カテゴリー別アーカイブ: ニュースの英語と文化背景・時事解説

山久瀬洋二の「ニュースの英語と文化背景・時事解説」
話題の海外ニュースから旬な英語表現をピックアップ。グローバルな視点で文化背景、歴史、時事を解説。過去の記事は「海外ニュースの英語と文化背景・時事解説」目次からどうぞ。

ゴーン逮捕でみえてきたモラルと法律、そして国家戦略の矛盾

“Nissan ousts Carlos Ghosn as chairman following his arrest.”

日産は、カルロス・ゴーンの逮捕を受けて彼を会長職から追放する
(CNNより)

カルロス・ゴーン逮捕のニュースは、日本だけではなく世界中を駆け巡りました。
彼と彼の側近にかけられた容疑とその背景については、すでに多くのメディアが解説しています。そこで、彼の逮捕から1週間以上が経過した今、我々は少し冷静に、今までの報道も含め、今回の事件のあらましを考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 
ここで考えたいのは、モラル法律というテーマです。
カルロス・ゴーンが高額な報酬を受けていたことは、企業やそのリーダーのモラルの問題として批判の対象となっています。そして、彼がその高額報酬を低く報告したという容疑について、今、彼は法律で裁かれようとしているのです。
 
ここで、あえてモラルと法律とを分離して考えてみましょう。
もちろん、法律の遵守というテーマには、モラルの問題も深く関わります。
しかし、モラルと法律とを分離して注視した場合、いかに法律自体がそれぞれの地域のモラルや文化と深く関わっているか、そして人間がいかにその影響を深く心に刻み込んでいるかが分かってくるのです。
 

文化に影響されるモラル、モラルに影響される法律

分かりやすい事例を挙げるならば、日本で「大麻を所持していた」と報道されれば、その人は麻薬の売買に関わっていたとして、モラルの上からも厳しく糾弾されます。しかし、アメリカでは、いくつかの州でマリファナの所持や吸引は合法とされています。さらに面白いことに、マリファナの需要が高まっていることを投資の機会ととらえた投資家(ごく合法的に活動している)の間で、マリファナ農場への出資が堂々と行われていることが話題となっているのです。
このニュースを聞いて違和感を覚える人は、日本を含め、世界各地にいるはずです。しかし、その違和感はそれぞれの国のモラルの影響を受けたものに他なりません。
 
では、マリファナと同じように、摂取することで心身に影響を与える、お酒はどうでしょう。酩酊して人に迷惑をかけない限り、飲酒は日本では合法です。しかし、イスラム圏の国々の中には、この行為は、モラルに反する行為として厳しく罰せられるケースがあるのです。もう一つの事例を挙げれば、日本では今でも食事の場での分煙が徹底しておらず、喫煙者が側にいることで健康被害を受けている人が無数にいます。しかし、アメリカの多くの州では、公の場所での喫煙は違法行為のみならず、モラルの上からも厳しく糾弾されるのです。 こうした事例から、法律はそれぞれの国のモラルと深く関わっていることが理解できると思います。
 
そこで、まずはカルロス・ゴーンが高額な報酬をとっていたことに対する批判を考えましょう。世界中に彼と同様、あるいはそれ以上の報酬を享受している企業のリーダーがいることは周知の事実です。社員は薄給で苦労しているのにおかしいじゃないかという議論は、社会主義国であれば通用するモラルかもしれませんが、資本主義国であれば社員が過剰労働や労働基準法に反する業務を押し付けられていない限り、それは個々の会社の問題にすぎません。それをモラルの問題とするか否かは、それぞれの地域の文化の影響によるものです。
 
では、報酬を過小に報告していたことはどうでしょう。これは、確かに日本の法律には抵触するかもしれません。そして、日本という主権国家の中で、その国の法律に抵触する以上、それをおかした人物が処罰の対象となるのは仕方のないことです。しかし、カルロス・ゴーンはまだ有罪と決まったわけではありません。未決の段階で社会を騒がせたことで、取締役会で解任されるのは、日本のモラル文化の問題です。つまり、そこにも文化の問題が介在しているといえましょう。
 

情報を収集するマスコミの目、報道を監視する国民の目

そして、現在のマスコミの問題は、このモラルと法律の問題を同じ器に入れてかき混ぜ、個人が何か法的なリスクを背負ったときに、その個人や法人をモラルの上からも徹底して叩いてしまうことにあるのです。そして、一般の人々も、マスコミの報道に対して冷静かつ批判の目を持って接する姿勢が欠如しているようにも見えるのです。
 
