カテゴリー別アーカイブ: ニュースの英語と文化背景・時事解説

山久瀬洋二の「ニュースの英語と文化背景・時事解説」
話題の海外ニュースから旬な英語表現をピックアップ。グローバルな視点で文化背景、歴史、時事を解説。過去の記事は「海外ニュースの英語と文化背景・時事解説」目次からどうぞ。

ベゾスの離婚騒動が巻き起こした報道の論理とは

“Attorney claims National Enquirer threat to publish Bezos photos was ‘journalism,’ not blackmail”

(弁護士は、ナショナル・エンクワイアラーのベゾスへの写真公開の脅しはジャーナリズム活動の一環であって、脅迫ではないと主張)
― Washington Post より

離婚スキャンダルから政治とメディアの論争へ

 アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)の離婚騒動が、思わぬ政治スキャンダルになろうとしています。
 
 事の起こりは、ジェフ・ベゾスが長年連れ添った妻、マッケンジー・ベゾス(MacKenzie Bezos)との離婚を発表したことです。タブロイド紙ナショナル・エンクワイアラー(National Enquirer)が、その離婚の背景にあるベゾスのガールフレンド、ローレン・サンチェス(Lauren Sanchez)との情事を暴こうとしました。
 
 有名人のスキャンダルをメディアが暴くことはよくあり、それ自体は報道が事実に反した誹謗でない限り、合法的な行為です。
 しかし、この問題にベゾスは強く反発します。ベゾスは、アメリカを代表する新聞社ワシントン・ポストのオーナーであり、同紙は現在、トランプ大統領の様々なスキャンダルを追っています。反して、ナショナル・エンクワイアラーの最高経営責任者デイビッド・ペッカー(David Pecker)は、トランプ大統領を支持しており、大統領の政治顧問であるロジャー・ストーン(Roger Stone)とも交流があると噂されていることが、ベゾスの反発の背景にあるようです。
 ベゾスは、メディアなどでの大統領への攻撃を続けるなら、ベゾスの極めてプライベートなスキャンダルの内情を暴く、とペッカー側から脅しをかけられていると主張します。それに対し、ベッカー側はあくまでもベゾスに関する様々な違法行為や情事を記事にする調査であって、違法性はないと主張しているのです。
 

懸念される取材の違法性と才能の枯渇

 タブロイド紙が、有名人や影響力のある人物に対して、スキャンダルをネタに様々な情報を得ようとするのはよくあることです。今回は、ベゾスのガールフレンドであるサンチェスの兄弟から情報のリークがあった、ともいわれています。さらに、ベゾスの離婚発表後にしか知り得ないような情報をナショナル・エンクワイアラーが入手しており、そこにはハッキング行為が介在している疑いも強いのです。ワシントン・ポストは、自社がベゾスに所有されていることをしっかりと紙面で解説しながら、そうした事件について報道をしているのです。ナショナル・エンクワイアラーの親会社にあたるAMI(American Media Inc.)に対して、こうした行為が単なるタブロイド紙の「下品」な報道の域に収まらず、違法性すらあるのではないかと、同紙は解説します。
 
 ベゾスの離婚騒動は、ベゾス自身の資産の分配にからんで、アマゾンの経営自体にへの大きな影響も懸念されています。いわゆるガレージビジネスから始めて、アマゾンを世界屈指のオンライン小売店に育てた、ベゾスの経営手腕が賞賛されてきたことは周知のことです。ベゾスの手腕は、ある意味で不動産など様々な事業に手をかけては失敗を続けてきたトランプ氏にとって、嫉妬の対象であるともいわれています。
 今回のベゾスとタブロイド紙との係争の背景に、そんなトランプ陣営と、トランプ大統領の資質を常に問い続ける、ワシントン・ポストに代表されるアメリカの有名メディアとの小競り合いがあることだけは事実のようです。
 
 日本でも、著名な人物がスキャンダルでその地位や名誉を失うケースが後を絶ちません。メディアが、プライベートな問題と、その個人のビジネス手腕や才能とをまぜこぜにして、その人を葬り去ってしまうケースが多くあります。報道の自由は、民主主義国家では絶対に守られなければならない権利ですが、その権利を武器に、才能ある個人を、才能とは無関係な個人の問題をネタに叩き潰すことが、正しい報道姿勢なのかどうかは、我々も常に評価してゆかなければなりません。特に、メディアがポピュリズムを煽り、安価な勧善懲悪の刃を振りかざし、視聴率や購読者数を増やそうとすることの危険性には注意が必要です。メディアには、国の権力以上に世論への牽引力があるからです。
 

