海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

アメリカとメキシコの切れない「縁」


【海外ニュース】

Waves of immigrant minors present crisis for Obama, Congress
(ロイター通信)

未成年移民の波が、オバマ政権、議会に波紋を

【ニュース解説】

今、私はメキシコ中部の古都グアダラハラを訪問しています。
いつも驚かされるのが、一旦メキシコに入国すると、英語がほとんど通じないこと。
例えば、日本でも隣国の言葉である韓国語や中国語はなかなか通じませんが、メキシコの場合はアメリカと陸続き。しかも、歴史的にも現代においても、この二つの国は、国境を接する他の国々の事例と同様に、密接に関わっているのです。
そもそも、アメリカの南西部、西海岸の都市の名前が、ロサンゼルスやサンフランシスコというように、ほとんどメキシコの国語であるスペイン語であることからも、その状況は容易に想像できます。

さて、今回滞在しているグアダラハラは、メキシコの文化を代表する都市。テキーラやメキシコ人にとっての演歌ともいえるマリアッチも、この周辺で産声をあげました。
そんな古都を歩いていると、アメリカという国の存在が遠くに見える錯覚に陥ります。しかし、そんなメキシコとアメリカとの間には、いま不法移民の問題が深刻に横たわっているのです。

テキサス州ではメキシコとの国境にあるリオグランデという川を渡って、豊かなアメリカで一稼ぎしようと、メキシコの人々が国境警備隊の目を盗んでは越境してきます。カリフォルニア州でも、そんな移民の多くが農業労働者や家政婦など、様々な仕事に従事しています。彼らの多くが illegal immigrant (不法滞在者) なのです。
メキシコとの国境に近い高速道路を運転していると、不法に入国してくる人々を拘束し、deport (強制送還) するために、検問所が設けられ、そこを通行する人々に入国審査さながらの質問をしています。こうした地域を旅行する日本人もちゃんとパスポートや永住許可証を所持していないと、とんでもない誤解を受けるリスクがあるのです。

今回紹介するヘッドラインでは、最近そうした不法移民に minor、すなわち未成年者が増えていると指摘しているのです。未成年者であれば、法律に従って子供としての人権を尊重しなければならず、安易に逮捕し強制送還というわけにはいきません。
An estimated 60,000 such children will pour into the United States this year. (6万人の子供が今年だけでアメリカに流入していると思われる) と、そのニュースは指摘しています。彼らを保護するコストだけでも、連邦政府にとって相当な重荷になっているのです。
そして、この予算不足という重荷に堪え兼ねて、拘束した成人の移民までもが、結局そのまま釈放され、テキサス州のバスターミナルには、全米各地に旅立つ不法移民が列をなしていると報道するメディアもあるのです。

アメリカは、移民による新陳代謝で発展してきた国です。人口の高齢化に悩む日本とは対象的に、移民の新しい血によって、常に社会が活性化されてきました。従って、移民局は不法移民を取り締まりながらも、社会的には不法であろうとなかろうと、移民の子供にも就学を許可するなど、様々な権利を付与しているのも事実です。
また、以前は永住権を求める人々を受け入れるための lottery (抽選) を行ったことも何度かありました。実は私自身、その lottery でアメリカの永住権を取得しています。
サンフランシスコに住む友人の娘が通う学校の場合には、メキシコからの移民が増加し、英語を話せない子供が増えていることを受け、なんと児童の教育効果もかねて、授業をスペイン語にしようという試みすらなされているのです。

移民を合法的に受け入れたいアメリカに殺到する、メキシコからの不法移民。これこそ、アメリカとメキシコとの間の、切っても切れない「縁」の深さとなっているのです。

グアダラハラに滞在し、英語が通じず四苦八苦していると、不法移民が流れ出ているメキシコも、懐の深い大きな国であることを実感します。
その深い懐から、人々がアメリカに憧れ旅立つことが、アメリカにとって良いことなのか、それとも深刻な社会問題なのか。
これこそ移民社会アメリカの永遠の課題であるといえましょう。

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