ブログ

もっとも過激な「Chaotics」が世界の変化を加速させる

“We tend to focus on “the usual suspects”―companies that have been rivals for many years and are based in our home market or another developed economy location. Yet strategy experts warn that the most dangerous competition can enter a market from another industry or as a start-up. There is a global version of this phenomenon, which is the emerging market company that was not on anyone’s radar screen, but is growing and could soon become a force around the world. Such companies are potential competitors, but also possible customers, suppliers, or partners.”

(我々は、長年のライバルであり、国内市場や他の先進国を拠点とするなじみのある競合他社に注目しがちだが、戦略の専門家は、異業種から参入する企業、あるいはスタートアップ企業が最も強敵となる可能性があると警告する。これをグローバルな視野で見ると、誰もマークしていなかった新興市場の企業が成長して世界を席巻する可能性が考えられる。このような企業は潜在的競合であるとともに、潜在的な顧客、サプライヤー、パートナーとなる。)
― Ernest Gundling 著 What is the Global Leadership? より

 2021年は、21世紀に起こる新しい方向への大きな転換点になるはずです。
 それには今回の新型コロナウイルスのパンデミックが大きく影響しています。我々は9.11(アメリカ同時多発テロ事件)リーマン・ショック東日本大震災、今回のパンデミックと、ここ20年で大きな外部要因に翻弄されました。しかし、これはすでに Philip Kotler の「Chaotics」を2015年1月5日の記事でも解説した通り、予測されていたことなのです。今、我々は異変が日常、変化が日常の世界にいるのです。
 ただ、それが世界中で一挙に加速していることと、そこにパンデミックによる地球規模の経済的な混乱が要因として加わることが、今回の特徴でしょう。
 

加速するオンライン化

 まず、誰もが認めているように、ネットでのコミュニケーションに、人々はますます傾斜してゆきます。これはすでにメディアも何度も報道していることです。
 今まで世界20カ国で、様々なビジネス分野で活動する25名の人々にインタビューを重ねてきました。その中で、ナイジェリアの医療従事者をのぞいたすべての人に、ビジネスの現場と今後の予測について尋ねてみました。
 すると、実際に24名すべての方が例外なく、ビジネスのオンライン化が加速すると明言しています。当たり前だといえばそうですが、面白いのがその試みと試行錯誤が広い範囲で進んでいることです。
 
 ロシアの教育業界では、すでに遠隔地に至るまでオンライン授業のインフラができているそうです。地域状況や人の熟練度、貧富の格差という課題はあるものの、その整備状況は我々の想像を超えたものでした。
 トルコでは、インタビューを受けた会社経営者の仕事が80%減少したと、深刻さを訴えます。しかし、20%の顧客との関係維持はすべてインターネットで、これから残りの顧客との関係を復活させるためにも、変化への対応は必須だと言います。インフラに課題が残るのはトルコも南米のコロンビアも一緒ですが、コロンビアは政府主導で急速なオンライン化を教育現場に導入するようです。
 
 テレワークの実態も同様です。
 フランスの世界企業の人事部責任者へのインタビューでは、今彼女は郊外の自宅から海外の仕事を管理し、その状況が日常化しようとしています。秘密保持の関係でインタビューの詳細は公開できませんが、世界の複雑な人事ネットワークをいかに把握するか、今様々な試行錯誤が行われていると言います。
 そうした中、オンライン化が遅れていたアメリカ有数の語学学校チェーンが、留学生の帰国でビジネスの閉鎖に追い込まれました。語学教育は人とのコミュニケーションが大切で、実際の面談による授業に頼っていたことが経営危機の原因です。一方、中堅の学校では半年前からオンライン化を推し進め、中国の留学生などとオンラインレッスンを進めていたことが、業務の維持に貢献しました。
 