「報道の自由」はメディアと政治の武器ではない

 ベゾスは、デイビッド・ペッカーの圧力には一切屈しないどころか、その過ちを公表し続ける姿勢を強調しています。この件で、アメリカの三大ネットワークの一つであるABCのコメンテーター、ステファノプロス氏がAMIの弁護士にインタビューをしています。
 その中で彼は、今回の問題は単なるタブロイド紙の報道の域を超えており、その背景にはベゾスのガールフレンドの関係者が、トランプ側と深いつながりがあることも絡んでいるのではないかと詰め寄りました。つまり、トランプ政権による何らかの影響が、暴露報道事件の背景にあったのではというわけです。その真偽はいまだに霧の中ですが、もちろんAMI側はそうした事実を強く否定し、AMIは報道機関として通常の取材と報道を行ったまでだと主張します。
 
 ある意味で、こうした報道は騒ぎが大きくなればなるほど読者を捉え、メディア側の収益につながることも事実です。日本でも、法的な問題が刑事事件にならない限り、民事訴訟での経費は取材費用の一部である、と豪語する人もいます。あえて違法すれすれの報道を行うことによって、取材対象を傷つけながらも売り上げを伸ばし、その行き過ぎを否定されれば、報道の自由は守られなければならないとするのが、報道機関の悪弊でもあるのです。
 
 一方、日本の政治家が、そうした報道を規制する法律が必要だと発言したこともありました。これはこれで、極めて危険なことなのです。報道の自由は絶対に守られるべきですが、それを「ならずものの武器」にしないようにするには、視聴者の良識と目が鍛えられてゆく長い努力が必要なのです。そのことで政治権力が報道への規制に乗り出すことは、民主主義の土台を覆す行為に他なりません。
 
 ベゾスの問題は、こうした複雑な課題を我々に投げかけているのです。
 

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『トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義』山久瀬洋二 (著)トランスナショナル・マネジメント:アメリカ人に「NO」と言い、「YES」と言わせるビジネス奥義』山久瀬洋二 (著)
国家・民族・言語・宗教の境界を超えてアメリカ人と対等にわたりあう、80の絶対法則!
欧米をはじめ、日本・中国・インドの大手グローバル会社で100社4500人の異文化摩擦を解決してきたカリスマコンサルタントである山久瀬 洋二氏が、トランスナショナルなアメリカ人を正しく理解し、対等にビジネスするための奥義を、豊富な事例と図解でわかりやすく説明します。英語よりも、MBAよりも、もっとずっと大切なものがここにあります。

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ゴーン氏事件によってあらわになった日本の司法制度の課題とは

“The Carlos Ghosn case is putting Japan’s system of ‘hostage justice’ under scrutiny”

(カルロス・ゴーンのケースは日本の「人質型司法」の是非を問いかけている)
―CNNより

 日本の司法制度に今、海外の厳しい目が向けられています。
 例のカルロス・ゴーン氏のケースで、彼の勾留が次々と延長されている状況が世界で報道され、注目されているのです。

日本の司法における「被告人」とは

 実は、日本の司法制度は、戦前からの規定がそのまま生きているものも多く、硬直し変化することができない日本の制度の代表、といっても差し支えありません。
 英語でdeath and taxesという言葉があります。これは、「死と納税は人間である以上、逃れられない2つの宿命である」として、税金を納める義務の厳しさを表したイディオムです。
 所得を過少報告し、さらに背任容疑にも問われているゴーン氏の置かれている立場が厳しいものであることは、日本のみならず海外においても異論はありません。
 しかし、日本の場合、検察税務署の旧態依然とした一方的な取り調べ方があまりにも異常であると指摘されているのです。
 日本では、弁護士であっても、税務署と争うことを嫌います。また、検察の取り調べに対し、弁護士が被告を代理して立ち会うことは許されません。その結果、被告は一方的に独房に閉じ込められ、長期間の厳しい取り調べに耐えなければならないのです。
 
