タグ別アーカイブ: 人種差別

「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

歴史と異文化、繊細さと鈍感さの狭間とは

上海でのことです。フランス人のビジネスパートナーと豫園 (上海の庭園) を散歩していたときのことです。
一人の白人系の女性が私に話しかけてきました。

「豫園の近くでお昼を食べるのはどこがいいかしら」

「そうね。庭園の外の池の周りに中華レストランがあって、そこの飲茶がおいしいから試してみたら」

そう、私は気軽に答えました。すると彼女いわく、

「外国人でも気軽に入れるのかしら」

「そう思うけど。僕もさっきランチをしたばかりだし」

「え、あなた海外の人?私てっきりガイドかと思った。ごめんなさい」

そう彼女はいうと、そそくさと私の側を離れていきました。
その会話の一部始終を横にいたフランス人の友人は聞いていましたが、全く気にしていない様子。そこで、私は言いました。

「失礼だよね。これって欧米の人がアジア人をみるある種のステレオタイプだよ。偏見というか何というか」

すると、フランス人の友人が答えていわく。

「でもさ。彼女は君を中国人だと勘違いしただけだろ。別に偏見があったわけではないと思うけど」

欧米の人とアジアの人が一緒に観光地を歩いていると、アジア系の人がガイドと間違えられます。そこが中国で日本人と中国人との区別はつきにくいものの、それでもそこには裕福な欧米人観光客が途上国 (今では新興国) のアジアでガイドを雇っているのがごく自然に思えるという、ステレオタイプじゃないのかなと、私は納得できない不満を感じてしまったというわけです。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

ワシントン大行進から50周年、あの名演説は未だ夢か

【海外ニュース】

Marching for King’s dream: ‘The task is not done’
(WSFAモンゴメリーより)

キング牧師の夢への行進「いまだミッションは完結せず」

【ニュース解説】

今年は、アメリカの歴史にとって大きな節目の年です。
1963年8月28日に、ワシントンDC のリンカーン記念館 Lincoln Memorial の前に集まった20万人の群衆に向け、キング牧師 Martin Luther King, Jr. が行った名演説から50年にあたる年なのです。
この50周年記念にあたっては、オバマ大統領もスピーチを行い、キング牧師のスピーチを行った場所には当時と同じように、人々が集まります。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

70年前の亡霊にくすぶる世界

【海外ニュース】

“Kneeling Hitler” placed in Warsaw’s Jewish ghetto.
(The Jerusalem Post: エルサレム・ポストより)

「ひざまずくヒトラー」がワルシャワのユダヤ人ゲットーに展示

【ニュース解説】

ニューヨークで活動するイタリア人のアーティスト、マウリッチオ・カテラン Maurizio Cattelan が、ワルシャワでの展示会に出品した作品の一つ、それが祈りを捧げるヒトラーの像でした。70年前にユダヤ人を隔離したゲットーのあった、14 Prozna Street のあるビルの中庭にそれは置かれていました。

新年早々重たいニュースだと思われるかもしれません。
しかし、このニュース、今後の日本を考える上でも、目をそらさずに見つめてほしいテーマなのです。
アーティストは風刺アートを手がけることで知られている人。従って、彼はこのヒトラー像に、色々な謎や問いかけを意図して、作成したはずです。
第二次世界大戦中、ワルシャワに住んでいた 35万人のユダヤ人が、ドイツ当局によってほとんど殺戮されたことは余りにも有名です。どんな理由があるにせよ、ヒトラーの顔をここに置くことは許されないと、僅かに生き残ったユダヤ人の子孫は怒りをあらわにします。
また、ポーランドは戦争中にドイツに占領され、ワルシャワは戦争末期に壊滅的な破壊に遭います。従って、ポーランド人にとってもヒトラーは許しがたい人物。怒りの声は一般のポーランド人からも沸き上がりました。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

15歳の少年受刑者を拷問したアメリカ軍

【海外ニュース】

Khadr, 26, landed at the Trenton military airbase early Saturday after a flight from Guantanamo Bay. American officials formally transferred Khadr into Canada’s care, bringing to an end U.S. involvement in the decade-long case.(トロント・スターより)

カハードル26歳はグアンタナモベイから飛び立った後、日曜日早朝にトレントン空軍基地に到着。アメリカは正式にカハードルをカナダ側に引き渡し、この10年来のケースの幕引きを行った。

【ニュース解説】

アメリカ、カナダ、さらにはイギリスやフランス、ドイツ、加えてロシアや中国もいれた世界の主要国と日本との違いを一つ挙げるならば、複雑な人種や移民模様の中で国家が成り立ち、それ故に世界情勢と国家の事情とが時には直結し、絡み合っているということです。逆に、こうした世界のリンクの外でものを考えることが、日本の外交や世界への理解の盲点になっています。

この見出しが語ることの背景は複雑です。

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スポーツ選手の人種的発言によるトラブル

【海外ニュース】

Chelsea captain John Terry has been cleared of racially abusing QPR defender Anton Ferdinand – a complicated case that simply comes down to nobody being sure what happened.(BBC)

チェルシーのキャプテン、ジョン・テリーがクイーンズ・パーク・レインジャーズのデフェンダー、アントン・フェルジナンドを人種的発言で侮辱したとされる一件は、一体実際に何が起きたのかはっきりしない混迷を極めた事件として結局有罪とされることなく終了した。

【ニュース解説】

今、オリンピックを前にしたロンドンで話題となっている事件が一段落しました。
それは、名門サッカーチーム、チェルシーのキャプテンをつとめるジョン・テリー John Terry が、クイーンズ・パーク・レインジャーズ Queens Park Rangers に所属する黒人系の選手アントン・フェルジナンドに対して、去年10月23日の試合で人種的な暴言をはいたということで、イギリスサッカー協会からチャンピオンの地位を剥奪された事件です。
その後、警察が事情聴取を行い、ジョン・テリーはその発言をしたという容疑で訴追されました。
しかし、このケース。どこにも確実な証拠はありません。被害者のアントン・フェルジナンドですら、ジョン・テリーが何を言ったか定かでないという始末。証拠として提出されたのは、試合のビデオから読唇術 lip reading によって読み取られた言葉だけだったのです。
結果は、被告人は証拠不十分により無罪。
口の動きから専門家が読み取ったとされるのは “fucking black cunt”。「黒人のゲス野郎」という意味の、確かに下品な表現です。
実際、警察がテリーに事情聴取をはじめ、ビデオが広く放映されると、その口の動きから本当は何を言ったのかと、多くの憶測が全英に広がりました。

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