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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

テロを憎みつつ、そこに至った縺れた糸を振り返ろう

【海外ニュース】

Spain was hit by its worst terrorist attack in more than a decade on Thursday, when a van driver plowed into dozens of people enjoying a sunny afternoon on one of Barcelona’s most famous thoroughfares, killing at least 13 people and leaving 80 bloodied on the pavement.
(New York Timesより)

スペインはこの10年で最悪のテロに見舞われた。木曜日、バンの運転手がバルセロナの目ぬき通りの午後の日差しを楽しむ人々に突っ込み、歩道は13名以上の死者、80名の負傷者に埋め尽くされた

【ニュース解説】

ヨーロッパでまたテロがおきました。
モロッコ人のイスラム過激派グループがバルセロナで車によって人々を殺害したのです。こうした事件がおきるたびに、なぜそこまで憎しみの連鎖がと多くの人は当惑します。
我々は、テロ行為を弾劾しながら、同時にイスラム教徒の間に過激な思想が広がった背景について、改めてもつれた糸を紐どくことが必要です。

イスラム教徒の多くが西欧社会に抱く不信感の原点はパレスチナ問題です。戦後イスラエルがパレスチナに建国したとき、そこに住んでいたアラブ系の人々が土地を奪われ難民となったことが全てのはじまりでした。
そのときに、イギリスもフランスも、そしてアメリカも、イスラエル寄りの政策をとったことが、アラブ社会を刺激したのです。

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

核拡散の脅威が現実となった北朝鮮問題

【海外ニュース】

North Korea’s success in testing an intercontinental ballistic missile that appears able to reach the United States was made possible by black-market purchases of powerful rocket engines probably from a Ukrainian factory with historical ties to Russia’s missile program.
(New York Timesより)

北朝鮮がアメリカに到達可能な大陸間弾道弾を開発できた背景には、ロシアでの過去のミサイル開発に関連したウクライナの工場からのブラックマーケットを通した技術の流出があった

【ニュース解説】

ニューヨークタイムズのスクープ記事によれば、北朝鮮の核弾頭を搭載した大陸間弾道弾 intercontinental ballistic missile の開発の背景に、旧ソ連からの技術の流出があったのではということです。
多くの人が北朝鮮の核開発を脅威と感じている背景には、北朝鮮の行為が単なる核を抑止力 deterrence として利用しているのではないように思えることがあるようです。

そもそも、核が抑止力とされていたのは冷戦時代のことでした。
アメリカとソ連とは、お互いに核開発を促進し、相手を威嚇しながら外交戦略を遂行していたのです。この核による威嚇が実際の戦争の脅威となったのが、キューバ危機でした。
アメリカの咽喉元のキューバで革命がおこり、1959年に社会主義政権が成立します。そして、1962年にキューバを支援するソ連が核弾頭を搭載したミサイルをキューバに搬入していた事実が明らかになり、アメリカとソ連との関係が一触即発の状態になったのです。
同様の危機は、1950年から 53年にかけての朝鮮戦争のときにもありました。マッカーサーが北朝鮮への核の使用を強く進言していたといわれています。

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英語がアメリカの公用語ではないという事実から学ぶこととは

【海外ニュース】

President Trump embraced a proposal on Wednesday to slash legal immigration to the United States in half within a decade by sharply curtailing the ability of American citizens and legal residents to bring family members into the country.
(New York Times より)

トランプ大統領は、向こう10年の間にアメリカの市民権、あるいは永住権を持った人々が家族を国外から呼び寄せることを厳しく制限し、合法的な移民の数を現在の半分に減らすべきだと考え方を支持すると水曜日に表明した

【ニュース解説】

先週の水曜日、トランプ大統領がアメリカは受け入れる移民の数を半分に削減するべきだと語ったことは、社会に大きな波紋を広げました。
大統領は、移民は英語ができて、経済的にもアメリカ社会に貢献できる人材に絞り込むべきだと語ったのです。

この英語の能力についての議論を考えるとき、そもそも公用語とは何なのかというテーマを見つめなければなりません。
公用語は、それぞれの国や地域で公に使用される言語を意味しています。
この公用語という概念を理解するには、「国語」と「公用語」との違いをしっかりと考えることも必要です。

