“As Japan and South Korea Feud Intensifies, U.S. Seems Unwilling, or Unable to Help”
チョ・グク氏の法相電撃辞任に際して
文在寅と韓国がたどってきた道筋
彼は、朝鮮戦争で分断された貧しい家庭に生まれます。そして、若い頃は軍事政権下で民主化運動に携わり、投獄された経験もありました。
韓国は、南北に分断された後、民主化運動を抑え込む形で、軍事クーデターを経て、1963年に朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領による軍事政権が発足したのです。世界的に見るならば、当時は冷戦の最中でした。キューバ危機からベトナム戦争へと、冷戦が実際の戦争へと拡大しつつある時代でした。南北に分断された朝鮮半島での危機も、今以上に緊迫していたのです。
そうした状況の中で、朴正熙政権は、外交的にはアメリカや日本との関係を軸に韓国経済の強靭化を推し進めようとします。
そんな朴正熙元大統領の政策に対して、各地で民主化運動が起こり、その最中の1979年に彼は側近に暗殺されてしまいました。
しかしその後、韓国が民主化するまでに8年の年月がかかります。この期間に政府は何度も民主化運動に対して厳しい弾圧を行い、実際に多くの血が流れました。その過程で、韓国国内では政府以上に強い権限を持っているとされた検察に対して、多くの人が不信感を抱くようになったのです。実際に、1987年に起きた民衆の抗議行動は、民主化運動をしていた学生が検察官の取り調べによって死亡したことに端を発していました。その年にやっとのことで、韓国政府は言論の自由を認め、民主的な選挙を約束します。
しかし、そんな盧武鉉元大統領も退陣後、汚職疑惑によって検察の取り調べを受ける前に自殺してしまいます。こうした経緯から、文在寅大統領は、検察制度の改革こそが、韓国の民主化の最終目標だという政治理念を抱いてきたのです。そして、検察権力へ対抗する切り札だったのが、文在寅大統領の側近で、彼の後継者とされていたチョ・グク氏だったのです。
そして、チョ・グク氏が今日になって電撃辞任をした真相はまだこれから明らかになるにしても、その事件と盧武鉉元大統領が追い込まれた一件とに共通する、生々しい韓国での政治闘争があるように思えるのも事実でしょう。
それに対して、朴正熙元大統領の娘として大統領になりながら、権力を私的に乱用したことで弾劾された、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を支持する人々は、容疑をかけられているチョ・グク氏を法務大臣に抜擢する行為自体、大統領の横暴だと批判します。さらに、朴槿恵前大統領が裁判にかけられていることに対しても、現政権の陰謀ではないかと疑念を抱いているのです。今韓国では、チョ・グク氏への処遇を巡って、このように国内の世論が二つに分かれているのです。
チョ・グク問題と日韓関係との関わり
それは、戦後になって日本との国交を正常化させたのが、朴正熙元大統領による軍事政権下であったことと深く関係しています。
経済復興を優先する当時の政権が、過去に日本が韓国を植民地にし、戦前戦中に韓国の人々に加えた様々な人権侵害についての微妙な解釈を先送りにしたままで、日韓基本条約によって日本と国交を正常化させたことが、その後の韓国での民主化運動の中で問い直されたからに他なりません。
民主化運動の弾圧の中で交わされた日本との取り決めそのものが、民意を反映していない政策の象徴となっていったわけです。であればこそ、革新の流れをくむ民主党から大統領になった文在寅氏にとって、この問題は法的にも再検討すべき課題という立場を取り続けているのです。
では、朴槿恵前大統領などが率いてきた、保守の流れをくむセヌリ党はどうかと言えば、これはこれで、民主化によって改めて指摘されるようになった「日本とのねじれた関係」を日本の謝罪という形で収束させることが、民意を得る上では欠かせないまでになってしまったのです。つまり、日韓問題にけじめをつけることが民主党にしても、セヌリ党にしても、政権を維持する上で唯一共通して合意できる外交政策になってしまったのです。
残念なことは、民主化というある意味で未来に向けて社会を変えてゆこうとする動きが、その過程の中で日韓関係の過去の問題と絡んで、もつれてしまったことです。韓国は植民地時代、そして朝鮮戦争での惨劇を経て、軍事政権の時代に経済成長を始めました。民主化運動はその経済成長に遅れをとる形で、人々が豊かになる過程でうねりが大きくなり、そこで日韓関係の課題が公に論議されるようになったのです。そして、その矛盾に対して、日本側の対応も感情的であったことは否めません。
この発想の違いが、韓国の国内事情、さらには日本の反発に拍車をかけていることを、どこかで双方が気づく必要があるのではないでしょうか。
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