 ここで、冷静に考えてみたいことがあります。
 憲法でも保障されているように、民主主義国家では人を非公開な環境で裁くことは禁止されています。同様に、被告人には黙秘権もあれば、弁護士を立てて争う権利も与えられています。当然、被告人は裁判で有罪とされるまでは罪人ではありません。被告人はあくまでも被疑者であって、罪を犯した疑いをかけられているに過ぎないのです。
 従って、裁判に至る過程を含め、裁判所での判決が下るまで、被告人は自らの罪が冤罪であること、あるいは軽微なものであることを証明する権利があるわけです。
 
 アムネスティ・インターナショナルを含む海外の専門家、ジャーナリストが指摘したいのは、日本では被疑者を一方的に長期間拘束する制度が通用することが、この民主主義国家の原則から大きく逸脱しているのではないかということなのです。
 その結果、日本では検察が起訴したケースの99.9%に有罪判決が下されているという、驚異的な統計が指摘されるのです。これは基本的人権が保障され、報道や言論の自由が認められている他の主要先進国と比べると、5%から15%も高い数字です。
 
 それだけ警察や検察官が緻密に捜査をしているからだ、という主張はあるかもしれません。しかし逆にいえば、その緻密さと同様の時間と労力をかけて、被告が自らにかけられている疑いに対して、潔白を示す機会が与えられているのだろうかという疑問が投げかけられるのです。
 そして、被疑者が証拠を隠滅しないために留置するのであれば、被疑者が自由を奪われている間に、検察官や税務官が自らに有利な証拠を捏造しない保障はどこに与えられているのでしょうか。
 このことから、CNNは日本の検察の取り調べをhostage justice、つまり「人質として取り調べる司法制度」と皮肉っているのです。
 

「拘置所」は「刑務所」ではない

 今回、ゴーン氏は何度も保釈を請求したものの、最終的には彼がいまだに影響力があり、証拠を隠滅する可能性があることを理由に、裁判所は保釈請求を却下しています。
 彼の息子によれば、ゴーン氏は長期間の勾留によって、10kg近く体重が減っていると指摘しています。
 
 CNNはこのケースを取り上げるにあたって、2014年にビットコインのスキャンダルで、会社の資金を不正に流用した疑いで11ヶ月半勾留された、マルク・カルプレス氏にインタビューしています。
 彼によれば、日本での勾留は単なる留置ではなく、すでに刑罰を受けているに等しい環境であると述懐し、その過酷さについて厳しく指摘しています。彼は、拘置所内の狭く劣悪な環境で、毎日長時間取り調べを受け、協力するよう迫られた模様を証言しているのです。カルプレス氏は拘留中に34.9kgも体重が減り、窓のない小さな畳の部屋に勾留され、規則を守るよう看守より厳しい指導や強制を受け、違反すると両手を後ろ側に拘束され、椅子のないフロアの上に数時間放置されたこともあったと証言します。
 カルプレス氏は最終的に保釈されますが、彼の裁判はまだ継続中で、今年の3月に裁判員による評決が予定されています。その手続きの長さと、その間に実質上仕事も移動もできない状況に置かれることも問題だと彼は訴えます。
 
 ここでポイントを整理します。
 拘置所は、刑が確定するまで被疑者を留置する場所です。
 基本的に殺人事件のような重大犯罪などを除けば、刑が確定するまでは、被疑者は保釈されることも多く、保釈にあたっては、保釈金を預けると共に、逃亡や証拠隠滅を図らないように様々な条件が設定されます。さらに大切なことは、拘置所は犯人を処罰するところではないのです。拘置所は刑務所ではありません。従って、看守による過度の拘束や侮辱、処罰などを受ける場所ではないわけです。
 
 もちろん、金銭上のモラルの問題において、ゴーン氏やカルプレス氏に対して様々な指摘があることは当然でしょう。ただ、その問題と司法や刑罰の制度とを混同してはまずいことを、我々は冷静に考えるべきです。

日本は本当に「民主主義国家」なのか

 多くのメディアは何よりも、同じ制度に固執し変化を嫌う、日本の権力構造を象徴したものとして、今回のケースを注視しているのです。
 日本が本当に自由で民主的な国家なのか。今回の事件は皮肉にも、ゴーン氏が有罪かどうかということ以上に、こうした原点的なテーマを問いかけるケースとなってしまったのです。
 

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複雑な日本のシステムが一目瞭然!