日本に滞在しているある中国の友人が、中国には報道の自由がないことを嘆いていました。そして、三権分立が民主主義だけではなく、そこにマスコミというもう一つの監視の目がないことが中国社会の問題だと批判をしていました。
確かに、彼のいうことには一理があります。マスコミを含む4つの権力がお互いを監視することこそが民主主義の基本かもしれません。しかし、そこにもう一つ必要なことは、主権者である国民自身の監視の目です。この目がこなれていない場合、政治の場ではポピュリズムが横行し、マスコミも責任ある報道ができなくなります。
 
今回のカルロス・ゴーンの逮捕についていうならば、司法取引に応じた外国籍の人物の意図とその背景をしっかりと見極めることが重要です。同時に、ルノーの株主であるフランス政府とルノーとの関係、そこでのパワーバランスとフランス政府の自動車産業への思惑に対する視点をもった報道が必要です。具体的には、日産をいかに守ってゆくかという国家レベルでの戦略が必要なのです。
なぜ、ルノーではカルロス・ゴーンは役員として留任したのか。そして、そんなカルロス・ゴーンとフランス政府とは過去に経営を巡ってどのように対立していたのか。このあたりをしっかりと見つめてゆくには、まだマスコミ自体に情報がなさすぎるようにも思えます。
 

グローバル経済の中で日本に求められるもの

カルロス・ゴーンの功罪のみにスポットをあてて、日産をがんじがらめにしてしまうことは、以前東芝のスキャンダルによって、東芝が世界企業の生存競争の中で一人沈没していった状況と同様の結果を招きかねません。
日本は、官も民もこうした世界での生存競争の中で、いかに戦略を研ぎ澄ましてゆくかというノウハウに、大きな瑕疵があるように思われます。
 
現在、グローバルに成長した企業は、その国の経済を左右する力を有しています。それは、政治の力をも凌ぐ影響力を有しているといっても過言ではありません。であれば、政治と経済、官と民との間にいまだに歴然とした上下関係がある日本の体質に、大きなメスをいれる必要があることはいうまでもありません。また、カルロス・ゴーンの逮捕によって、企業やベンチャーをリードして、未来社会に貢献する優秀な人材が、過剰な税金やコンプライアンスの鉄の鎖によって葬られないようなバランス感覚が必要です。
 
もし、カルロス・ゴーンが日本の法律を破っていれば、それは処罰の対象となるでしょう。しかし、ただ、彼の行為を叩き批判するだけでは何も起こりません。
彼の処罰という法的な問題と、日本の硬直した税制のあり方や税金の使い方、さらに企業家や起業家のモラルの問題とを同じ土俵で処断することは、グローバル経済の波にさらされる日本にとっては、決して良いことではないはずです。
今後のフランス政府の出方、ルノーの戦略を注視しながら、日本人にとっては苦手な果敢で迅速な対応が、我々に求められているのではないかと思われます。
 

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英語力だけじゃない、世界に通用するスキルを身につけるなら

『日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context』ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context
ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)
グローバルビジネスのスキルを学びながら、英語学習にもなる。ビジネスパーソンのための対訳読み物。
20年間で、海外の日系企業の5000人を超えるビジネスパーソンと面談を行ってきた著者が教える、「日本人のためのグローバルビジネスで成功するためのヒント」。日本人以外の人々とのコミュニケーションやビジネスに対する見方を説明しながら、日本人の問題点を指摘し、その解決方法を伝授。グローバルに成功したいビジネスパーソンのみなさんに、英語力よりももっとはるかに大事なことをお教えします。

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欧米を蝕むアイデンティティ・クライシスの背景にある2000年の矛盾とは

“President Trump closed out an us-against-them midterm election campaign that was built on dark themes of fear, nationalism and racial animosity—.”

