タグ別アーカイブ: 日本の英語教育

山久瀬洋二の日常と旅日記

「正当な英語」にこだわる日本人の大きな落とし穴

言語教育を考えるとき、そもそも正当な表現や発音は何なのかということに人々はこだわってしまいます。
13億人以上が使用する中国語を例にとれば、最もスタンダードな中国語は北京語であるとされ、人々は北京語のことを「普通話」と呼んでいます。
しかし、長い中国の歴史をみるならば、北京語が標準語になったのはごく最近のことなのです。現在の北京語は、17世紀に満州族が中国に侵攻して打ち立てた清の時代にできあがったといわれています。元々の中国語に満州族の発音などが混ざり、北京語となったという説が有力なのです。

では、本来の中国語のルーツはというと、現在の華中あたりの中国語ではなかったかといわれています。今では、「普通話」以外の中国語は方言とされていますが、実は方言の方が正当な中国語だったというわけです。
日本語では漢字を使いますが、いうまでもなく、これは中国から輸入したものです。そして漢字の音読みの中に中国語の古い発音が残っていることを知っている人はあまり多くないようです。漢詩は中国語の発声の美しさを意識して作詞されているといいますが、現在の北京語では漢詩が頻繁に造られていた唐の時代の発声を再現することはできないのです。むしろ華中の方言や日本語の音読みの中にそのヒントがあるのです。
中国人の多くが方言と言われている地元の発音や発声にこだわっている理由は、本来正当ではない北京語への反発もあるのだと、中国の友人が語ってくれたことを思い出します。
これは日本語でもいえることかもしれません。正当な日本語は東京で話されている言葉かというと、そうではないはずです。元々京都が日本の首都であったわけですから、関西弁の中にそのルーツがあるのかもしれません。
こうしたことを考えると、正当な言語というのは、時の権力や為政者の意図により時代ごとに変化してきたことがわかります。

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山久瀬洋二の日常と旅日記

英語の未来を考えよう。これからも英語は世界の言語として君臨するのか…?

最近、世界の動きが読みにくくなっています。
特にヨーロッパの政情は混沌としています。イギリスの EU からの離脱という激震の後、オランダやフランスの選挙では、右傾化の流れをなんとか食い止めることができましたが、今後EUが今まで通り安定した体制を維持できるかは不透明です。EU はかじ取り役としてのドイツとフランスの連携がさらに求められるようになるはずです。

一方、一時は世界の GDP の半分を生み出していたアメリカの影響力が、21世紀になって陰り始めてきたことも考えなければなりません。アメリカは以前のように世界の警察官としての強いリーダーシップをとれなくなっています。20世紀の混乱を克服した中国の伸長が著しく、アメリカに次ぐ経済力によって存在感を誇示していることもその理由の一つです。そして、ロシアがソ連崩壊後25年を経て、再び強国として台頭してきたことも忘れてはなりません。

こうしたイギリスやアメリカという英語を母国語とする強国の立ち位置の変化をみるとき、今後も英語が世界の言語としての地位を維持できるのだろうかという疑問を抱く人もいるかもしれません。世界の人々の共通言語として、いつまで英語は機能できるのでしょうか。

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山久瀬洋二「改革の鐘は轟くが…」
海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

英語教育が本当に変わるためには!?

【Japan Today より】

English education in Japan isn’t working. It’s just awful. The Japanese teacher of English often teach all the grammar in Japanese, and check that the students can follow the textbook by translating the English into Japanese. Assistant Language Teachers (native speakers) are regulated to human tape recorders, and then set free to roam the class and “help” the students. Of all the hours of English education, how many of those hours were spent actually listening to and speaking English?

日本の英語教育はおかしい。ひどいものだ。日本人の英語教師は日本語で文法を教え、教科書を英語から日本語に翻訳するように指導する。そして外国人教師はアシスタントとして人間テープレコーダーに徹し、教室を歩き回り補佐する。聞いたり話したりすることにどれだけ時間が費やされていることやら

【ニュース解説】

我々は歴史を学ぶ時、世の中が大きく変化したときのことをさも当然のように捉えています。でもその時代の中にいるとき、人間はその先に何がおこるか予測することは困難です。
例えば、第一次世界大戦が終わったとき、その 20年後にもっと規模の大きな世界大戦がおこることを予測できた人は少ないはずです。
それどころか多くの人は、ほんの数ヶ月後に世の中が大きく変化することですら実感できないのです。よく知られた事例でいうなら、明治維新の引き金になった、大政奉還が行われたとき、庶民の殆どは、徳川家が歴史の表舞台から消えてゆくことを予測できずにいたといいます。ですから、武士のほとんどは、自分たちの身分はその後もずっと安定していると思っていたのです。

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「世界の心の交差点で」〜コミュニケーションと誤解の背景〜

世界の教育現場での英語教育を俯瞰して

「インドではね、英語の能力を査定すると、発話や聞き取りはまあまあだけど、読む力、文法力を査定する点数がどうしても低くなるんです。ネパールの専門家も同じことを言っていました」

英語の能力を査定する iTEP、そして英語での発話力を査定する E-CAT というテストについて、世界各国の関係者が集まった国際会議でのインドの英語教育者の発言です。

「なぜって、インド人もネパールの人も元々発話することには抵抗を感じていないからです。英語も耳で覚え、そのまま口にだして会話に加わることで、どんどん上達しますよ。でもね、文法をわきまえたしっかりした英語力となると別なんです。だから、書く力にも課題が残るんです」

サンパウロからきた人が、それを聞いて発言します。

「ブラジルでも同じかもしれません。多くの人が英語を喋り、コミュニケーションはしっかりとするんですが、文章を書かせてみると文法的なミスのみならず、スペルのミスなどの多い人がほとんどです」

この発言に、コロンビアやサウジアラビアなどの教育者も同意します。

「日本では逆ですよ。iTEP で読む、聞く、話す、書く、文法力の5つを査定すると、彼らの多くが文法力では高得点なんですが、話す力はとなるとひどいもんです。聞く力にも課題が残ります。世界各国とは全く逆の結果かもしれませんね。だから我々は発話力育成のために E-CAT を重視したいんです」

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海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

インタラクティヴで、プロアクティヴな英語能力の育成を

【海外ニュース】

The education ministry reported last month that high school English-proficiency scores fell far short of its goals. That report will come as no surprise to most people in Japan, but it is additional evidence that the English education system in Japan is still in desperate need of reform.
(Japan Timesより)

文部科学省は、先月高校の英語能力テストの結果が極めて低いレベルであると発表。日本人にとっては聞き飽きたことかもしれないが、これは日本の英語教育システムの抜本的な改革に必要性をさらに裏付けるものに

【ニュース解説】

日本人はどのようにして英語力を向上させればよいのでしょうか。
そして、そのためにはどのような教育やテストシステムが必要なのでしょうか。
この問題を考えるとき、我々は日本で一番よく使用されているテストの一つである TOEIC が抱える課題をみてゆく必要があります。

実は、巷で TOEIC の高得点者が、実際の仕事での英語のコミュニケータとしてはまったく役に立たないという苦情や愚痴がささやかれています。

その理由を考えましょう。
それは、単純に、多くの人が TOEIC のために練習をし、TOEIC で高得点を取るために「傾向と対策」に集中しているからです。
つまり TOEIC の受験がマニアクックなテスト対策の末に行われ、実際のコミュニケーション現場とは乖離した知識で受験している者が多いことが、その原因なのです。

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