来たるビジネスの「下克上」時代

 次に知っておきたいことは、ビジネスでの下克上が加速し、プレイヤーが変わることです。
 まずは、21世紀型のグローバル企業を見てみましょう。株価を見ると面白いのは、アマゾンのビジネスモデルです。
 アマゾンは今回のコロナ騒動で、製薬会社と共同して検査薬の製造に乗り出します。彼らはすでにアメリカの大手自動車メーカーと組んで新しい電気自動車を開発し、最も大きな市場であるピックアップトラックの製造に乗り出していることは、以前に紹介した通りです。また、バージニア工科大学と同盟して、様々な先端分野での商品開発にも積極的です。
 
 しかし、察知しなければならないのは、アマゾンのような大手だけではないということです。今までは企業の下請けとして励んでいたような技術を持つ小さなプレイヤーが、こうした新しい波によって、グローバルレベルで下克上を起こすことも多分に予測されます。中国の深圳は世界の下請けサービスの拠点と言われていましたが、今ではその地位は逆転しています。
 
 そこで、最後の課題と変革を考えなければなりません。
 チェコからスイスジュネーヴに移住し、そこでデジタル社会と今後の人類のあり方についての映画を制作している、ジャーナリストにインタビューしました。彼は、人と人とのコミュニケーションの進化についての懸念も表明しています。パンデミックに襲われ、人々がアパートに孤立し、インターネットを使ったやり取りが大幅に増えた一方、閉じ込められた人々の間で離婚率も急増しています。
 
 実は、企業内でも人々が物事の背景を理解し、地域文化の違いを把握したマネジメントをどのように展開してゆくかという視点に立って、様々なコミュニケーションの壁にぶつかり、企業内での人と人との連帯感の維持が課題となっています。今回のパンデミックのように人々が物理的に隔離されていると、このリスクがさらに高くなります。
 ヘッドラインで紹介した著者は、その課題を調査する、カリフォルニアに住む友人です。彼は、こうした時代になればなおさら、人と人との面談による交流や、出張による地域コミュニティへの理解、その背景に基づいた多様なマネジメントスタイルや経営方針の柔軟性を学ぶことが大切であると主張します。
 

組織構造の変化とマネジメント課題

 ただ、次の課題を解説します。
 企業がテレワークやインターネットといった、新たなネットワークで繋がることは、企業内がウェブのように、様々な役割がグローバルレベルで交錯することを意味します。今までの縦型、ピラミッド型の単純な組織構造が維持できにくくなる可能性があるのです。
 つまり、ピラミッド型からマトリックス型の組織、上下関係からネットワークによって支えられる組織へと企業構造が変化し、複雑な組織の中で多様な知識がチームごとに集まってイノベーションが行われるようになるのです。
これは、伝統的な組織構造とマネジメント構造、そしてその組織になじんできた日本人にとっては未知の課題です。しかし、世界の多くの企業はすでにその対応に慣れながら、組織を拡大しています。
 
 下克上に M&A はつきものです。ちょうど戦国時代に織田信長が尾張から美濃を平定し、さらに全国制覇に向かったように、下剋上は他者との合併なしには不可能です。未知のプレイヤーといかにネットワークし、その強みとモチベーションを保ちながら、自らのビジョンと協調させ、リーダーシップを維持するか。この課題が、これからの企業経営には欠かせないのです。
 このテーマは、今後さらに追いかけてみたいと思います。
 

——————–
コロナウイルスに関して、今世界がどう向き合っているかという生の声を届けるために、世界の友人に直接行った電話インタビューをYouTubeにアップしています。
⇒YouTubeのIBC Publishingチャンネル から閲覧できます。
——————–

* * *

『オンラインで英語をはじめて、つづけて、うまくなる』松本晃秀 (著)オンラインで英語をはじめて、つづけて、うまくなる』松本晃秀 (著)
費用が安く、自分の好きなタイミングで受講できると、人気の学習法である「オンライン英会話」ですが、一方で始め方がわからない、続かない、上達が実感できないなど、挫折した経験のある方も大勢います。本書では、そんな学習者に、オンライン英会話をフル活用するためのポイントを紹介します。準備編から始まり、続けるコツ、さらには上達のコツまで、詳細に解説し成功へ導きます。
オンライン英会話に興味がある方なら誰にでも役に立つ1冊です。

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ

PAGE TOP