(トランプ大統領は中間選挙での「こちら側と向こう側」というキャンペーンを終え、恐怖とナショナリズム、そして人種間の対立という暗黒の課題を投げかけた。)
New York Timesより(一部編集)

欧米に影を落とす思想の対立と不信感

今回のアメリカの中間選挙の結果、下院で民主党が過半を制したことは、過去にないほど世界で大きく報道されました。
ただ、大統領の所属する政党が議会の多数派となれなかった事例は、今に始まったことではないことは、既に多くのマスコミによって解説されています。
実際、大統領は外交や軍事に関しては強い権限があるものの、内政については下院との妥協がどうしても必要になります。
そうした政治上のメカニズムは他社の報道に任せるとして、今回取り上げたいのは、なぜ、ここまで中間選挙が注目されたかというテーマです。
 
その背景には、現在アメリカをはじめ欧米でおきている、人々の間での思想信条の強い対立と、お互いに対する根深い不信感があることは言うまでもありません。その不信感が過去にないほど鮮明になっていることが、人々の危機感を煽り、マスコミも注目したのです。その象徴的な行事が、今回の中間選挙だったわけです。
歴史的にいえば、人々は富の配分によって異なる思想信条を抱きました。富める者と貧困に喘ぐ人々との間の対立が、政治にも大きな影響を与えてきたのです。それに加えて、宗教観の違い、人種間の対立などで政治が左右されてきたことも事実です。
しかし、現在は必ずしもそれだけが要因ではなくなっています。同じ中産階級で宗教的にも似通った背景をもっている人々が、思想信条において大きく対立しつつあるのです。

欧米社会の二大源流:ヘブライズムとヘレニズム

では、どうして、そこまで人々が対立するようになったのでしょうか。
実は、この対立を理解するためには、欧米社会に脈々と受け継がれてきた、二つの概念に目を向けなければなりません。
それは、ヘブライズムヘレニズムという概念です。

ヘブライズムとは、一神教の神を信仰していたユダヤ教にその起源があります。絶対神であるヤハウェを信仰するユダヤ教が儀式や儀礼によって形骸化したと批判し、世界宗教にまで発展したのがキリスト教です。従って、キリスト教には脈々とヘブライズムの伝統が流れているわけです。

次にヘレニズムです。この起源はギリシャです。あのソクラテスやプラトンをはじめ、多くの哲学者や科学者を輩出したギリシャで生まれた論理的な発想法、思考法はその後ローマ帝国に受け継がれ、西欧社会に共通する国際的な概念へと成長しました。それがヘレニズム的な発想法です。

キリスト教は、イエス・キリストによってその教えが説かれた時代には、いわば一つの神を絶対的な拠り所とする宗教で、その信仰のあり方に哲学的な発想はありませんでした。
しかし、そんなキリスト教がローマ社会に浸透し、やがてローマ帝国の国教になるに至り、宗教と政治とを一体化させなければならなくなりました。そのために、その宗教的な背景を論理的に、哲学的に理論武装する必要性に迫られたのです。ここに、宗教的発想としてのヘブライズムと、論理的発想としてのヘレニズムとが融合し、キリスト教社会の道徳、哲学、そして文化が育まれたのです。

宗教と科学の対立に揺らぐアイデンティティ

それから、おおよそ1600年の年月が経ちました。そして、20世紀になって人類の科学技術は大きく進化しました。そんな科学技術の進化の背景には、物事を科学的に発想し、分析するというヘレニズム的な行動様式が大きな影響を与えてきたのです。それが、欧米流のロジックや理性の背骨として、科学技術の進化を支えたのです。
ところが、科学技術が進化することで、人々は過去に抱いていたものと異なる死生観を抱くようになりました。中世では、ほとんどの人々が、死後に生前の行動と信仰によって神に裁かれるものと、本気で畏れていました。科学技術の進歩で、こうした信仰は迷信として退けられるようになりました。また、医学の進歩によって、人々を見舞う病苦にも科学的な分析と治癒への道が開かれました。こうして、宗教と科学との対立が始まります。西欧社会で数百年の年月を経て、ヘブライズムとヘレニズムとが少しずつ分離し始めたのです。
 
しかし、この「分離現象」は、それまで神と生活、そして政治とを融合させてきた多くの人々に、強いアイデンティティ・クライシスを育んだことは言うまでもありません。
また、ヘレニズムとヘブライズムとが分離し始めた後も、科学の道を歩む現代人の心の奥底には、ヘブライズム的な道徳観や善悪に関する基準は残りました。この基準を強く意識するとき、人々は合理的な発想に懐疑心を抱きます。そして、そんな意識を心に抱きながらも、よりグローバルに物事を考え、現代の科学による理性を重視しようと思う時、人々はヘレニズム的発想をもってヘブライズムのエキスを希薄化します。この懐疑心と希薄化の揺れが、意識のギャップとなって、現在の欧米社会を揺り動かしているのです。

