その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

エグゼクティブ・コーチング(16): 東海岸に大きな被害をもたらしたハリケーンを、新聞が Frankenstorm (フランケンシュタインとの造語) と表現するのは不謹慎ではないですか?


アメリカで、東海岸に大きな被害をもたらしたハリケーンを、新聞が Frankenstorm フランケンストームと。フランケンシュタインとの造語ですが、多くの人の命と財産を奪う災害に対して、こんな表現を使うのは、ちょっと不謹慎ではないですか?

何が不謹慎か、どんなユーモアが適切かといった基準や判断は、文化によって大きな違いがあります。
日本では、東日本大震災のあと、マスコミなどの多くが被災地の心情を考えて、様々な行事やコマーシャルを自粛しました。あれをみて不思議に思った海外の人は多くいたはずです。震災で厳しい状況にあるときほど、経済は活性化したほうがいいのではとコメントし、日本人の自粛モードが合理性に欠けると批判した海外の友人も多くいました。

アメリカでは、ハリケーンサンディ Hurricane Sandy が巨大化し、アメリカ本土に迫り始めたときから、多くの人がこのフランケンストームという言葉を使用していました。 ニューヨーク州を直撃するのではと警戒態勢にはいったとき、州知事のクォモ氏も頻繁に記者会見し、今回の Frankenstorm には注意が必要だと市民に呼びかけていました。
ハリケーンが、高気圧に行く手を阻まれ、ゆらゆらと複雑な進路をとり、東進する前線の影響などと絡み合って、さらに肥大化したことで、正に怪物ハリケーンに成長したということをユーモラスに描写するために、遺伝子などの組み替えによって出来上がる複合物を指すスラングとしての Franken という言葉を引用し、Frankenstorm という表現が使われたのです。

打つべき手段をしっかりと打っている限り、そしてその対応が市民に伝わっている限り、こうしたカジュアルな表現をする指導者を、アメリカ人は好みます。すなわち、心の余裕をもって、かつ真剣にことにあたる Tough guy、強い精神力をもった奴という風に評価されるのです。厳しい状況であれば、それだけ真剣さとユーモアとを備えたプレセンテーションのノウハウが求められるというわけです。

大統領選挙でも同様です。真剣な論戦の中にあっても、オバマ大統領もロムニー氏も、適切なタイミングでちゃんと有権者を笑わせるジョークを飛ばしています。ただ、そのジョークの内容は、日本人どころか、同じ言語を共有するイギリスの人々との間でも大きく異なっています。
言語のみならず、文化や歴史が異なれば、ジョークも大きく違ってくるのです。日本人のお笑いをそのままアメリカに持っていっても、相手に通用しないか、とんでもない誤解を与えてしまうケースもあることには注意しましょう。

いずれにせよ、新聞などのメディアや、公の場などでのスピーチで、こうした表現を使用することは全く問題ないどころか、むしろ歓迎されるというわけです。「笑い」は心の余裕を示すバロメータであるという常識が、アメリカ人の中にあるのです。TPO さえ合っていれば、こうした対応が英語でできることは、むしろその人の人間性にプラスに働くことになるのです。

ただ、忘れてはならないことは、その TPO。そして、真剣な話をするときは、ちゃんと真剣な表情に戻り、相手への同情や、失望感、怒りなどを表明することも、アメリカの常識。表情と言葉の内容とをぴたりと合わせて表現することは、忘れてはならないマナーなのです。
日本人の曖昧な表情、表現が欧米の人に、誤解を与えている事実も外さないようにしたいものです。

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