その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

エグゼクティブ・コーチング(29): 社内の人材開発において、あるいは一般的に、今日本の英語教育に求められるものは何ですか。


今、日本の英語教育が大きく変わろうとしています。
その変革は単なる掛け声ではないようです。
今までの読解と文法偏重の教育からの離脱を本気で進めようとしているメッセージが、毎週のように手元に届いてきます。

確かに、日本人の英語でのコミュニケーション力の低さは目を覆いたくなるほどで、これはそのまま将来の日本の世界レベルでの競争力にも悪い影響を及ぼすのではと懸念されています。
ですから、コミュニケーションのできる英語力を鍛えなければならないのです。では、どのようにすればよいのでしょうか。

最初にいえること。それは、従来の受験教育で求められてきた、答えを一つだけ選ぶ習慣を忘れることです。
たとえば、黄土色の器をみて、この器の色は何でしょうという質問があったとします。黄土色と答えてもよければ、「なんだろう。よくわからないけど、濃い黄色かな。とても落ち着いた色だね」という風に答えてもいいわけです。
むしろ、後者の答えの方がよりコミュニケーション力の高い答えとなるのです。

次に、常に完璧に答えなければならないというトラウマからも解放されるべきです。
文法偏重の教育では、前置詞に in を選ぶべきか、at にするべきか、あるいは過去形で答えるべきか、現在完了形にするべきかなど、常に完璧な文章を作らなければという強迫観念に苛まれます。
より、相手と理解し合えるコミュニケーション力を育成するためには、まず何をおいても会話をし、相手と交流することに主眼をおかなければなりません。 従って、仮にブロークンでも、まず相手にメッセージを送る積極性、そして発信型の発想が必要となるのです。

さらに、グローバルな環境の中で生き抜く人材を育成するためには、英語はあくまでもツールであって、そのツールを使って何を相手と語り、伝え、そして理解し合うかということが英語力そのものよりも大切なのだということを、しっかりと意識したいものです。
企業においては、自社の商品やサービス、あるいは自らの仕事をどれだけ熱く語れるか。そして、個人としては、何に興味を持って、どんな意識で語るのか。そうした英語以前の個性が大切になります。
また、相手の文化への理解、異文化での様々なコミュニケーションスタイルに対して柔軟にそれを吸収できる応用力も試されるでしょう。
教育現場では、そうした能力開発のために、例えば歴史を英語で教えたり、科学の課題について英語で意見を戦わせたりといったカリキュラムが求められるようになるはずです。
もちろん、自らのルーツ、すなわち日本人として日本のことがどれだけ語れるかという能力も、今まで以上に要求されるはずです。

日本の場合、教育活動の全てが大学受験を目指し構成され、親も子供もその一点だけを意識してきました。
従って、教育を変革するには、大学受験のあり方を変えない限り、本格的な変化はないのではといわれてきました。
今回、2020年までに英語教育のあり方を根本から変革しようと、この大学受験での英語能力の査定方法そのものが変わろうとしているのです。
従って、そのことから高校教育、小中学校での英語教育にも直接の影響がでてくるというわけです。

「一つの正解」に慣れ、完璧を求めてきた教師が、この変革に見合った教育を実際にできるのか。それが教育改革での最大のチャレンジなのではないでしょうか。
企業での英語教育においても同様です。
企業ではここに記したポイントに加えて、海外の人と心を開いてディベイトする力、相手を説得できるプレゼン力、そして、自らの感想を建設的に述べるフィードバック力の3つが強く求められます。
企業での英語研修は、この3点に絞り、そこを目指したリスニング力、そしてスピーキング力の育成をしなければなりません。リスニング力とスピーキング力は表裏一体の能力で、これらは相手のコミュニケーション文化に従った能力開発がとくに求められる領域でもあるのです。

企業としての課題は、そうした新たなコミュニケーションのあり方を模索するなかで、よりグローバルなニーズに合った組織変革が平行してできるかどうかも問われてゆくはずです。

教育現場での日本人の実戦型英語能力開発。
それは始動したばかりの課題でもあります。ただ、これに失敗したとき、日本人が直面するリスクは、グローバルな時代にあって甚大です。
そのためにも、ここに提示した教育のあり方を是非真剣に見詰め直して欲しいのです。

山久瀬洋二の「その一言が!乗り越えよう異文化摩擦」・目次へ

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