海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

ユーロ危機の将来は。そして日本は…


【海外ニュース】

Crisis is not over, EU reports warn. Secret analysis calls for shoring up of finances, Spain reveals plans to cut budget by €27bn. (Financial Times より)

危機はまだ去らず。EU の関係者は警鐘を。さらなる財政強化が必要か。スペインは270億ユーロの予算カットを予定

【ニュース解説】

今、ウィーンに滞在中。こちらにいると、シリア、イラン問題と共に、スペインの経済危機からくる EU の将来への話題が、紙面をにぎわしています。

EU のそもそもの起源は、フランスの一人の実業家ジャン・モネの構想に遡れます。第二次世界大戦後、宿敵だったドイツは壊滅したものの、将来再び脅威になるのではと、多くのフランス人は心配しました。
しかし、アメリカの絶対的な経済力と冷戦構造の中で、ヨーロッパの衰退を防ぐには、フランスとドイツが未来へ向けて手を結ぶべきだとモネは考えます。そこで、彼は、ドイツが単独で戦争を始めないよう、戦争に必要な資源である石炭と鉄鋼の市場を、フランスとドイツが共同しようという独創的なアイディアを提唱。当時のフランス政府がその案を支持。ドイツのみならず周辺国と欧州石炭鉄鋼共同体を造ったことが、現在の EU への道筋となったのです。
この話、例えば中国とアメリカの間に挟まれる日本と韓国の将来の構想を考える上でも、参考になりそうですね。

この歴史的な背景によってか、EU は今でもドイツとフランスとの協調が、その軸となっています。イギリスは独自の通貨ポンドを持ち、他の EU メンバーとは一線を隔てているのも、当初からの加盟国でありながら、イタリアがなかなか指導的な立場にたてないのも、こうした背景と無縁ではありません。
そして、EU は拡大。それと共に市場そのものがフランスやドイツほどに熟成していないギリシャやスペインが、ユーロという単一の通貨を共有した結果が、今回の経済危機の引き金 trigger となっているわけです。

記事では、スペインの経済危機は、軍事政権として知られるフランコ政権以来という大幅な増税と、政府予算のカットによってなんとか回避されそうだと伝えながらも、最近の反政府デモや長い目で見たときの消費力や経済力の回復を考えると、まだまだ予断は許せないと結んでいます。
また、ヨーロッパ危機が一段落したことから、世界中で今年の四半期の株価が上昇しているものの、先が読めないことにはかわりないと、同紙では Strong quarter for global markets leaves fund managers cautious (四半期の世界経済の回復はあっても、ファンドマネージャーにはまだ不安が) という見出しで解説しています。
リーマンショック以来のアメリカ経済の回復も、この動きにプラスに働いていて、現職のオバマ大統領の再選にも繋がる勢いです。しかし、そんなアメリカも、世界への影響力が低下しています。As the economic center of gravity shifts east, the US is struggling to cope with its decline. (経済の引力の中心がアジアへと移行しつつあるときに、アメリカは、その衰退にどう対処するか困惑している) と、同紙が同じ日に特集を組んでいることが、注目されます。

今の時代、ジャン・モネの理想とした社会に比べれば、投機マネーの動きや世界情勢の不安によって、格段に経済の将来の予測が困難になっています。Rather than planning for the next upturn, enterprises need to structure themselves to survive and thrive in constant turbulence. (来る激変に備えるより、企業は常におこりうる変動の中で生き抜き、繁栄するよう戦略をたてるべきだ) と著名な経済学者、フィリップ・コトラーも強調しています。

今、目前の恐怖に踊らされず、世界情勢を落ち着いて分析し、的確な未来への提言をして危機を回避するジャン・モネのような人材が不足しています。
また、混沌とした世の中では、迅速でかつ冷静な判断をするという、矛盾した二つの判断力が必要。特に、今の日本には、この二つともが不足しています。

スペイン政府の予算カットは、部門によっては 30% を越えるものと予測。それによる国民へのサービスの低下に加え、増税も。今、スペイン国内は不満を爆発させた国民がデモや暴動にはしっています。日本は、そんな状況をみながら、どう自分のことを考え、判断してゆけばいいのでしょうか。

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