『全図解 日本のしくみ』安部直文 (著者)、マイケル・ブレーズ (訳者)全図解 日本のしくみ』安部直文 (著者)、マイケル・ブレーズ (訳者)

身の回りの素朴な疑問から、複雑な政治・行政・経済・司法のしくみについて、簡潔な文章とイラストで、すべてにお答えする“絵解き”小事典。専門用語がすべて英語に!
複雑で流動的な日本の社会制度を、ひと目でわかるように図解を主にして解説。1つのテーマを2〜4ページのダイジェスト版にすることで、不明瞭とされがちな日本のしくみの輪郭がコンパクトに見えてくる。

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台湾を知れば、戦後の隣国の複雑な国際環境がみえてくる

“Over the last few years China has made a series of ambitious military reforms and acquired new technology as it aims to improve its ability to fight regional conflicts over places like Taiwan.”

(ここ数年間、中国の本格的な軍事、軍事技術改革によって、台湾など周辺地域での戦闘能力が改善されている)
― CNNより

台湾に感じる日本への関心と複雑な状況

 台湾に出張しました。
 台湾では、出版関係の人々と様々な書籍の企画について話し合いました。
 彼らが一様にいうには、台湾の人は日本への興味が強く、一般的な日本紹介の書籍はすでに出尽くしているということでした。彼らが本当に求めているのは、よりニッチで深い日本の事柄なのです。
 
 その上で、ある編集者が私に日本人の台湾への意識の低さを嘆いていました。台湾へ観光に来る人は多いものの、台湾の置かれている本当の状況を理解しようと思う日本人は極めて少ないというのです。
 
 台北の中心部に、林森・康楽公園という市民の憩いの場があります。ここには日本の鳥居が二つ立っています。これは、戦前に日本が台湾を統治していた時代の第7代総督・明石元二郎とその秘書官を葬ったときに建立されたものといわれています。そこには、この鳥居が歴史の記念碑として保存されている旨の案内板が置かれています。案内板には、日本の統治時代への批判は一切触れていません。
 
 台湾の人々のこうした日本への意識に触れるたびに思わされることが、この国の置かれている複雑な状況です。
 韓国と同様、台湾は戦前日本が植民地にしていました。その後、中国での国共内戦の結果、国民党政府が台湾に逃げ込み、中華民国の本拠地となったことは、歴史を勉強したことのある人であればお分かりかと思います。
 

日本人の知らない台湾の事情と独立の精神

 しかし、それ以上台湾のことを詳しく知る人は、日本には少ないようです。
 もともと台湾には、現地に昔から住んでいた人々がいました。こうした人々を台湾では本省人といいます。
 そもそも台湾は中国の東にある自立した島でした。大航海時代にはオランダやスペインが拠点を置いたこともありました。
 清朝になって、中国本土の主権が及ぶようになったものの、実質上組織的な統治が進められたのは、日本が日清戦争の後に台湾を植民地にしてからのことでした。
 そして、日本が戦争に負けたあと、台湾を引き継いだ国民党が、中国本土からやってきた新たな占領軍となったのです。
 
 国民党政権は、台湾在住の人々を統治するにあたり強権を発動しますが、国民党内部の腐敗や横暴な統治に人々は反発し、大規模な暴動も起こります。国民党が本格的に統治を始める直前の1947年には有名な二・二八事件という暴動が起こり、国民党政府が民衆に発砲、反政府活動をした者のみならず、数万人の本省人や残留日本人が殺害されたといわれています。
 
 多くの本省人にとって、国民党は日本に代わって台湾に入ってきた侵略者だったわけです。中国本土が共産化され、台湾が国民党政権の下に中華民国として存続した後も、外省人と呼ばれた中国本土からやってきた国民党関係者と本省人との対立は続きます。その結果、中華民国政府は政権基盤を強めるために、長期間国民党による独裁政権を維持していました。その結果、多くの血が流れました。その詳細はいまだに闇の中。日本でもほとんど知られていないのです。
 その後、本格的な民主化運動が始まり、総統が選挙で選ばれたのは1996年、李登輝政権のときでした。それは、反共の砦として、冷戦の中で1987年まで民主化運動を封じ込めていた韓国と、極めて似た経緯であったといえましょう。
 
 ここで知っておきたいのは、台湾が自らの独立を保とうと主張するとき、それは中華人民共和国に対して独立を維持しようというのではなく、台湾が台湾として、外省人が打ち立てた中華民国から独立しようという主張であることです。
 台湾では、中華民国ではなく台湾としてのアイデンティティを維持し、その上で中華人民共和国が主張する一つの中国という発想からもしっかりと距離を置き、自立しようという世論が強いのです。
 
