タグ別アーカイブ: 中東問題

海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

中東問題の複雑な「本質」が霧の向こうへ

【海外ニュース】

Iraqi Forces Enter Falluja, Encountering Little Fight From ISIS
(NY Times より)

イラク軍がファルージャに侵攻、ISISの抵抗にはほとんど遭わず

【ニュース解説】

アメリカのイラク侵攻がおきるはるか昔のことです。
私の友人シャリフ・マシャーリは大学にはいったばかりでした。彼はイラクの出身で、当時インドに留学していました。
ある日、彼の友人の一人にオベロイホテルの創業者の友人がいたことから、ムンバイのオベロイホテルにあるレストランで友人と夕食会をしていたときのことです。ウエイターもウエイトレスも、オウナーの息子の友人ということで、いたれりつくせりのもてなしでした。

そんな彼のテーブルの向こうに、イラク人の一団がいました。その中の一人がシャリフのところにやってきて、君はイラク人だね。バース党の党員なのかと問いかけます。バース党はサダム・フセインの母体となる党で、シャリフの前に立っていた人物はムハマンド・サイード・アル・サハッフ。当時のイラクの駐インド大使でした。大使である自分を差し置いたホテル側のシャリフへの待遇の良さに、アル・サハッフは明らかに気分を害していたのです。
翌日、シャリフは大使館に呼ばれ、再び大使に面会し、尋問を受け、身分を確認されました。1974年のことでした。
その後、シャリフはアメリカに留学し、そのままカリフォルニアに移住します。留学生への保険のセールスなど、様々なビジネスを手がけ、イラク系アメリカ人として成功します。

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「対日モデル」の失敗が影響するアメリカの中東政策(中東問題その4)

【海外ニュース】

Islamic State stands with al-Qaeda as one of the most dangerous jihadist groups, after its gains in Syria and Iraq.
(BBCニュース)

アルカイダ系の「イスラム国」は、その勢力がシリアとイラクに拡大したのち、最も危険なイスラム原理主義者のグループとして勃興

【ニュース解説】

中東情勢について今まで3回連続して解説をしてきました。
その前提に立って、今イラクとシリアでおきている最も深刻な問題を見詰めてみましょう。様々なメディアがこのことを報道していますので、私は、日本と中東とアメリカという視点に立って、この現象を分析します。

実は、アメリカの世界戦略の根本にあるトラウマは、戦後の対日戦略にその原点があります。
アメリカは、第二次世界大戦終結後、ともかく差し迫る冷戦の脅威に備えるため、日本の再軍備と、アメリカの衛星国家としての国家再建に注力しました。
それは見事に成功し、今アメリカは日本があるがゆえに、極東の安定が保証されていると考えます。
そんな対日政策の第一段階は、旧軍国主義勢力の掃討でした。そして民主国家となった日本を今度は軍事的に自らの勢力下においていったのです。
これが大成功であったために、以後アメリカは混乱する世界に対処するときに、常にこのモデルを意識的にも、無意識にも念頭においてきたのです。

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ガザの紛争が広げるイスラエルへの抗議、そして困惑(中東問題その3)

【海外ニュース】

Man returns Holocaust medal in protest over Israel’s bombing in Gaza
(The Seattle Times より)

ドイツでのホロコーストからユダヤ人を救ったことで受けた勲章を、イスラエルに返還。ガザ地区への空爆への抗議のため。

【ニュース解説】

この記事は、戦争中ユダヤ人の子供を二年間にわたってナチの目を盗み、オランダの村にかくまった Hank Zanoli (91歳) という人物が、後年イスラエルから受勲した勲章を、ガザへの空爆に抗議し、オランダのハーグのイスラエル大使館に返却したことを報じた記事のヘッドラインです。もう一つの「アンネの日記」といっても過言でない救済者の失望による執念の抗議といえましょう。

ガザ空爆は、イスラエルよりの政策をとりがちなアメリカをも困惑させ、中東問題そのものへの対応に対する様々な議論を欧米社会に呼び起こしています。

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ヘブロンの街
海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

人類の築く分断の「壁」がもたらすもの(中東問題その2)

【海外ニュース】

Israeli PM defends conduct of Gaza war
(USA Today より)

イスラエルの首相がガザ侵攻を弁明

【ニュース解説】

エルサレムはイスラム教、キリスト教各派、ユダヤ教が混在する古都。
高台から遠くをみると、新造の万里の長城かと思えるユダヤ系とパレスチナ系の人々を分断する「壁」が見渡せます。そんな旧市街にあるダマスカスゲートという城門に、パレスチナ人のタクシーの運転手が集まる一角があります。
そこで、アラブ系の運転手を捕まえ、ガザと共にパレスチナ人の自治が許されたヨルダン川西岸 West Bank、ジェリコ Jericho からさらに南下してヘブロン Hebron という街に行きました。

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アメリカの焦りと世界の混沌(中東問題その1)

【海外ニュース】

Gaza Fighting Intensifies as Cease-Fire Falls Apart
(New York Timesより)

ガザでの紛争が激化、停戦も成立せず

【ニュース解説】

これから3回にわたって、中東情勢にスポットをあてつつ、現在の世界情勢を分析してみたいと思っています。

第二次世界大戦終結期から現代までの70年間で、アメリカが本当に焦っていた時期が二つあります。
一つは、正に現在。そしてもう一つが第二次世界大戦の末期、丁度広島と長崎に原爆を投下した頃のことです。
こう書くと多くの日本人は意外に思われるかもしれません。しかし、世界情勢と世界史を分析する時、そこにある「共通した背景」をみるならば、それは誇張ではないことがわかってきます。

現在は、世界がアメリカのいうことを聞かなくなっている現実を、アメリカ自身が思い知らされている時代です。アメリカは焦り、しかも焦れば焦るほど、その影響力の低下が露呈されてゆきます。
今回のガザでの紛争をみるとき、最もアメリカの後押しを必要としているイスラエルですら、なんとか中東を安定させたいアメリカの mediation (調停) になかなか耳を貸しません。

では69年前はどうでしょう。アメリカ主導の戦争が勝利目前というときに、どうしてアメリカはそんなに焦っていたのでしょうか。
それは、当時もし日本が降伏せず、徹底抗戦の姿勢をとった場合、日本本土での泥沼の戦いにアメリカが引きずり込まれる可能性があったからです。
しかも、ソ連は、8月9日には日本と開戦し、北から北海道に迫っていました。
アメリカが戦後一番の痛手を被ったベトナム戦争などを思い出すと、対日戦の終結が遅れ、日本での戦争が日本本土でのゲリラとの戦いになる悪夢に、アメリカがどれだけ苛まれていたかは容易に想像できます。

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