海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アメリカの影響力低下を加速させる絶好のチャンスとは


【海外ニュース】

Russia Says No Proof Assad Was Behind Chemical Attack
(The Moscow Times より)

ロシアはアサドが化学兵器を使った証拠はどこにもないと言明

Snowden Still Traveling Undetected in Russia
(The Moscow Times より)

スノーデンはロシアの中で行方が追えず

Spy row leads Brazil leader to postpone US state visit
(France 24 より)

スパイ騒動でブラジルのリーダーはアメリカ訪問を延期

【ニュース解説】

大学の入試問題ではありませんが、これら3つの記事から現在の国際問題をレイアウトせよといわれたら、どう考えるでしょうか。
まず、ロシアは最近シリアをかばい、シリアに対して軍事行動を起こそうとするアメリカを様々な形で牽制しています。
次に、あの元 NSA(アメリカ国家安全保障局)に勤務していた Edoward Snowden 氏は、アメリカの行っていた様々な諜報活動を暴露したあと、ロシアに期間限定の亡命をして、そのまま行方がわかりません。
そして最後に、ブラジルのジルマ・ルセフ首相が、アメリカがブラジルで執拗に諜報活動をしていたことに抗議し、アメリカ訪問を延期したというのです。

さて、紐解いてみましょう。

最近、ロシアはシリア外交で強気にでています。
この記事は、アメリカと共にシリアを攻撃する予定であったフランスの外務大臣ローラン・ファビウスがロシアの外務大臣セルゲイ・ラブロフと面会したときにロシア側が言明したことを報道したものです。
シリアのアサド政権が毒ガスを使用したとする国連の調査結果を巡り、アメリカとフランスがロシアと角を突き合わせていたことは、ご存知の通りです。
しかし、ロシアがシリアの化学兵器を国際機関の監視下におくことで、シリアへの攻撃を取りやめるべきだと提案し、それにシリアが同調したとき、多くの人がそのしたたかの提案でロシアはアサド政権を守り、シリアへの影響力を維持できたのではと思ったはずです。

この報道を一面で伝えるロシアの英字紙、The Moscow Times は同じ紙面で、NSA に勤務していた諜報員 Edward Snowden がロシアに亡命した後、
Edward Snowden has hired private bodyguards for protection as he travels around Russia, although so far nobody has recognized him on the streets, the fugitive U.S. intelligence leaker’s lawyer said.(エドワード・スノーデンは身の安全のために警護を雇いロシアを旅行しているが、今のところ、このアメリカの機密をリークした逃亡者を道でみかけた者は誰もいない)と報道し、暗にロシア当局が彼の所在を秘匿していることを伝えています。
 そして、 Edoward Snowden 氏 は近く彼の家族ともモスクワで面会できるはずだと、彼の弁護士のコメントとして伝えています。

政府の影響が少なからず反映されるロシアの新聞のこの報道は、ロシアはアメリカの膨大な機密情報を持っているぞということを間接的に世界に告げる役割を担っているのでしょうか。

さて、そんな Edoward Snowden 氏による騒動で、ブラジルの大統領はついにアメリカ訪問をキャンセルします。
ベネズエラに代表される、南米のアメリカ離れが云々される中、オバマ大統領の再三の要望をも蹴って、ルセフ首相がアメリカ訪問をやめたことは、オバマ大統領の面子を潰し、かつアメリカの影響力の低下を象徴的に内外に示してしまいました。
喜ぶのは誰でしょう。プーチンか習近平。そしてもちろんアサドや金正恩。

こうしてこの3つの記事は一直線につながります。
Obama has been trying to defuse the row, most recently during talks with Rousseff on the sidelines of this month’s G20 summit, and he spoke with her again on Monday by telephone. (オバマ大統領は、騒動の火消しを試み、つい最近G20でもルセフに非公式に接触したり、今週の月曜日には電話で彼女と話したりしていた)
と France 24は解説。そしてそこまで必死だったオバマの努力も、自らの政府などを諜報されていたルセフ大統領の抗議の意思を変えられなかったのです。

ロシアの手の内に Edoward Snowden 氏をおくことは、ロシアの対米外交、そして世界戦略にも極めて有効な特効薬なのかもしれません。
そして、これがアメリカの世界への影響力を削ぐチャンスとばかりに、シリア政策でも、アメリカを一気に翻弄したのでしょう。

中国などとの緊張関係が故に、アメリカとの同盟関係をさらに強化し、基地を提供し続けなければならない日本も、実はブラジルと同様に諜報の被害にあっていたに違いありません。
アメリカとしては、今日本をしっかりと影響下におくことがいかに大切か、実感しているはずです。ブラジルのように面と向かってアメリカと対立できない日本を。

このことから、集団的自衛権等の問題での日米関係を、世界的視野からみるとき、この3つのニュースが実は日本にも直通する一本の糸でしっかりとリンクされていることが理解できてきます。
以上の視点で憲法や自衛権等の課題を見つめてみるのも、一つの国際感覚といえそうです。

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