 しかし一方で、経済大国となった中国なしには、台湾経済は成り立たないといわれています。それだけに、台湾の人はやっと獲得した民主化された台湾が、中国に飲み込まれることには強い警戒感があるのです。
 
 台湾の人の多くは、日本から独立し、中華民国からも独立し、かつ中華人民共和国からも侵略されずに、台湾として独立したいのです。しかし冷戦以来、中国は台湾を宿敵の国民党の統治する国家として見てきました。そして、台湾は中国の一部であると主張します。そのために、中国への配慮から国際政治の中では、台湾を国家として承認する国はほとんどなくなりました。ここに、台湾の本省人のやりきれない思いがあるのです。
 
 人口2300万人の台湾こと中華民国が、いかに本当の台湾となり、強大な中国(中華人民共和国)の脅威からも自立できるか。この政策をめぐり、台湾では選挙のたびごとに意見が激しく対立します。
 

隣国の歴史を理解し、対日感情と向き合う

 そして、沖縄のすぐ西にある台湾は、日本にとっても極めて重要な国であることも、我々はもっと理解する必要があるのです。

「台湾人に、日本の植民地時代への反発がないかといえば嘘でしょう。しかし、その後の国民党に支配された台湾の悲劇が、それ以前の過去を吹き消しているのです。今、台湾は日本との協力と連帯を強く求めているのです」

 ある出版関係者はそう語ります。確かに書店に行けば、日本語のコーナーも英語と同じほどの大きさで、様々な日本語学習書が並んでいます。

 
 韓国は長年、韓国人の国家でした。ですから、日本が植民地にしたことへの恨みが深いことは否めません。それと比較して台湾は、そもそも日本が統治した後、中国が台湾に進出し、現地の意向をよそに国家をそこに樹立したわけです。この歴史的背景の違いが、韓国人と台湾人との対日感情の差異となっていることも、理解しておくべきなのです。
 

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『旅する台湾華語 台灣好好玩!』簡希蓁(著者) 高向敦子(構成)旅する台湾華語 台灣好好玩!
簡希蓁(著者) 高向敦子(構成)
「旅」をテーマに学ぶ、すぐに使える台湾華語

台湾に興味のある人や台湾華語を学ぶ人にとって、まさに旅行は実践の最大のチャンス!本書では、台湾旅行を9つのシチュエーションに分け、それぞれのシーンで想定される台湾人との会話を通じて台湾華語を学びます。 飛行機の機内アナウンスからはじまり、観光に出かけ、街歩きや買い物・食事を楽しんだ後、台湾人と仲良くおしゃべりを楽しむ…というように、実際に旅の気分を味わいながら学習できる構成になっています。CDつきだから、音声を聞いてすぐに使えます。台湾旅行を存分に楽しむための学習書。

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海峡と川を隔てた明暗が南北問題を浮き彫りに

“An 8-year-old boy from Guatemala died in United States custody early Christmas Day, the second death of a child in detention at the southwest border in less than three weeks, raising questions about the ability of federal agents running the crowded migrant border facilities to care for those who fall ill.”

(グアテマラからの不法移民として、アメリカ当局に収監されていた8歳の少年がクリスマスの日に死亡。アメリカ南西部の国境地域では、この3週間未満で2件目のできごととなる。このことは、混み合った施設で連邦政府の当局者が不法入国者の健康問題などへ対処する能力に限界があるのでは、という疑問を投げかける)
 
―NY Timesより

 ヘッドラインで紹介した記事を分析するために、まずはアメリカを離れてみます。
 北アフリカの西の端、スペインと海を挟んで対峙するモロッコを飛行機で発てば、30分もしないうちにヨーロッパ上空に至ります。そこにあるジブラルタル海峡は、世界の南北問題を象徴する海峡です。
 一方、メキシコとアメリカとの国境に流れる川、リオ・グランデの川幅はそれほど広くありません。メキシコとアメリカとの国境は、ここに報道されている通り、移民の受け入れをめぐるもう一つの南北問題を象徴する現場となっています。

