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アジアからみる「Cultural Synergy」とは

Cultural differences provide opportunities for both synergy and dissynergy. The more the cultural styles of the companies differ, the grater the potential of cultural synergy, and the grater the potential for cultural conflict.”

異文化環境ではシナジー効果とその逆のリスクとが共存する。組織での文化が異なれば、その分相乗効果を生み出すケースも極めて大きくなるものの、一方で文化の違いによる衝突の危険も大きくなるというわけだ。
(Wendy Hall 著 Managing Culturesより)

20世紀終盤ごろから、IT革命の浸透によって世界はみるみる小さくなりました。それと同時にグローバライゼーション globalization という言葉が日常のように使われはじめたことは、記憶に新しいはずです。
では、そもそもグローバル化とはどのようなものなのでしょうか。
多くの人が勘違いしていることは、この globalization の波がIT革命の震源地だったアメリカからおこり、アメリカ型のビジネスの方法、コミュニケーションのノウハウが世界に浸透していったと思っていることです。
 
確かに、シリコンバレーなどではじまった新しい技術革新は世界を変えてゆきました。それが単に技術だけではなく、人々の常識や行動規範そのものにも影響を与えたことは事実でした。
そして、技術革新をより可能にするために、人材への投資や人材育成のノウハウがそうした企業の中で培われ、世界に輸出されたことも確かです。
 
しかし、アメリカ社会は、その当時アジアからの精神文化の影響を大きく受けていたことを忘れてはなりません。70年代後半以降、急激に増加したアジアからの移民が特に西海岸や東海岸の都市部のライフスタイルを大きく変えていったのです。当時のアメリカはベトナム戦争で躓き、その後の都市の荒廃といった社会問題の出口を見出せずにもがいていました。そのことで人々の中に、既存の欧米流価値観への信頼と自信への喪失感が蔓延していたのです。そこに浸透してきたアジアからの文化は彼らにとっては新鮮な驚きでした。特に仏教をはじめとする東洋哲学が一様に説くマテリアリズムへの鋭い批判に、彼らは大きな影響を受けたのです。
その結果、都市部で New Age と呼ばれる、既存の価値から離れ、瞑想や自然への回帰などを求めるライフスタイルが流行します。
これがアメリカにとってのグローバライゼーションのはじまりだったのです。
その世代の多くが高度成長を遂げた日本や、神秘的な宗教が混沌の中に共存するインドなどにわたり、アジアとの架け橋になってゆきました。
また、その世代がその後IT革命の第一世代へと進化していったことも忘れてはなりません。スティーブ・ジョブズなどはそれを代表する人物でした。
そして迎えたIT革命。それを担った人々の多くがアジアからの移民やその二世でした。彼らは、高度な教育を受けた技術者としてアメリカのIT産業を支えたのです。
このように、アメリカはアジアからの移民によって社会が変化しました。そして、アジアからの移民はアメリカの社会の仕組や価値観を吸収しながら、より高度なライフスタイルに挑戦します。それがIT革命の精神的なバックボーン backbone になったのです。アメリカのみでも、アジアのみでも起こりえないグローバライゼーションの発熱効果がこうして産み出され、世界に影響を与えたのです。
 
Synergy という言葉があります。これは、異なる薬を調合し、より効果のある薬品ができあがることを意味した言葉でした。この Synergy 効果を文化の融合の中に見出そうとしたのが、Cultural Synergy という発想です。
シリコンバレーでおきたように、世界中から人々が集まり、異なる発想法を融合させることでより高度な技術やノウハウを産み出そうという動きがその発想の原点だったのです。グローバライゼーションはこの Cultural Synergy への発想を抜きにしては語れないのです。
 
つまり、グローバル化はアメリカ化でも、欧米化でもないのです。70年代以降、それまで長年にわたって続いていた欧米からアジアへ向けた文化の流れが弱くなり、暗黒の植民地時代を克服したアジアからの新たな文化の輸出がはじまりました。その流れが欧米に影響を与え、Cultural Synergy という化学変化を起こしたことが、現在のグローバライゼーションのエネルギー源となったのです。
 
異文化環境で Synergy を生み出すには工夫が必要です。片方の価値観のみでは、それを押し付けられる側に抵抗を生み出します。それでも強引に変革を強要すれば、受け手の組織はいびつに変質します。
日本企業も含む、多くの世界企業が、それを克服できず、Synergy を生み出せずに苦しんでいます。
我々が今さらに考えたいのは、今後アジアの価値をIT社会、AIの社会の中でさらにどのように活用し、還元することで、次世代に向けた Synergy を創造できるのかということなのです。
 

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『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊
*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ

組織とリーダーシップの取り方への意識変革にさらされる日本企業の未来とは

leadership

“The global economy requires a new set of leadership skills-imbued with a global mindset, multi-functional and effective across cultures and nationalities-that were not as critical even a decade ago.”

