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インタラクティヴで、プロアクティヴな英語能力の育成を

【海外ニュース】

The education ministry reported last month that high school English-proficiency scores fell far short of its goals. That report will come as no surprise to most people in Japan, but it is additional evidence that the English education system in Japan is still in desperate need of reform.
(Japan Timesより)

文部科学省は、先月高校の英語能力テストの結果が極めて低いレベルであると発表。日本人にとっては聞き飽きたことかもしれないが、これは日本の英語教育システムの抜本的な改革に必要性をさらに裏付けるものに

【ニュース解説】

日本人はどのようにして英語力を向上させればよいのでしょうか。
そして、そのためにはどのような教育やテストシステムが必要なのでしょうか。
この問題を考えるとき、我々は日本で一番よく使用されているテストの一つである TOEIC が抱える課題をみてゆく必要があります。

実は、巷で TOEIC の高得点者が、実際の仕事での英語のコミュニケータとしてはまったく役に立たないという苦情や愚痴がささやかれています。

その理由を考えましょう。
それは、単純に、多くの人が TOEIC のために練習をし、TOEIC で高得点を取るために「傾向と対策」に集中しているからです。
つまり TOEIC の受験がマニアクックなテスト対策の末に行われ、実際のコミュニケーション現場とは乖離した知識で受験している者が多いことが、その原因なのです。

また、最近までは TOEIC では、英語能力を listening と reading のみで評価されていたことも、実際の会話では通用しないという批判を受ける原因であったと思われます。現在は、speaking と writing を別売にしたテストも実行されていますが、それがさらに普及してゆくには時間がかかるかもしれません。

しかし、根本の問題は、テストのスコアでの高得点のみを常に意識する、受験者心理にあるのでしょう。
また、日本独特の大学入試などを目指した受験勉強のテクニックが心に染み込んでいて、そのノウハウがそのまま TOEIC の準備にも利用されていることにも原因があるはずです。

では、本当のコミュニケーション能力を査定するにはどうすればいいのでしょうか。実際の国際ビジネスは、何と言っても「異文化でのやり取り」の連続です。そこには、相手からの思わぬ対応やリアクションに戸惑う場面や、相手の意思をしっかりと確認することができず、誤解してしまうこともあるはずです。こうした状況を克服するためにも、実際の英語のコミュニケーションでは、インタラクティヴなアプローチが強く求められます。

実は、listening 力は、聞き取る力ではないのです。相手から情報を引き出す質問力こそ、本当の listening 力に繋がるのです。
そもそも、すべての単語や表現を網羅することのできる人は存在しません。であれば、わからない時、すかさず相手に尋ね、そこから情報を引き出す能力こそが求められるのです。

ということは、speaking 能力と listening 能力とは、極めて密接に関わっているということになります。
インタラクティヴとは、聞きながら、わからないことをその場でチェックし合い、質問し合いながら、そこで気づいたことを自分の意見として表明し、その表明したことについて、さらにフィードバックを交換するという一連の行為を指しています。
英語でコミュニケーションを進めるには、このインタラクティヴな行為が何よりも養成されなければなりません。そして、そこに会話の背景にある「異文化」への理解や受容があれば、さらに誤解が避けられ、プロダクティブなやり取りができるはずです。

インタラクティヴであるということは、プロアクティヴであることも求められます。プロアクティヴということは、自らのニーズや求めることを躊躇せずに表明する態度を意味します。
日本人の遠慮や謙遜の精神は確かに日本人の美徳ではありますが、そうしたコミュニケーションスタイルが海外との交流では、相手に自らの意思が伝わらず、無用な誤解の原因になることもあるのです。
相手に察してもらうのではなく、自らが進んで情報を提供し、考えを表明する対応能力が求められるのです。

では、こうした英語能力を検定するにはどうすればいいでしょうか。
そもそも手間をかけず、コストも抑えてテストを実施する場合、どうしても一方通行、つまり受験者が一方的に答えを書き、録音する以外には、なかなかより解決方法はありません。
であれば、当然注目されるのは採点基準となります。
例えば、あるテーマについて Do you agree? という設問があったとします。その時、ただ、I agree. とか Disagree と言えたかを評価するのではなく、時には Well, I don’t know because… といって自らのスタンスを、ロジックを持って説明できる能力をちゃんと評価基準に入れることができるテストが必要です。
しかも、その評価については、常に異文化環境での課題を心得た、プロのネイティブスピーカーの判断を参考にする必要があることはいうまでもありません。

もっと言えば、一つの正解だけを延々と求めるテストをやっている限り、コミュニケーション力の最も大切な部分である、無から答えを創造する力は測れないのです。

もちろん、これはテストでの課題のみならず、実際の会話力を養うにはどうしたら良いかというテーマにもつながる、大切な要素といえましょう。

TOEIC で高得点を狙う、方法論に固執した英語学習では、実際の社会で海外の人とやりとりができる人材が育成されないのは、そうした理由によるものなのです。

山久瀬洋二・画

山久瀬洋二「インタラクティヴに世界に羽ばたけ」

「インタラクティヴに世界に羽ばたけ」

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