北アフリカ:大陸から海峡を渡れない人々

 さて、北アフリカでいうと、サハラ砂漠の各地にはほぼ無政府状態の地域があります。不安定な政情と経済難によって、難民が比較的安定したモロッコに流れてきます。
 モロッコ政府は、隣国のアルジェリア政府が、モロッコ南部の民族運動を支援しているということで、国境の往来を厳しく制限し、政治的混乱を避けようとしているのです。
 それでも、多くの人がモロッコの主要都市に流れてきます。そして、さらにヨーロッパを目指して何人もの人が海に出ます。しかし途中で船が難破し、溺死者が絶えません。
 
 そんなモロッコの観光地マラケシュで、アブドゥール・マシャーリは、ホテル付きの運転手をしています。3人の子供をかかえ、ホテルを訪れる海外からの観光客を名所旧跡に連れて行くのが彼の仕事です。彼の給与は月収5万円。欧米やアジア各地からやって来る観光客は、ホテルに1日約1万5千円のドライバー料金を支払っています。アブドゥールは、マラケシュの生れ。道路の脇で物乞いをするアフリカ大陸の奥地からやって来た難民を横目に見ながら、彼は彼で必死に生計を立てています。
 
 実は、彼は若い頃に法律を勉強し、ドイツへの留学を試みました。
 しかし、アフリカからの移民への条件が厳しくなる中、ビザがおりずに夢は挫折。一方、彼の友人はドイツへの留学ビザがおり、今ではハンブルクで生活しています。彼の収入はアブドゥールの13倍。アブドゥールはビザがもらえないまま、マラケシュを一歩も出ることなく、家族を支えています。今の夢は、貯金をしてメッカへの巡礼を行うこと。彼は敬虔なイスラム教徒なのです。
 

アメリカ:メキシコとの国境と豊かな暮らしの間で

 そうした中、トランプ大統領が、ヘッドラインで紹介したニュースにコメントを出します。
 アメリカとメキシコとの国境にたどり着いた子供が入国を拒否され、衰弱し死亡した事件について、「それは民主党が国境を開いてくれるという期待を与えるからだ」と、子供の死を民主党のせいにしたとして物議を醸しているのです。
 このニュースの通り、メキシコとアメリカとの国境にたどり着く人々は、メキシコ人とは限りません。中米各地から文字通り両手で持てるものだけを携え、ときには裸足で歩いて夢の国アメリカを目指します。モロッコから海峡を渡ろうとしている人々の多くが、モロッコ人ではない状況と似通っています。
 
 アンドレア・ラモレスは、テキサス州に住むメキシコ系アメリカ人です。
 彼女はトランプ大統領を支持しています。彼女の両親はメキシコからの移民で、テキサス州のサンアントニオで不動産業を営み成功しました。娘は同じくメキシコ系の夫と両親の事務所のあとを継いでいます。
 アンドレアは、これ以上不法移民が増えて、治安が悪くなり、メキシコ系移民への偏見が強くなることを危惧しているのです。そして、自分自身はアメリカ人として、アメリカの利益を考えてトランプ大統領に投票したと語っています。
 彼女は、貧しい中米の人々には同情するものの、そうした人々をアメリカが引き受ける必要はないと考えています。それは、モロッコでドライバーをするアブドゥールと同じ考え方です。海峡、そして川を渡ることができた人々と、そうでない人々との明暗があちこちで見えてきます。
 
 モロッコやメキシコを経由して、豊かな地域を目の前に見ている人々。海峡や川の向こう側にたどり着けば、10年、あるいは20年も頑張れば、それなりの生活ができるようになるはずだと彼らは信じています。それよりも、元の暮らしに戻ることが、荒廃した彼らの故郷に戻ること自体が不可能なのです。
 

南北問題に揺れる政治、投じた一票の先に見える世界は

 アブドゥール・マシャーリは、そんな難民の姿を見つめながら、ドイツに渡れなかった自分を悔やむ時間もなく、豊かな国からやって来る観光客のドライバーとして家族を養っています。子供達にはなんとか海外で豊かになってもらいたいと思いながら。観光客はモロッコを楽しむと、ニコニコしながら彼と握手をし、空港からヨーロッパに戻って行きます。ほんの2時間も飛行機に乗れば、そこは安全で清潔で、便利な先進国です。観光客が一日で使う遊興費が、アブドゥールには一月分の給与にあたるのです。
 そして、テキサスに住むアンドレア・ラモレスは、民主党の反対にあって停滞しているメキシコとアメリカとの国境の壁作りが進み、自分たちの街にこれ以上貧しい移民が流れてこないよう、政治活動に参加しています。
 