ヘブライズムからみえる対立、不信、排除

さて、とはいえ、欧米の人々は、例え現代社会においても、おしなべてヘブライズムの影響を受け継いでいます。先に解説した通り、ヘブライズムの原点は一つの神への絶対的な信仰にあります。すなわち、神を信じる者は「善」、神をないがしろにする者は「悪」という二元論が、長年にわたって人々の心に植えつけられてきたのです。白か黒か、つまりグレー(灰色)を排除する心理、そして意識を、欧米の人々は心の奥底に抱き続けてきたのです。
これによって、ヘブライズムが希薄化した人々は、現代社会に懐疑心を抱いている人々を「悪」ととらえます。当然、懐疑派も希薄派を「悪」と捉えるのです。ここにお互いに対する根深い不信感と排除の意識が生まれました。
ちなみに、イスラム教も一神教であると共に、その原点はユダヤ教にもつながります。すなわち、イスラム教もヘブライズム的発想による宗教なのです。
 
現代社会を蝕む二分化された政治、思想、信条の深いギャップとそれに基づく不信感。
そこには、欧米で2000年にわたって育まれた、この二つの意識のアンバランスがあるのです。
 

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『外国人によく聞かれる日本の宗教 (Japanese Religion)』ジェームス・M・バーダマン (著)、澤田組 (訳)外国人によく聞かれる日本の宗教』ジェームス・M・バーダマン (著)、澤田組 (訳)
神道と仏教の違いはなんですか?
日本人には信仰心があるのですか?
日本の宗教に関するあらゆる事柄を、シンプルに、明瞭に、解説します。
観光で来日した人たちは、目にしたものがなんであるのか、どんな意味があるのか、好奇心でいっぱいです。本書では、そんな外国人たちが不思議に思う「鳥居」や「狛犬」といった造形物から、宗教とのつながりの深い観光スポットまで、幅広く取り上げています。日本人にとっては当たり前すぎて、つい見過ごしてしまいがちな事柄も、改めてその意味を知ると「なるほど」と目からウロコが落ちるかもしれません。

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「核」の時代の再来への一歩となる中間選挙前の大統領の意思表示

“President Donald Trump announced Saturday that the US is pulling out of the landmark Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty with Russia, a decades-old agreement that has drawn the ire of the President.”

トランプ大統領は、土曜日にアメリカはロシアとの歴史的な中距離核戦力全廃条約から離脱すると発表。長年にわたる取り決めが、大統領の憤りの前で崩壊しつつある。
(CNNより)

アメリカのトランプ大統領が、アメリカが旧ソ連と締結した中距離核戦力全廃条約を破棄する意向があると発表したことが、世界中に衝撃を与えています。
 
この条約が締結されたのは、1987年のことでした。
当時のアメリカの大統領はロナルド・レーガン、ソ連はミカエル・ゴルバチョフが舵をとっていました。
この条約は、ソ連の最末期に締結されました。それは、冷戦を終結させ、疲弊した経済の立て直しを目論むソ連と、ベトナム戦争以後のデタントと呼ばれた米ソの緊張緩和の目に見える成果を欲していたアメリカとが合意した、歴史的な条約です。
その後ソ連が消滅し、ソ連時代の外交上の取り決めを継承したのがロシアであったため、現在では、この条約がアメリカとロシアとの間の条約として効力を有しているのです。
 

ロシア・中国の脅威とアメリカの焦燥

今回のアメリカの発表の背景には、この15年間でロシアがソ連終焉後の混乱を収拾し、強国として復活していることがあるはずです。しかし、それ以上に、当時は予測不可能だった速度で中国が成長し、軍事大国としてアメリカに脅威を与えていることが指摘されます。冷戦時代の条約に縛られているアメリカが、思うように軍拡の道を進めず、その合間に中国が伸長してきたことへの焦りがあるのです。
ということは、この条約破棄の意向表明は、中国の隣国である日本にも微妙な影を落とすことになるはずです。
 
トランプ大統領は、ロシアが過去にこの条約に違反してきたことを強調しています。特に2008年以降、ロシアはこの条約に対して真摯ではないと、アメリカのみならず、アメリカとヨーロッパ諸国との軍事同盟であるNATOの幹部も指摘していました。トランプ大統領はそうした背景をもって、ロシアへの強い意志を表明したことになります。
 

