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韓国からのメール、そして会社の求人

“Chase the vision, not the money, the money will end up following you.”

「ビジョンを追いかけろ。お金ではない。そんなものはあとでついてくる」
― Tony Hsieh

連休中に韓国から届いた、一通のメール

 連休中のことです。
 一通のメールが届きました。韓国の友人の奥さんからでした。
 彼は、数年前にある会社を退職しました。経営陣との考え方の違いが原因でした。
 残念なことに、退職後に病気で入院。回復した後に、一度ソウルで食事をしました。4年前のことでした。以来、彼からの連絡は途絶えていました。
 彼の奥さんは大学の先生で、地方都市で教鞭をとっていることは知っていました。私は、きっと彼は新しい仕事を見つけ、週末は奥さんとソウルで暮らし、平日は別々の場所で仕事をしているものと思っていました。
 

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 先日、ソウルへ出張したときのことです。
彼が働いていた会社の幹部の一人に、彼の消息を尋ねました。彼は奥さんの働く街に移動しているんじゃないか、とのことでした。それなら、きっとそこで新しい仕事をしているのかなと思っていました。
 
 彼は韓国の有名大学を卒業し、学術系の出版社のベテラン編集者として活躍していました。大学でも、出版社でも、仕事を見つけるのに困ることはないと思っていました。
 そんなとき、彼の奥さんからメールが届いたのです。そしてメールには、彼が何も仕事をせず引きこもってしまっていたこと、そして大学時代の友人などとも連絡を絶っていたことなどが書かれていました。彼にとって私は大切な友人で、何かできないだろうかという悩みを打ち明けてくれました。
 

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 彼は私にとって、韓国のことを理解する大きなヒントを与えてくれた大切な友人です。竹島(韓国では独島)のことで日韓関係がもつれていたとき、こうしたことは国際司法裁判所に委ねるべきでは、と私が話したときのことです。彼は私に、韓国人にとってこれは民族の独立の象徴なのです、と答えてくれました。彼は日韓関係に対して、特別な政治的立場をとっているわけではありません。むしろ彼は、韓国のナショナリズムにはシニカルな立場をとっていました。そんな彼が「民族」という言葉を使って韓国人の心を解説してくれたとき、私はふと思いました。日本人が自らのことを「民族」として意識しているだろうか、と。
 
 この「民族」という言葉は、私にとって重たい言葉でした。日本人が自らを日本民族という表現で海外に向けて語ることは、ほとんどありません。「民族」とは大国の間で翻弄されてきた歴史を持つ、韓国の人ならではの表現だったのです。この彼の一言で、私の韓国への理解が大きく変わったのです。
 

会社の求人面接と人材採用の難しさと

 連休前に、私は多くの応募者と面接をしなければなりませんでした。
 会社の業務の関係で、数名の人材が必要だったのです。すると200名を超える人が応募してきました。彼らの中には40代、50代で高学歴かつ職歴も素晴らしい人が多くいました。あまりにもその経歴が素晴らし過ぎて、今回求める人材には見合わないなと思いながら、そうした人々の希望年収を見たとき、その低さに驚きました。
 今は人材の採用が難しく、希望者が会社を選ぶ時代だと思っていたところ、それは新卒の一部の人に限られたことだということがよくわかりました。
 
 そんなことがあった後だけに、私に韓国のことを教えてくれた友人を見舞う厳しい状況が気になりました。
 韓国は、日本と同様に人口の逆ピラミッド化が進んでいて、そのことによる人口減少にも拍車がかかっています。おそらく引きこもりや格差など、日本同様の社会現象も多くあるはずです。
 とりあえず私は時間が空き次第、韓国へと彼を訪ねることにしました。今、彼の元同僚や学生時代の同級生はそれぞれの道を進み、仕事も順調とのことです。それだけに、彼はそうした人たちと連絡をとる気にもならず、仕事を探す気力も失せて久しいのです。
 私は5月中旬に台湾へ、そして5月末から6月初旬にかけてはアメリカへ出張しなければなりません。おそらく、韓国に行くとしたら6月末になるでしょう。きっと東南アジアか中国への出張の途中で、その地方都市に立ち寄ることになるのではと思います。
 
 私に何ができるでしょう。
 ただ、一つ嬉しかったことは、彼の奥さんが彼の最も信頼する友人として、私に連絡をしてきてくれたことです。彼と会って、社会的道徳に沿ってあきらめるなと正論を語るのは、極めて簡単なことです。しかしもちろん、そんなことをする気は毛頭ありません。私に何ができるかもまだわかりません。ただ、彼が私と同じような仕事をしてきたことを手掛かりに、私にできることはなんでも協力しようと思っています。

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 AI の進化で、これからどんどん必要でなくなる職種が増えてくるといわれています。
 以前は羨望の的であった仕事が、今は斜陽産業となっている事例も数え切れません。これから数年で、大手銀行でも大量の人員削減があるといわれています。
 そんな人たちが、私の会社の求人サイトに殺到し、そこで採用を断られ、さらに別の求人面接へと自分を追い込むうちに、次第にプライドも精神力も磨耗し、仕事への意欲も失われてゆくケースも増えるのではないでしょうか。
 

自分にとってのビジョンを追いかけろ

 そんな時代に生きる上で、一ついえることがあります。それは、キャリアを会社や組織に求めないことです。
 個人ベースで仕事をして生活してゆくアイディアと力を蓄え、求人状況が変化しても柔軟に対応できる個人の力を蓄えることが必要です。自分がやりたいことを見つめ直し、そこから就職することが目的ではなく、自分が何をしたく、何ができるのかという視点から生きてゆく目標を再構築しなければ、学歴があっても高年齢の人の就職はますます困難になってくるように思えます。
 韓国に行って、友人の話を聞きながら、一緒にそんなことを考えられればと思っています。
 冒頭の引用は、会社の経営についての格言です。しかし、それは個人にもいえること。自分にとってのビジョンを追いかけるのです。そうすれば、どのようにしてお金を稼ぎ、生活するかは次第に見えてくるのではないでしょうか。
 

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