 そうした最中に、グアテマラからメキシコを経由し、はるばるアメリカにたどり着いた子供が死亡するという悲しい事件が起きたのです。
 このような悲しい現実がありながらも、アメリカには豊かさを求めて今でも世界中から人が押し寄せます。その中から将来のアメリカを支える優秀な人々が生れ、育つのもまた事実です。
 
 右傾化が続く世界にあって、南北問題は世界の政治に大きな影響を与えています。
 2019年にフランスとドイツがどのように変化するか。そんなヨーロッパの変化に、モロッコなどのイスラム教諸国がどのように対応するか。そして、トランプ政権はどのように推移するか。それが文字通り、アブドゥール・マシャーリやアンドレア・ラモレスの投じる一票にかかっているのです。
 

* * *

『アメリカ史 / A Short History of America』西海コエン (著)アメリカ史 / A Short History of America』西海コエン (著)

アメリカの歴史を読めば、アメリカのことがわかります。そして、アメリカの文化や価値観、そして彼らが大切にしている思いがわかります。英語を勉強して、アメリカ人と会話をするとき、彼らが何を考え、何をどのように判断して語りかけてくるのか、その背景がわかります。本書は、たんに歴史の事実を知るのではなく、今を生きるアメリカ人を知り、そして交流するためにぜひ目を通していただきたい一冊です。

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100年間問われている国家と企業との切れない縁

Huawei’s Meng Wanzhou was arrested in Canada on 1 December Photograph: STRINGER/Reuters

“The Justice Department is investigating Ms. Meng’s company, Huawei, on charges of violating sanctions on Iran, and her arrest was meant as a warning shot by the Trump administration in its campaign to limit the global spread of Chinese technology.”

(司法当局の孟氏への取り調べは、ファーウエイがイランへの制裁決議に違反しているためであるが、彼女の逮捕はトランプ政権による中国の技術の世界への拡散に歯止めをかけるための警告とも受け取れる)
ーNY Timesより

2018年:国策と企業活動に揺れた世界

 2018年もそろそろ終わりに近づいています。
今年は、経済界でも多くのことが起こりました。特に年末近くになって、カルロス・ゴーン氏のスキャンダルによって、日産・ルノー連合に激震が走ったことは記憶に新しいはずです。さらにそれから間もなく、カナダでファーウエイの副会長である孟晩舟氏が、イランへの制裁決議に違反し、技術を提供したかどでアメリカの要請で逮捕され、これまた通信業界での大きなニュースとなりました。
 この二つの事件に共通していること。それは、国家の利益と大企業との関係です。日本では伝統的に官僚主導の規制に守られて多くの企業が成長してきました。三井や三菱など、明治以降、政治と大企業とは国策を共に担って成長してきたことは周知の事実です。
 
 アメリカは、ファーウエイが自らの端末を使って、アメリカの機密情報を諜報しているとも非難。もちろん中国側はこの主張に真っ向から反発しています。
 国家情報法という法律が中国にあることが最近報道されています。中国国籍の者は国家の必要とする情報を提供する義務がある、というのがこの法律の骨子です。ということは、中国は国家として自国の国民をスパイとして使えることになるわけです。ファーウエイはそうした諜報活動の最先端企業である、という嫌疑がかけられていることになります。
 

20世紀:アメリカの金融業界に動かされた世界

 そもそも国家と企業とが、その利益が一致している限りにおいて、陰に日向にその国の運営を共有していることは、今に始まったことではありません。
 この関係が特に強固になったのは、20世紀になってからのことといえましょう。ここで、今から100年前の世界を覗いてみます。100年前の今頃、ヨーロッパでは第一次世界大戦が終了し、翌年1月に開かれるパリ講和会議に向けて様々な準備が行われていた頃でした。
 
 アメリカからは、ウィルソン大統領が、大国が引き起こしてきた戦乱に終止符を打とうと、国際連盟の設立を提唱し、人々はそれを支持し恒久平和を願っていました。
 しかし、そんな望みはその後20年であえなく葬り去られました。いろいろな原因が考えられますが、まずウィルソン大統領の提案した国際連盟がその後、有名無実化していったことが挙げられます。そもそも提案を行った当事者のアメリカで、国際連盟加盟が議会で否決され、アメリカ不在の連盟となったことも禍根となりました。
 