冷戦の基軸から「自国第一主義」へ

さて、我々はこの問題を、どういった視点で分析したらよいのでしょうか。
背景は複雑です。まず、現在の世界の指導者の多くが、いまだに冷戦時代の記憶に縛られていることを強調します。冷戦時代、世界の国々はアメリカとソ連との2つの超大国を基軸に、どちらの陣営に加わるか、緊張と緊張緩和の動きの中でどのように外交の舵取りをするか、という基準で動いていました。しかし、ソ連が消滅した直後から、その常識と基準が崩壊したのです。
 
レーガン元大統領とゴルバチョフ大統領(当時)が条約にサインをし、握手をして間も無く、ソ連が崩壊しただけではなく、中東では湾岸戦争が起こり、冷戦の基軸を失った世界は混乱に見舞われました。極東では日本のバブル経済が崩壊し、中国が成長しました。世界の国々が直面したのは、2つの「極」を見つめる外交から、多方面のパワーバランスを同時に把握しなければならない外交方針への転換の必要性だったのです。
 
その結果、多くの国では、指導者の発想が内向きに傾斜しました。ロシアはプーチン大統領の下で、ソ連時代のパワーをもう一度とばかり、強いロシアの復活が叫ばれました。その結果、ロシアは国内の民族運動を武力で弾圧し、ウクライナからクリミア半島を奪取し、その過程で新たな軍備拡張を強行したのです。それが、トランプ政権やNATOが指摘する条約違反の嫌疑へと繋がったのです。
 

「国内の目=世論」に目を光らせる指導者たち

一方のアメリカも、対共産主義の旗印のもとに同盟国を糾合する求心力を失っていました。中東が不安定になり、一時は東ヨーロッパにも戦火が拡大しました。そして新たに台頭してきた中国も、急成長による貧富の格差など国内の不安定要因を払拭し、政権を安定させようとします。そのために、時には強い外交政策によって国民への支持を取り付けなければなりません。
2000年代には、尖閣諸島の問題などによる反日活動が加速し、その後は少数民族への弾圧や南シナ海への武力進出など、ロシアとも類似した政策が目立つようになったのです。
 
そして、この内向きの動きがアメリカにも影響を与えます。今までの「世界のためのアメリカ」という発想から、「まずはアメリカの利益を」という国民の意識を支持へと繋げたトランプ政権が誕生したのです。
こうした動きの延長に、今回のトランプ大統領による中距離核戦力全廃条約の破棄への意向表明があったのです。
 
現在、世界の指導者の多くが、過去にはないほどに、世論への支持に神経を尖らせています。それは一見、民主主義の原則が浸透したかのようにみえるかもしれません。しかし、皮肉なことに、冷戦時代には冷戦が熱い戦争にならないための抑制が働いていました。第二次世界大戦の記憶がまだ新しかった時代だけに、双方の指導者の間に無言の圧力としての重しがあったのです。
冷戦の崩壊は、第二次世界大戦の記憶の希薄化に直結しました。それに、インターネットの普及による情報社会の到来が拍車をかけ、指導者はより「国内の目」を気にし、同時にインターネットを逆手にとって「国内の目」を操作するようになったのです。
 

条約の破棄、そのとき日本は

中間選挙目前のトランプ大統領の今回の発表により、この条約が実際に破棄されたとき、アメリカの世論はトランプ政権にどのような意思を表明するのでしょうか。
そして、被爆国日本の指導者は、冷戦時代の常識に従ったアメリカのみを見つめた政策を維持しながら、今回の発表を黙視するだけなのでしょうか。
冷戦終結から30年近くを経た現在、新たな世界の「安定」がどのような指導者の理想によってもたらされるのでしょうか。
今回のトランプ大統領の発表は、混沌とした現在を象徴するようなニュースであるといえましょう。
 

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外国人とビジネスをするためのテクニックを学ぶなら

『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊
*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

 

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ネットビジネスにヒントを与えたシアーズの破綻とは

「シアーズ」の画像検索結果

“Sears Holdings Corp filed for Chapter 11 bankruptcy on Monday with a plan to close 142 more stores, throwing into doubt the future of the century-old retailer that once dominated U.S. malls but has withered in the age of internet shopping.”

