その一言が!乗り越えよう異文化摩擦

エグゼクティブ・コーチング(32): 日本人が世界で英語を使って自らの意思を表明するにはどのような配慮が必要なのですか?


Japanese people consider it a virtue to control their emotion and express themselves in a reserved manner. Even if they are thinking about something seriously and feel it is important, when they say it, they use expression like “I am a little worried about it.” Among Japanese people, what they intend to say is understandable.

日本人は自らの感情や表現を抑制することを美徳を思います。彼らは何か深刻なこと、重要なことを考えているとしても、それを「私はちょっと気になるのですが」などと言うのです。日本人の間では、この表現は別に問題はありません

(「日本人が誤解される100の言動」より)

これは私の著書「日本人が誤解される100の言動」よりの引用です。

今日は、日本人が相手と交渉などをするときに陥りがちな「異文化の罠trap in the intercultural communication について、書いてみます。
もしあなたが何か深刻な問題があり、そのことについて話さなければならないとします。
深刻な問題とは英語では serious problem と訳せます。では、日本人は自分が深刻な問題だと意識していることを相手に伝えるとき、「これは深刻な問題だよ」と言うでしょうか。
多くの場合、日本人は言葉にクッションを持たせ、表現を和らげます。つまり「ちょっと問題だよね」というふうに表明します。
つまり、日本語の環境では、「ちょっと問題」は、往々にして重大な問題を意味しているのです。
さて、これを日本人はそのまま英語にして表明します。
つまり「We have a little bit of problem」というふうに。すると、それを聞いた人は、日本人のコミュニケーション文化による「クッション」を理解していないため、文字通りにその意味をとり、「あいつはことの重大性を理解していないようだ」という風に誤解されることがあるのです。

この誤解のプロセスをさらに悪化させることがあります。
それは、深刻なときは深刻な表情をしてそれを伝えるものだという常識が海外では働くことが多いのですが、日本人は得てして表情と言葉のメッセージとを一致させません。時には、直截な表現を避けるために「曖昧な笑み」を浮かべ、相手にメッセージを伝えてしまいます。
言葉の内容と表情とを一致させ、メッセージを伝えるコミュニケーション文化を持つ国と、メッセージを和らげるために表情は曖昧にして相手にそれを伝える文化との間で誤解が生まれるのです。

「ちょっと問題です」と、曖昧な笑みを浮かべて伝える日本人が、例えばストレートな表現を常とするアメリカ人との間で摩擦をおこすというわけです。

では相手に深刻な問題を伝えるときに、「We have a serious problem」という風に単刀直入に最初から語りかければ、全ては解決するのでしょうか。
もちろん、英語でのコミュニケーションの場合、メッセージは直截であるにこしたことはありません。
しかし、これが相手へのクレームや、同僚や部下へのフィードバックのメッセージである場合、いきなり「深刻な問題」というと、相手はびっくりして構えてしまいます。時には相手が自らの立場を守るために、不愉快な言い争いへと発展することもあるのです。

日本人は、「ちょっと問題です」と言われればそれは「深刻な問題」と意識します。つまり、日本では深刻な問題の表明をいきなり冒頭から行うことが間々あるのです。だからこそ、相手との摩擦を和らげようと、表現には敢えて「クッション」をおくのかもしれません。
特に立場が上の人は、下の人に向かい、「これはちょっと問題だよ」という風にドンと問題を指摘します。
欧米では、上司と部下という上下関係はあるものの、そのコミュニケーションスタイルはフラットです。つまり部下であれ、サプライヤーであれ、自分が批判されたときは、その場で反論することに躊躇がありません。

ですから、相手に問題を指摘するとき、まず相手の努力を認めたり、相手の感想を先に聴取したりといったコミュニケーションのテクニックが必要になるのです。

曖昧でクッションを持ちながらも、欧米流のフラットなコミュニケーションスタイルを知らずにいきなり問題点を指摘する日本人。これはとても複雑な誤解のプロセスへと発展しそうな雲行きです。

ですから、海外でスピーチをしたり、交渉をしたりするときは、単に英語だけではなく、こうしたコミュニケーション文化の背景に配慮した準備が必要になるというわけです。
我々は、ともすれば、英語だけに頼り、英語さえできれば全ては解決できるのにと思いがちです。
しかし、英語を日本人の発想法に従って使ったとき、そこに思わぬ異文化の落とし穴があることを、ここに解説した事例などから、是非知っておいていただきたいのです。

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『日本人が誤解される100の言動』山久瀬洋二日英対訳
日本人が誤解される100の言動
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

国際交流やビジネスで日本を再生するためのヒント。日本人が誤解を受けるメカニズムを徹底的に追求し、最善の解決策を具体的に伝授。

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