日本では日本語が公用語で、かつ国語でもあります。ですから、公の文書などには日本語が使用されます。そして、日本語は日本文化、日本の歴史を投影させる日本人とは切っても切り離せない言語です。
しかし、このことと日本では日本語だけが公用語でいいのかという議論とを同じテーブルの上で語ることは危険なのです。日本文化を象徴する言語としての日本語は国語です。しかし、世界の人々が日本で利便性をもって生活するためには、日本語だけが公用語では様々な不便に見舞われるということを知っておきたいのです。

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山久瀬洋二の日常と旅日記

「正当な英語」にこだわる日本人の大きな落とし穴

言語教育を考えるとき、そもそも正当な表現や発音は何なのかということに人々はこだわってしまいます。
13億人以上が使用する中国語を例にとれば、最もスタンダードな中国語は北京語であるとされ、人々は北京語のことを「普通話」と呼んでいます。
しかし、長い中国の歴史をみるならば、北京語が標準語になったのはごく最近のことなのです。現在の北京語は、17世紀に満州族が中国に侵攻して打ち立てた清の時代にできあがったといわれています。元々の中国語に満州族の発音などが混ざり、北京語となったという説が有力なのです。

では、本来の中国語のルーツはというと、現在の華中あたりの中国語ではなかったかといわれています。今では、「普通話」以外の中国語は方言とされていますが、実は方言の方が正当な中国語だったというわけです。
日本語では漢字を使いますが、いうまでもなく、これは中国から輸入したものです。そして漢字の音読みの中に中国語の古い発音が残っていることを知っている人はあまり多くないようです。漢詩は中国語の発声の美しさを意識して作詞されているといいますが、現在の北京語では漢詩が頻繁に造られていた唐の時代の発声を再現することはできないのです。むしろ華中の方言や日本語の音読みの中にそのヒントがあるのです。
中国人の多くが方言と言われている地元の発音や発声にこだわっている理由は、本来正当ではない北京語への反発もあるのだと、中国の友人が語ってくれたことを思い出します。
これは日本語でもいえることかもしれません。正当な日本語は東京で話されている言葉かというと、そうではないはずです。元々京都が日本の首都であったわけですから、関西弁の中にそのルーツがあるのかもしれません。
こうしたことを考えると、正当な言語というのは、時の権力や為政者の意図により時代ごとに変化してきたことがわかります。

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山久瀬洋二の日常と旅日記

ロサンゼルス点描

ロサンゼルスは大都会ですが、いわゆる東京でいう首都圏にあたる、ロサンゼルス中心街とその周辺を含む広大な地域のことを Greater Los Angeles といいます。
さて、このグレーター・ロサンゼルスの中でも、太平洋岸に面したサンタモニカの近く、パシフィック・パリセイド地区はビバリーヒルズやマリブに挟まれた高級住宅地です。その日、私はアメリカの友人の運転するオープンカーに乗って、どこで昼食を楽しもうかと話していました。
彼曰く、リビエラ・カントリークラブがあるけどそこにいかないかと。
「構わないけど、あそこはメンバー制だろ?しかも、このあたりじゃトップクラスのクラブじゃないか。君はあそこのメンバーなのかい。そりゃおどろきだ」
そう問いかけると、
「いや、メンバーじゃないさ。聞くところによると入会金も数十万ドルっていうじゃないか。そんな金はないさ。ただ、あそこに働いているやつを知っているんだ。そいつの知り合いだといって行けば、入れると思うよ。ランチを楽しんでメニューのお金を払いさえすれば」
「そんなにうまくいくんだろうか……」
そう話しているうちに、彼はリビエラ・カントリークラブのゲートに車を滑らせます。

案の定、ゲードを管理している警備員が、メンバーですかと問いかけます。
そこで彼は言います。
「いえね。実は忍び込もうと思ってね」
忍び込む (違法に) は英語で smuggle in といいます。彼はよりによってその表現を使ったのです。
するとガードがすかさず、ニコッと笑って、
「ならば、俺が必要だね So you need to see me.」といいます。
私の友人も笑い出して、「いやね。ここにマイケル(仮名)が働いてるだろ。あいつは俺の知り合いなんだ。彼に連絡して中に入れてくれよ」
とおおらかに話します。
ガードは、ゲートにある電話で、中にマイケルって奴がいると思うが、チェックしてくれといいます。そして確かにマイケルはその日働いていたのです。

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