(シアーズ・ホールディングが月曜日に会社更生法を申請。142以上の店舗を閉鎖。100年以上の歴史の中で、一時アメリカのショッピングモールを席巻した小売店が、インターネットショッピングの隆盛で衰微、先行きに大きな影を落とす。)
(New York Timesより)

アメリカにシアーズ(Sears)というデパートがあります。
一時は、カタログ販売の大手として世界的にも知られた企業です。
そのシアーズが、経営危機に陥り、日本でいえば民事再生にあたる会社更生法(Chapter11)を申請しました。
小売店は、今ネットビジネスの攻勢に晒されています。しかし、この破綻劇は一つの皮肉な物語ではないかと思うのです。
というのも、シアーズのビジネスモデルこそ、ネットビジネスが勃興した頃に多くの人が参考にしたものだったからです。
 
ネットビジネスがモデルにしたのは、シアーズのカタログビジネスでした。
シアーズが創立したのは1886年のこと。当時、アメリカは辺境地方の開拓も終わりつつありました。広大な大陸のあちこちに開拓者が開いた街や村ができあがり、それらを駅馬車やお目見えしたばかりの鉄道がネットワークしていたのです。
そんな辺境の人々は、概ね自給自足の生活をしていました。現在のコンビニにあたるような、英語ではジェネラルストア(General Store)のある街もありました。人々は必要なときは、時間をかけてそんな街まで出かけ、生活必需品を購入していたのです。しかし、辺境では運送コストもかさみ、商品は決して安いものではありませんでした。
 

カタログビジネスと共に隆盛を極めるシアーズ

その状況をチャンスと思ったのが、ミネソタ州で鉄道関係の仕事をしていたリチャード・ウォーレン・シアーズでした。そうして生まれたのが、カタログによる通信販売システムだったのです。
彼は、鉄道会社に勤務していたときに、シカゴからの貨物を目にします。その貨物は、シカゴの卸売業者から小売店に送られてきた商品でした。
中には宝石や腕時計が入っています。当時、卸売業者は小売店に商品を送りつけた上で、仕入値の交渉をする習慣がありました。しかし、その貨物は小売店が引き取りを拒否したままになっていたのです。
 
そこでシアーズは、卸売業者に連絡をとり、荷物に入っていた腕時計を安値で買い取る交渉をします。交渉が成立すると鉄道のネットワークを通して、各駅の同僚に連絡をとり、腕時計を地方の駅を通して安く販売しようとしたのです。
田舎の人々にとって、腕時計は実におしゃれなものでした。しかも、それが安値で手に入ります。さらに、当時標準時をいかに認識するかということが、地方の人々にとっては大きな課題でした。特に、鉄道員であれば尚更です。そうしたニーズもあって、彼の思惑は大当たり。彼は大きな利益を手にします。
鉄道員が副業を同僚とやり、それをチャンスとして成功することなど、今では考えられません。ある意味では、彼は楽しい時代に生きていたことになります。
 
シアーズは、この成功を応用し、地方の人々のために生活必需品を仕入れ、発送することを考えます。そうして成立したのが、シアーズカタログによるメールオーダービジネスだったのです。彼は返品条件つきという、当時としては画期的な方法で、カタログを地方に住む人々に送ります。シアーズカタログは消費者の支持を受け、ありとあらゆる商品がカタログを通して販売されたのです。
なんと、一時は住宅まで販売したといわれています。カタログはますます厚くなり、ビジネスはどんどん成長します。
 
20世紀になって、アメリカにモータリゼーションの波が押し寄せました。
ヘンリー・フォードの発案による、合理的な生産ラインによって安価に生産されたT型フォードは、一部の富裕層の嗜好品だった車を、一般大衆が所有できる商品へと変化させたのです。鉄道や道路が整い、さらに車が大陸のあちこちを走るようになったとき、シアーズはすでに巨大企業として成長していたのです。
シアーズが創業したシアーズ・ローバック社は、本社をシカゴにおき、カタログビジネスに加え、自家用車の駐車場を備えた百貨店経営に乗り出します。しかし、その時すでに創業者シアーズは他界していました。1914年のことでした。
 

ネットビジネスへの転換とアマゾンの出現

それから80年を経た90年代、世界はインターネット時代へと移行しました。
そして、カタログ販売はネット販売に取って代わられます。遠隔地の人々にも商品を、というビジネスモデルが、新しいテクノロジーによって進化したのです。
21世紀になり、アマゾンなどのネット販売の業績はどんどん伸びてゆきます。その進化のスピードは過去にはないものでした。
アマゾンが創業したのは1994年。その前後、シアーズはカタログ販売を縮小し、ネットビジネスに参入します。
 
