「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

アメリカで、話題についていけず、会話から取り残されたらどうしよう!?


「アメリカに出張することが多いんですが、いつも向こうの人と食事をしたりするとき、話ができなくて困るんです」

「会話についていけないってことですか?」

「例えば、向こうの人が数名いて、僕が一人のときなんか、最悪なんです。彼らが自分たちだけの話題に没頭すると、まったく取り残されてしまうんですよ」

「何の話題って尋ねてみればいいじゃないですか」

「そんなことできませんよ。だって、彼らはとても早いスピードで全く知らないことをしゃべるんです。ついていけないですよ」

「そうじゃなくて、相手の話を遮って、ちょっと待って何の話題?教えてよっていえばいいんですよ」

海外で、向こうの人の会話の輪に飛び込めなくて、一人ぽつんと取り残された経験はないでしょうか。大抵の人にはそんな過去があるはずです。
英語を必死に勉強して、やっと向こうで会話に慣れかけた頃、友人もできて食事などに行くんですが、そこで現地の人たちだけがいきなり会話で盛り上がって、自分だけが取り残されるといった経験があるはずです。
よくいわれるように、英語の場合、相手の話についていけないときは、自分から進んで相手の話に割り込んで、Excuse me. Tell me what you are talking about. なんて言って積極的に話に加わらないと、会話のループからはずれてしまいます。

「でも、そんな積極性って日本人にはちょっと難しいですよ」

「確かに。でもそれをしないと永遠にアメリア人の話題を理解できずにいることになりますよ」

「じゃあ、あえてちょっと待ってよと話を遮っていいんですね」

「もちろん。そうしても誰も変には思いませんよ」

「では、そのあとはどうすればいいんですか。相手がごめんごめん、今話していることはねといって、説明してくれたところで、そのあともなかなかついてはいけないかもしれませんね」

「さらに質問を重ねるんです。つまりそれって……ってことなの?というふうに」

会話のイニシアチブをとるのは大変です。でも、あたかがファシリテートするように、相手に質問をして、充分に理解したうえで少しずつ自分の意見を述べてもいいんです。
また、時には日本の話題を持ち出して、それって日本ではこういうふうになっているんだけどねというふうに、日本の情報を提供するのも一案です。
とはいっても、これは場数を踏んでゆかない限りなかなかうまくいかないかもしれません。何度も懲りずに積極的に対応することが何よりも大切です。

「でも、実はもう一つ問題があるんですよ。こちらからどんな話題を切り出したらいいか。会話やスモールトークなどの場で、話す話題が見つからないんですよ」

「日本人は文化的に人と会話する時に、政治や経済、さらに地域のコミュニティなどの話をしませんよね。あたりさわりのない話題に終始することが多いでしょ。でも向こうでは時には政治談議で白熱した議論になることもあるかもしれません」

「じゃあ、どうすればいいんでしょう」

「アメリカに限らず、訪ねる地域の話題や情報を前もってある程度知っておくこと。特に最近の話題はチェックしておくといいですね。さらに、自分の得意な話題をもっておくこと。そして、今世界で注目されているニュースなどを確認して、自分なりの意見をもっておくことなど、いくつかの対策がありますよ。もちろん、日本人として日本の話題をしっかりと解説できるようにしておくことも大切ですね」

「話題を選ぶ時に、気をつけることは何かありますか」

「相手の政治的なスタンスがわからないときは、アメリカの政治についてはっきりと自分の意見をいうよりも、むしろ学ぶ姿勢で情報を提供してもらった方がいいかもしれません。また、人種や性別、同性愛などについての発言は、相手の社会の構造や常識を知らないうちは避けた方が懸命です。思わぬ誤解につながることもあるはずです」

自分の考えや思い、感想を率直に表現することに慣れているアメリカ人の文化と、そうしたことをオブラートに包みながら、やんわりと会話を続ける日本人の文化とでは、なかなか会話の歯車が合わないかもしれません。
しかし、郷に入れば郷に従えです。その歯車を噛み合わせることができるようになるには、あえて積極的に自分の意志を伝え、わからないことを質問してゆく勇気が必要なのです。

グローバルな人間とは、「ホーム」だけでははく、「アウエイ」でもコミュニケーションを楽しめる人のことです。
「アウエイ」に行けば、思わぬ日本へのステレオタイプにびっくりすることもあるかもしれません。その時は、ちゃんと進んで正しい情報を提供することもおすすめです。「アウエイ」でのコミュニケーション文化とはどんなものだろうと、強い好奇心をもって接してゆけば、時間はかかっても、必ず相手と会話を楽しむ鍵を見つけることができるはずです。

山久瀬洋二の「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜・目次へ

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