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マララ・ユサフザイさんのスピーチに接して

【海外ニュース】

Malala Yousafzai, the Pakistani girl who was shot in the head by the Taliban in 2012 for demanding education for girls, gave a speech at the United Nations on her 16th birthday on Friday, where she spoke about the importance of education.
(INBN News より)

マララ・ユサフザイ、2012年に女性が教育を受ける権利を求めたことでタリバンに頭部を銃撃されたあのパキスタンの少女が、16日金曜日に国連でスピーチ。教育の重要性を訴える

【ニュース解説】

このニュースが発表されたのは既に3ヶ月以上前のことです。
しかし、最近再びマララさんの活動が世界の注目を集めています。
Malala Yousafzai, who survived an assassination attempt by the Taliban, has met the Queen at Buckingham Palace.(タリバンに暗殺されかけ、生還したマララ・ユサフザイが、バッキンガム宮殿で女王と面会)
10月18日のBBCはこのように報道し、女王と語るマララさんの様子を紹介。
そして、その前に彼女は、CNN でニュースショウのホスト役を勤めるクリスティアーナ・アマンポールのインタビューを受けたのです。
このインタビューで、差別なき教育の機会を子供に与えてと訴えてきた彼女が、堂々と落ち着いた姿で、暴力に屈せずに闘い続けると語る様子が、再び世界にリリースされると、大きな反響を呼び起こしたのでした。
そこで、彼女は自らを傷つけたタリバンにも、暴力を憎んで個人を憎まない姿勢をみせたことも印象的でした。

ここでマララ・ユサフザイがどのような少女なのか、簡単に振り返ります。
彼女はパキスタン東部、アフガニスタンに近い小さな村に1997年に生まれました。マララさんは、アフガニスタンやパキスタン東部に多く住むパシュトゥーン人で、そこはアフガニスタンが混迷する中で、タリバンの活動拠点ともなった地域でした。
マララさんは、タリバン支配下にあった故郷で、女性が教育を受ける機会を剥奪されている現状を訴え、その地域が解放されたあとパキスタン政府から勇気ある少女として表彰されました。しかし、その結果タリバンから狙われ 2012年の 10月にスクールバスの中で2発の銃弾を頭部に受け、瀕死の状態となったのでした。当時彼女が15歳であったこともあり、そのニュースは世界中で報道されたことは記憶に新しいはずです。

パキスタンの病院から、イギリスに移送され、奇跡的に回復したマララさんは、その後も恵まれない環境に苦しむ子供への教育の必要性を訴え活動を続けます。そしてタリバンは、そんな彼女への殺害予告を、再びだしています。

国連でのスピーチとそれに続く様々なイベントは、こうした背景の元で行われました。そしてノーベル平和賞の候補としても注目されたのです。
実は欧米では彼女がまだ16歳でもあり、こうした社会的なスポットライトの当て方は、本人に苦痛を与えるのではないかという批判もありました。
しかし、CNN での彼女の存在感は、そんな懸念を払拭して余りあるほどのカリスマ性を世界にアピールしたのです。
実は、ホスト役のクリスティアーナ・アマンポールは、幼少期をイランで育ち、その後移民してアメリカのメディア界で成功した人物で、マララさんを暖かい目で見ながらインタビューをする彼女は、心の中に自らの経歴を重ねてみていたのかもしれません。
このイベントは、アメリカの国連大使でジャーナリストでもあるサマンサ・パワーが導入のスピーチを行うというもので、いかにマララさんがテロとの対決を掲げる西側諸国のシンボルとして重要視されているかが伺えます。

そこで、再び私は、彼女の国連でのスピーチを読み直してみました。
国連などの晴れ舞台に招待された人は、まずそこにいる要人へ招待を受けたことへの感謝を述べ、次第に本人をサポートしてくれた身近な人々への感謝などを表明しながら、本題に入ってゆきます。
彼女はそのスピーチの習わしを見事にこなし、16歳という若さとは思えないはっきりとした口調で、知識が暴力を克服すると強く訴え、満場の拍手に祝福されます。
Books and pens. They are our most powerful weapons. One child, one teacher, one pen and one book can change the world. Education is the only solution.
(本とペン。それこそが最強の武器なのです。一人の子供、一人の教師、そして一本のペンと本が、世界を変えるのです。教育こそが、<暴力の克服という課題への>唯一の答えなのです)
日本人は、こうしたはっきりとした表現をくすぐったく思い勝ちです。しかし、彼女のこの明快なスピーチは、人々に確かに強い感動を与えました。

また、彼女がイスラム教徒としてのアイデンティティを強く意識し、同時にマハトマ・ガンジー、キング牧師、そしてネルソン・マンデラなどの考え方を踏襲し、暴力に対する力での報復を否定していることも、人々の心に残ったのでしょう。
彼女が今後、政治に利用されるのではなく、自らのイニシアチブで活動を続けてゆくには、様々な障害があるはずです。それを、私も積極的に見守ってゆきたいと思っています。

<クリスティアーナ・アマンポールさんのインタビュー動画>
<マララ・ユサフザイさんの国連でのスピーチ動画(日本語字幕)>

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