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エグゼクティブ・コーチング(6): 相手の提案を断るとき、I apologize という表現でお詫びをいれてもよいのでしょうか?

相手の提案を断るとき、I apologize という表現でお詫びをいれてもよいのでしょうか?

最初からいきなりお詫びをする必要はありません。
これはあくまでもビジネス上の決定なので、うまくいかなかったことを残念に思うというスタンスで相手に対応することが肝要です。
こうしたときに、最もよく使われる表現が I regret ではじまる文章です。

I regret to tell you that we will not take the offer you proposed this time.
(残念ながら、今回はこの計画にご一緒できないことをお伝えします)
というような表現です。

この場合の regret は、文字通り残念ながらという意味で、対等なビジネスの交渉の結果、謝絶という結論に至ったことを示しています。断ることは「間違った行為」ではないので、ここで謝る必要はないのです。
むしろ相手は明快に断ってくれたことにより、時間を無駄にしなかったことを感謝してくれるはずです。

もし、こちらのキャンセルが唐突であったり、最終段階での謝絶であったりして、道義的に相手に申し訳ないと思うような場合は、この文章のあとに、
I am sorry for the inconvenience caused by this decision in the last stage of our discussion.
(打ち合わせの最後の段階でこのような結論になったことで、ご迷惑をおかけして申し訳ございません)
などという文章を添えると効果的です。

ただし、ここでの I am sorry for — という表現も、あくまでこのことによって相手が失望することへの同情を意味していて、自らの行為を詫びているわけではないのです。ただ、これを日本語に翻訳すると括弧の中のような表現になってしまうわけです。

もちろん、I am sorry という表現や I regret という表現は、相手の失望や不幸に対しての残念に思ったり、同情したりする気持ちを表明するときだけに使用するのではなく、お詫びをするときに使うことも多々あります。しかし、明らかにこちらのミスでお詫びをするときは、これらの表現のかわりに I apologize といえば、より誤解なく明快に意図が伝わります。
ただ、その場合、ただ漠然と、またはやみくもに謝るのではなく、何に対してお詫びをしているのかをちゃんと限定し、明快にしておくようにしましょう。

すなわち、

I apologize for the inconvenience caused by this miscalculation.
(この計算ミスによってご不便をおかけしたことをお詫びします)

というように、具体的にお詫びすることが大切です。

最後に、I regret などという表現で相手の提案を断ったりするときは、必ず何故謝絶しなければならないかという理由をできるだけ具体的に説明することも大切なマナーです。理由をちゃんと説明することなしに、ただ断りを入れることは、ビジネスの上では大変失礼な行為といえましょう。

日本のビジネス文化では、まず謝ることによって、相手の気持ちを和ませようという心理的作用が働きます。
しかし、英語の世界では不要なお詫びは、こちら側の弱さや後ろめたさの象徴ととられることもあります。これはあくまでも対等なビジネスでの連絡なのです。ビジネスはビジネスとして割り切る英語圏の人々は、断ることによって、個人的に不快感を持つことはありえないのです。

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