑なに自身の価値観に固執しきたのです。
 
そんな価値観を維持する人々が、グローバル化の波の中で、社会そのものが変化し、今回紹介したヘッドラインのようにキリスト教への信頼そのものが揺らぎつつあることへ危機感を抱いたことが、アメリカの右傾化の背景にあるのです。日本がアメリカと付き合ってゆくときに、この点を見落とさないようにすることが大切です。トランプ大統領自身、プレスピテリアンPresbyterianというスコットランド系のプロテスタントの伝統をルーツに持っています。共和党、民主党を問わず、歴代の大統領のほとんどが彼と似た背景をもっていることを理解しておかなければなりません。
 
そんなアメリカと対立するイスラム社会。実は、イスラム教もその起こりはプロテスタント活動と似ていました。キリスト教と同じルーツを持つ神への信仰を重んじ、個人個人が敬虔に宗教行為に勤しもうという宗教改革運動がイスラム教の起源だったのです。個人の信仰を大切にするために、偶像崇拝を拒否し、祈りと節制を重んじたイスラム教と、プロテスタントとは極めて似た行動様式をもっているといっても過言ではありません。それゆえに、お互いに対立したときには頑なに相手を排除しようとしているのでしょう。
 
アメリカは多様な移民によって成り立つ多民族国家です。
それだけに、彼らをまとめる国家としてのビジョンが求められました。それゆえにアメリカ人はプロテスタント的なモラルを善悪の基準とし、それを普遍的な意識へと育てあげたのです。
一見自由でカジュアルなアメリカ人の行動様式の内側にこの頑なさがあること。これに気づくと、アメリカ社会のメカニズムがより明快に見えてくるのです。
 

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ビジネスシーンの英語コミュミケーションに悩む、すべての人に!

『エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~』山久瀬洋二エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~
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IBCパブリッシング刊
*TOEIC では高スコアを取っていても、実際のビジネスの場では役に立たないという人が多いといわれます。それは TOIEC で高得点を取る技能に走って、最も大切な異文化コミュニケーション力を培っていないからです。異文化コミュニケーションの本質を習得できれば、中学英語と、そこに自らの仕事に関する専門用語を加えるだけで自分の意思を理解してもらえます。本書では、日本人の思考やビジネス文化に基づいて英訳することで生じる誤解などを解説し、文化の異なる相手と交流するスキルを伝授します。

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『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
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山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
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*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

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