海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

極東の新たな火種。香港版天安門事件への導火線


【海外ニュース】

Pro-democracy protesters have been clashing with riot police Hong Kong, defying calls by the authorities to halt their “illegal” action.
(BBCより)

香港で、違法な行動だとする警告を無視した民主化運動のデモ隊が、ついに機動隊と衝突

【ニュース解説】

今、日本の周囲に気になるさざ波が立っていることに、どれだけの人が気付いているでしょうか。
香港で、選挙制度の改革により、行政長官 Chief Executive に事実上中国よりの人物のみが選出されることになる事態に人々が抗議し、それが民主化運動の大きなうねりになろうとしているのです。
ちなみに、ヘッドラインにある riot police とは、いわゆる機動隊のことになります。1997年に香港がイギリスから中国に変換されて以来、従来の資本主義制度と民主制度を維持し、一国二制度を貫いてきた香港でおきた今回のデモが、中国の対香港政策の転換点になるのかどうか、今注目を集めているのです。

学生の抗議行動には市民も合流し、新しい選挙制度の撤回を求め、行政庁での座り込みを続けます。それに対し、機動隊は催涙スプレー pepper spray などを使用し、70名以上を逮捕したということです。抗議行動に参加した人は5万人を超えているのではないかと言われています。

当然のことながら、中国政府はこの騒乱に神経を尖らせます。
香港での事件が、中国内部での民主化運動の新たな火種とならないか。そして国外に向けてはこの騒動が台湾など周辺国との摩擦の原因にならないか。予断を許しません。
中国政府は、早速台湾政府に対し、中国は香港のように一国二制度をもって台湾の統一を求めるもので、台湾の独立を許すことはないという声明を発表します。これは、対中融和政策を維持してきた台湾の馬英九政権にとっては、心地よいものではありません。
馬英九氏は、今まで中国との宥和政策によって、経済交流を促進させようと努力してきました。しかし、共産主義への警戒心の強い世論の動向に常に影響を受け、最近は対中国政策で鮮明な立場をとれずにいます。
そこに発生した香港での騒動は、台湾の世論に直接影響を与えます。果たして、中国が香港での一国二制度を永久に保証できるのか。それとも、折りをみて中国の中に完全に取り込んでしまうのか。
その思惑は、台湾の未来にも直接影響を与えるのです。

一方、国内では、中国政府はウイグル族などの少数民族の反政府運動に悩まされています。そこにおきた香港での反政府運動が、中国国内の民主化運動とどのように呼応するかは、未知数です。

中国は、1997年に香港の主権 sovereignty を獲得して以来、香港を特別行政地区 Special Administrative Region とし、英国法に基づいた自由経済を返還後50年は保証すると内外に公約しています。
とはいえ、中国は本音では、香港をあたかもシンガポールのように、国家が人々を管理しながら、資本主義に基づく自由競争の原理を維持したいと思っているはずです。
そして、その試みが成功すれば、中国の他の地域と香港との格差が消滅し、自動的に一国二制度という変則的な統治形態が解消される環境が整うはずです。このような軟着陸へのマイルストーンを、できるだけ早く示したいと北京の政権は思っているはずです。
しかし、今回の香港市民のみせた北京へのアレルギー反応は、その道筋が容易ではないことを指導部に見せつけることになりました。
そして、このことは、ここで解説したように、台湾との統一に向けた交渉にも影を落としたことになり、習近平政権は対応に苦慮しているはずです。

もちろん、こうした中国とそれを取り巻く地域の不安定要因が、どのような形で対日政策などにも跳ね返ってくるのか、注視ししなければならないことはいうまでもないことです。

Many of those who spent the night on the streets wore plastic raincoats and goggles in case police deployed more pepper spray.(夜を路上で過ごした人々の多くは、警察隊がさらに催涙スプレーを使用することを警戒し、レインコートゴーグルを身につけいる)と BBC はその緊迫した状況を伝えています。

警察隊との衝突が、多くの犠牲者をだした天安門事件を思い起こさせないようにできるのか。中国政府の次の一手に国際社会は今注目しているのです。

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