一方のアマゾンは、元々書籍をネットで販売する事業から進化しました。当時、アメリカには、たくさんの小売書店チェーンがありました。それらは合従連衡を繰り返し、最終的にはボールダーズバーンズ・アンド・ノーブルという2つの巨大チェーンに集約されたのです。残念なことに、ボールダーズは2011年に倒産します。そして残されたバーンズ・アンド・ノーブルは、孤軍奮闘はしているものの、経営は決して思わしくなく、売却の話も出ています。20年前には考えられなかった変化です。
 
一方、アマゾンは書籍以外の商品の販売も行い、業務は拡大しています。
面白いことに、アマゾンは、アメリカではリアル書店も開設しています。豊富なデータベースから読者の求める書籍をうまくディスプレイすることで、話題となっているのです。
 
そして、今回のシアーズの会社更生法適応です。
シアーズがカタログビジネスから完全に撤退したのは、2000年のこと。それから18年経った今、過去のメールオーダービジネスの巨人は、ネットビジネスへも参入したものの、ついに自立を諦めたのでした。
 

シアーズとアマゾン、両者を分けたものとは

時代の変化による販売形態への対応のノウハウ。これはいつの時代でも問われる課題です。しかし、それは簡単ではありません。
アマゾンの小売店への進出と、ネットビジネスへのシフトを試みながらも破綻したシアーズ。この二つを大きく分けたものが何か。データベースやテクノロジーへの対応だけでは解き明かせない、ビジネスの機微の違いが、そこにはありそうです。
 

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英語力だけじゃない、世界に通用するスキルを身につけるなら

『日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context』ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)日本人がグローバルビジネスで成功するためのヒント Tips for How to Succeed in a Global Business Context
ジョン・K・ギレスピー (著)、小野寺粛 (訳)
グローバルビジネスのスキルを学びながら、英語学習にもなる。ビジネスパーソンのための対訳読み物。
20年間で、海外の日系企業の5000人を超えるビジネスパーソンと面談を行ってきた著者が教える、「日本人のためのグローバルビジネスで成功するためのヒント」。日本人以外の人々とのコミュニケーションやビジネスに対する見方を説明しながら、日本人の問題点を指摘し、その解決方法を伝授。グローバルに成功したいビジネスパーソンのみなさんに、英語力よりももっとはるかに大事なことをお教えします。

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トランプには保守層への南北戦争以来の明快な答えが必要??

“Gary Langer of ABC News points out that Trump has the lowest approval rating for a president heading into his first midterms in polling dating to 1954.”

(ABCニュースのゲイリー・ランガーは、トランプ政権は1954年に中間選挙への世論調査が始まって以来、最低の支持率となったと指摘)
(New York Timesより)

我々が歴史を検証するとき、ともすれば過去に教えられた「常識」に従いがちです。
しかし、歴史上の重要なイベントは一つの常識だけでは分析できません。
そこには、常に現在にもつながる様々な矛盾や、そこから導かれる原因と結果が含まれます。
 
今回は、来月行われるアメリカの中間選挙を見据えて、その視点から150年以上前にアメリカを二つに割いた南北戦争について考えます。
 

南北戦争と「奴隷制度」

南北戦争といえば、アメリカから奴隷制度 slaveryが廃止された戦争として知られています。
それは、奴隷制度を廃止しようとしたアメリカ合衆国から離脱して独立しようとする南部諸州 Confederateと、あくまで統一したアメリカを求める合衆国政府 Unionとの間の戦争でした。
 
一般的にみれば、奴隷制度を廃止し、その人権を擁護したことが南北戦争の意義として評価されています。
しかし実際は、南北戦争によって黒人への差別が廃止されたわけではありません。むしろその後、アメリカを再度統一国家にするには、様々な矛盾を乗り越えなければなりませんでした。それは、奴隷制度を廃止して前に進もうとする社会に、多くのブレーキをかけたのです。
 
まず、再び国家が分裂しないように、南部にどう対応するかということが大きな課題となりました。南部の諸州は戒厳令下に置かれ、政府の監視の中で復興してゆきます。しかし、その一方で南部との妥協も必要でした。
その妥協の過程で、アメリカ政府は、南部諸州がジム・クロウ法 Jim Crow lawsと呼ばれる法律によって、黒人と白人とを分離させ、差別することを許容する法律を黙認します。その妥協のもとに、南部諸州はアメリカ合衆国に復帰したのです。
 
アメリカは、自由と平等を国是とする国家です。
そんなアメリカに黒人や非白人系の人々への差別が、公民権法が制定される1964年まで組織的に認められることになります。
 