 その原因の一端を担ったのが、アメリカの金融資本であることはよく知られた事実です。元々、ヨーロッパが世界大戦に突入したとき、将来のドイツの敗戦を予測して、アメリカの金融資本は多額の投資をフランスやイギリスに対して行っていました。和平が成立した後に、そうした資金を回収するためには、ドイツに多額な賠償金を支払わせなければなりません。ウィルソン大統領の理想に従えば、国際連盟の設立とともに、ドイツへの損害賠償の請求も行われないことになります。
 これを警戒したJPモルガンをはじめとしたアメリカの金融業界が、ウィルソン大統領の提案に反対し、議会を動かしたのでした。その結果、多額の賠償金に苦しむドイツではヒトラーが台頭し、有名無実化した国際連盟は機能できないまま、第二次世界大戦へと世界は突き進んでいったのです。
 

~21世紀:ネットビジネスの台頭とグローバル経済

 アメリカの金融業界が世界の景気を左右するまでに成長した20世紀。その一挙一動は、すでに世界史の主要なイベントに大きな影響を与えていたのです。
 20世紀の終盤から21世紀になって、そんな伝統的なアメリカの経済界は大きな変化に見舞われました。それは、諜報機関が最も必要とする情報が、ネットビジネスという新手の起業家の手による発案や製品に委ねられはじめたことです。それまでは、鉄鋼や自動車、そして航空業界といった財閥は、明らかに金融界と密接に関わりながら政界にも影響を与えてきました。ところが、そうした伝統的な業界とは全く関わりのないフィールドからネットビジネスは成長してきたのです。アップルにしろ、マイクロソフトにしろ、アメリカの政界とはなんら関係のないベンチャービジネスから成長してきました。これら新しい企業とどのように付き合い、アメリカの国益と絡めてゆくかというテーマは、アメリカ政府にとっても全く新しい課題だったのです。
 
 これは未だに古い伝統に縛られた、長大型の企業との関係に依存する日本にとっては、さらに深刻な課題といえましょう。
 しかし、中国は状況が異なります。中国経済が成長したとき、その利権を最も享受したのは、政界や軍事などと深く関わった人々でした。ファーウエイの創業者も、元は人民解放軍と深く関わっていたといわれています。その関係が以前どのようなものであったにしろ、国と大企業との関係がネットビジネスにおいても極めて密接であることが、中国のアドバンテージではないかと多くの人が語っています。
 
 カルロス・ゴーン氏の逮捕についても、我々はフランスという国の存在を常に意識します。国がルノーの株主であればなおさらです。そして、トランプ政権下のアメリカでは、国家の利益がグローバルな企業活動より優先され、一度は分断されつつあった国家主導での経済運営へと、大きく舵が切られてゆく可能性は十分にあり得るのです。いかに、ネットビジネスが国策とは無縁の成長を遂げ、グローバルなネットワークに支えられているとはいえ、グローバリズムと国策との綱引きの中で、こうした新興企業が選択を迫られる可能性は十分に考えられます。
 

2019年~:企業のグローバリズムと国策を見つめる地球市民へ

 理想をいえば、企業活動はグローバルであればあるほど、国家権力とは一線を画すべきです。ある中国人の友人が、中国には三権分立による権力同士の監視が機能していないと嘆いていたことがあります。彼は付け加えて、三つの権力の他に、マスコミという監視機能も極めて大切だが、中国ではそれは機能不全に等しい状況だと指摘していました。司法、行政、立法の三権に加えて、報道という第四の権力。そしてさらに必要なのが、企業という五番目の機能。この五つのパワーが自立しながら、お互いを監視できてこそ、社会は健全に運営されるのかもしれません。もちろん、この五つのパワーの土台には国民、あるいは地球市民が主権者として存在しなければならないことはいうまでもありません。
 
 日産の事件、ファーウエイの事件、そして100年前の教訓となったアメリカ金融界と議会による世界平和という理想へのサボタージュ。これらに共通したテーマをしっかりと見据えられるのは、究極の権力を維持している有権者であり、企業にとっては消費者である、我々市民であることを忘れないようにしたいものです。
 

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『日本人が誤解される100の言動: 国際交流やビジネスで日本を再生するためのヒント』山久瀬洋二 (著者)、ジェイク・ロナルドソン (訳者)日本人が誤解される100の言動: 国際交流やビジネスで日本を再生するためのヒント』山久瀬洋二 (著者)、ジェイク・ロナルドソン (訳者)

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