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ネットビジネスにヒントを与えたシアーズの破綻とは

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“Sears Holdings Corp filed for Chapter 11 bankruptcy on Monday with a plan to close 142 more stores, throwing into doubt the future of the century-old retailer that once dominated U.S. malls but has withered in the age of internet shopping.”

(シアーズ・ホールディングが月曜日に会社更生法を申請。142以上の店舗を閉鎖。100年以上の歴史の中で、一時アメリカのショッピングモールを席巻した小売店が、インターネットショッピングの隆盛で衰微、先行きに大きな影を落とす。)
(New York Timesより)

アメリカにシアーズ(Sears)というデパートがあります。
一時は、カタログ販売の大手として世界的にも知られた企業です。
そのシアーズが、経営危機に陥り、日本でいえば民事再生にあたる会社更生法(Chapter11)を申請しました。
小売店は、今ネットビジネスの攻勢に晒されています。しかし、この破綻劇は一つの皮肉な物語ではないかと思うのです。
というのも、シアーズのビジネスモデルこそ、ネットビジネスが勃興した頃に多くの人が参考にしたものだったからです。
 
ネットビジネスがモデルにしたのは、シアーズのカタログビジネスでした。
シアーズが創立したのは1886年のこと。当時、アメリカは辺境地方の開拓も終わりつつありました。広大な大陸のあちこちに開拓者が開いた街や村ができあがり、それらを駅馬車やお目見えしたばかりの鉄道がネットワークしていたのです。
そんな辺境の人々は、概ね自給自足の生活をしていました。現在のコンビニにあたるような、英語ではジェネラルストア(General Store)のある街もありました。人々は必要なときは、時間をかけてそんな街まで出かけ、生活必需品を購入していたのです。しかし、辺境では運送コストもかさみ、商品は決して安いものではありませんでした。
 

カタログビジネスと共に隆盛を極めるシアーズ

その状況をチャンスと思ったのが、ミネソタ州で鉄道関係の仕事をしていたリチャード・ウォーレン・シアーズでした。そうして生まれたのが、カタログによる通信販売システムだったのです。
彼は、鉄道会社に勤務していたときに、シカゴからの貨物を目にします。その貨物は、シカゴの卸売業者から小売店に送られてきた商品でした。
中には宝石や腕時計が入っています。当時、卸売業者は小売店に商品を送りつけた上で、仕入値の交渉をする習慣がありました。しかし、その貨物は小売店が引き取りを拒否したままになっていたのです。
 
そこでシアーズは、卸売業者に連絡をとり、荷物に入っていた腕時計を安値で買い取る交渉をします。交渉が成立すると鉄道のネットワークを通して、各駅の同僚に連絡をとり、腕時計を地方の駅を通して安く販売しようとしたのです。
田舎の人々にとって、腕時計は実におしゃれなものでした。しかも、それが安値で手に入ります。さらに、当時標準時をいかに認識するかということが、地方の人々にとっては大きな課題でした。特に、鉄道員であれば尚更です。そうしたニーズもあって、彼の思惑は大当たり。彼は大きな利益を手にします。
鉄道員が副業を同僚とやり、それをチャンスとして成功することなど、今では考えられません。ある意味では、彼は楽しい時代に生きていたことになります。
 
シアーズは、この成功を応用し、地方の人々のために生活必需品を仕入れ、発送することを考えます。そうして成立したのが、シアーズカタログによるメールオーダービジネスだったのです。彼は返品条件つきという、当時としては画期的な方法で、カタログを地方に住む人々に送ります。シアーズカタログは消費者の支持を受け、ありとあらゆる商品がカタログを通して販売されたのです。
なんと、一時は住宅まで販売したといわれています。カタログはますます厚くなり、ビジネスはどんどん成長します。
 
20世紀になって、アメリカにモータリゼーションの波が押し寄せました。
ヘンリー・フォードの発案による、合理的な生産ラインによって安価に生産されたT型フォードは、一部の富裕層の嗜好品だった車を、一般大衆が所有できる商品へと変化させたのです。鉄道や道路が整い、さらに車が大陸のあちこちを走るようになったとき、シアーズはすでに巨大企業として成長していたのです。
シアーズが創業したシアーズ・ローバック社は、本社をシカゴにおき、カタログビジネスに加え、自家用車の駐車場を備えた百貨店経営に乗り出します。しかし、その時すでに創業者シアーズは他界していました。1914年のことでした。
 

ネットビジネスへの転換とアマゾンの出現

それから80年を経た90年代、世界はインターネット時代へと移行しました。
そして、カタログ販売はネット販売に取って代わられます。遠隔地の人々にも商品を、というビジネスモデルが、新しいテクノロジーによって進化したのです。
21世紀になり、アマゾンなどのネット販売の業績はどんどん伸びてゆきます。その進化のスピードは過去にはないものでした。
アマゾンが創業したのは1994年。その前後、シアーズはカタログ販売を縮小し、ネットビジネスに参入します。
 
一方のアマゾンは、元々書籍をネットで販売する事業から進化しました。当時、アメリカには、たくさんの小売書店チェーンがありました。それらは合従連衡を繰り返し、最終的にはボールダーズバーンズ・アンド・ノーブルという2つの巨大チェーンに集約されたのです。残念なことに、ボールダーズは2011年に倒産します。そして残されたバーンズ・アンド・ノーブルは、孤軍奮闘はしているものの、経営は決して思わしくなく、売却の話も出ています。20年前には考えられなかった変化です。
 
一方、アマゾンは書籍以外の商品の販売も行い、業務は拡大しています。
面白いことに、アマゾンは、アメリカではリアル書店も開設しています。豊富なデータベースから読者の求める書籍をうまくディスプレイすることで、話題となっているのです。
 
そして、今回のシアーズの会社更生法適応です。
シアーズがカタログビジネスから完全に撤退したのは、2000年のこと。それから18年経った今、過去のメールオーダービジネスの巨人は、ネットビジネスへも参入したものの、ついに自立を諦めたのでした。
 

シアーズとアマゾン、両者を分けたものとは

時代の変化による販売形態への対応のノウハウ。これはいつの時代でも問われる課題です。しかし、それは簡単ではありません。
アマゾンの小売店への進出と、ネットビジネスへのシフトを試みながらも破綻したシアーズ。この二つを大きく分けたものが何か。データベースやテクノロジーへの対応だけでは解き明かせない、ビジネスの機微の違いが、そこにはありそうです。
 

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