南北戦争と「地方分権」

一方「自由」といえば、アメリカは独立当初から、人々が中央政府 Federal governmentに拘束されることを嫌い、それぞれの地域の政治的な自立と自由裁量を認めていました。そのため、アメリカ人の多くは、伝統的に中央政府が強くなることに警戒感を抱いてきました。この地方の自主独立の原則を盾に、南部が反抗したことが、南北戦争へとつながったのです。結果として、南北戦争後は、連邦政府が強権を発動して鎮圧した戦争となり、以後アメリカでも地方の権限より中央の権限の方が重んじられるようになったのです。そして、この地方と中央との確執は、その後ずっとアメリカの政界を左右してきました。
 
例えば、オバマ前大統領が政府主導の健康保険をといえば、それは中央の管理が強くなるということで、反対がおこります。銃規制を行おうとすれば、それは個々人、そして各地域の事情を無視し、政府だけが武器をもてる危険な状態だとして、反対運動がおこります。トランプ大統領は、そうした地方の権利を容認する政策を打ち出し、大統領に当選したといっても過言ではありません。
 
ここで、トランプ政権の支持母体について考えてみます。
彼らの多くは大都市ではなく、地方都市、農村に居住しています。
彼らこそが、伝統的に中央の影響を嫌い、銃を所持し、自らの住む地域の自立を支持する人々です。彼らは、共和党右派の支持母体です。
そもそも南北戦争の頃は、地方の権利を主張し、綿花栽培などのプランテーション経営のコストを削減するために、奴隷制度を存続させることを容認していたのは、民主党でした。そして、奴隷制度を廃止し、アメリカを国家として統率してゆこうとしていたのが、共和党だったのです。リンカーン大統領は共和党の大統領でした。
 
しかし、その後、南部との妥協や西部の開拓などによって巨大化したアメリカ社会の中で、共和党が保守化し、民主党と政策や立場が入れ替わっていったのです。
20世紀になると、民主党は労働組合などとの連携を深め、人権や人種差別の撤廃などに対して、国家が率先して改革をしてゆく立場をとってゆきます。
そして、共和党は伝統的な地方分権をよしとして、より中央政府の関与を制限し、「小さな政府」という立場を支持するようになりました。
 

新たなる「分断」の時代へ

トランプ大統領は、まもなく中間選挙の洗礼を受けなければなりません。
スキャンダルや二転三転する政権内の人事問題などで支持率が陰りながらも、好景気と北朝鮮との融和や中国への関税制裁など、独自の外交政策で人気を挽回したいというのが、彼の本音でしょう。
そして、彼が中間選挙を勝ち抜き、共和党が議会の多数派を占めることで安定した政権を維持するためには、ここで解説した共和党の支持者の心理をしっかりと把握してゆくことが必要です。南北戦争以来の、保守系の人々の民意の揺れ動きに同情してゆくことが必要です。
 
地方分権を支持する人々は、大きな権力を持つ中央政府と同じように、大きな影響力を持つ国際的な大企業を嫌います。
グーグルアップルといった企業が移民政策を巡って、トランプ大統領と対立する構図は、それを際立たせることで、保守的な有権者への有効なアピールとなるはずです。
 
ただ、南北戦争の頃と同様に、現在のアメリカは、この共和党保守層と民主党系の人々との確執が、論争の域をこえて感情的なものへと変化しつつあります。
お互いに相手方を敵視し、議論の余地もなくなるほど対立が激化しています。
現在は、南部と北部との分断ではなく、この世論の分断が大きな社会不安になろうとしているのです。中間選挙はそうした緊張の中で、その結果が注目されているのです。
 

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あの名演説からアメリカを学ぼう!

『I Have a Dream!』マーティン・ルーサー・キング・ジュニア (著者)、山久瀬洋二 (翻訳・解説)I Have a Dream!』マーティン・ルーサー・キング・ジュニア (著者)、山久瀬洋二 (翻訳・解説)
「I have a dream.」のフレーズで有名なこの演説は、20世紀最高のものであるとの呼び声高い。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの肉声で聞き、公民権運動のみならず、現在のアメリカに脈々と受け継がれている彼のスピリット、そして現在のアメリカのビジネスマネジメントの原点を学ぼう。山久瀬洋二による詳細な解説つきで、当時の時代背景、そして現代への歴史の流れ、アメリカ人の歴史観や考え方がよく分かる1冊。
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