(世界経済は、地球規模の意識によりそい、文化や国境を越え、あらゆる状況で機能でき効果的に活動できる、10年前ですら求められなかった新たなリーダーシップを必要としている)
Nicholas Brealey社刊行『What is Global Leadership?』より

前回(2018年1月9日号)、コア・コンピタンス(Core Competence)の新たなあり方に日本企業が晒されている状況を、自動車業界を例にとって解説しました。

今回は、さらにこの問題を「系列」という日本企業のピラミッド構造を見つめながら掘り下げたいと思います。
日本の大企業は、長年下請けのピラミッドに支えられてきました。
自動車業界を例にとると 1st tier から 3rd tire さらにはその下に至る下請けの重層構造の上に大手と呼ばれるメイカーが君臨しています。
そして、エンジンの製造者やブレーキの部品製造者などの大型の下請け企業の規模は、ともすれば自動車を販売する会社よりも大きい場合もあるほどです。

これは、単に自動車業界に限ったことではありません。全盛期の家電業界をはじめ、ありとあらゆる製造業がこの構造に支えられてきました。この下請けに支えられる重層構造を系列とよび、世界の人々はその言葉をそのまま “Keiretsu” と呼んできたことはよく知られた事実です。日本企業でのリーダーシップはこの縦社会でいかに舵をとるかというノウハウそのものだったのです。
バブルの頃、この Keiretsu こそが日本企業のパワーであると多くの人は思っていました。ところが、バブルがはじけ、日本企業が苦境にさらされると、海外の人はこの Keiretsu の閉鎖的な構造が、日本の経済力を世界から孤立させているのだと批判しました。そして、その頃から国際企業でのリーダーシップの取り方そのものが変化をはじめました。
日本企業にとってみれば、ある意味で Keiretsu は便利のよいものでもあったのです。長年の付き合いの中で、かなりの仕事が ”阿吽の呼吸” でできたのです。「いつものようにお願いします」といえば、相手は即座に対応でき、「このあたりを去年のモデルより滑らかに」といえば、過去から累積された経験に基づいて、下請けはメイカーが満足する部品を即座に調整してもくれました。
ところが、IT技術の進歩によって、このピラミッド型の構造だけに頼っていては物事が進まなくなりました。ITの業界ではシリコンバレー( Silicon Valley )を中心に多くの企業がM&A( merger and acquisition )を重ね成長しました。そして、製造業の多くはこれら巨大化した新たな企業の技術を取り入れてゆかなければならなくなったのです。
もともと日本のような強力な下請けの絆のなかった海外の企業は、部品の調達や技術の移管をフラットなネットワークの構築によってまかなってきました。自動車業界でいうならば、例えばフォード( Ford Motor )は世界中から部品を調達し、部品の製造者は常に価格や技術の競争を通して、自らを売り込んできました。
一方、日本の企業は海外に進出する場合でも下請けに助力してもらいました。また、海外に進出したときも、常に本社が主導して海外の拠点を自らのピラミッドの中に取り込んでゆきました。日本から常に管理者を送り込み、日本のやり方を現地に移植することが、海外との付き合い方であると考えてきました。
そんな日本企業が、IT技術など先端のテクノロジーを導入するために、M&Aや世界とネットワークして成長した海外の企業と付き合い始めたとき、状況が一転したのです。
点と点とを繋ぎながら、フラットで交錯した組織構造をもって成長した海外の企業と、縦社会のシンプルなピラミッドに頼ってきた日本企業との発想の違いが、様々な摩擦を生み出したのです。フラットで世界に拡散する新たなネットワークに対して、いわゆるプロアクティブ( proactive )で、インタラクティブ( interactive )なリーダーシップを発揮するノウハウを日本企業は育てていなかったのです。
例えば、日本企業が海外に発注した商品が、その企業のM&Aによって、それを生産する部門がいきなり売却されたために、部品調達そのものの機会が消滅することもありました。
開発がいきなりストップしたり、納期が大幅に遅れたりということも日常茶飯事となりました。そして、こうした課題が顕在化したときに、それを解決してくれる人的組織的ネットワークを海外に有することもできないまま、グローバル経済の変動に翻弄されることが日常となったのです。
得てして海外の企業はマトリックス型の組織で運営されます。日本語に訳せば交錯型組織とでもいうのでしょうか。
この組織構造では、レポートラインや製造開発のラインが上に向かって一直線に伸びるのではなく、例えば財務上の決裁は香港で行い、人事はシンガポール、そして開発の責任はその製品ごとに最も優秀な組織が存在する世界各地に点在といったように、組織の指示系統やレポートライン( reporting line )が複雑に交錯しているのです。日本企業は下請けも含めて、こうした企業構造をハンドルできないままに翻弄されるのです。
さらに、日本企業はピラミッド型の重層構造が厚くなればなるほど、カジュアルにネットワークする海外の企業と比較すると決裁(decision making)にも時間がかかり、様々な根回しを経てやっとGOサインがでたときは、海外の企業はそのプロジェクトそのものに対してとっくに興味を失っているということがしょっちゅう起きるのです。
今、日本企業はこうしたグローバル企業のネットワークや、新規ビジネスを生み出すフラットな組織構造への対応を迫られているのです。1st tier の下請けの持つ重層な組織が、こうした情報のメイカーへの伝達の阻害要因になっていることも考えてゆかなければならないのです。
より早い情報の入手と、その情報への対応、そしてそこからいかに迅速に舵をきることのできる柔軟な組織を創造できるか。これを怠るとき、日本企業の将来は暗雲に覆われるのです。

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ビジネスシーンの英語コミュミケーションに悩む、すべての人に!

『エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~』山久瀬洋二エグゼクティブ・コーチング~誤解される日本人~
山久瀬洋二 (著者)
IBCパブリッシング刊
*TOEIC では高スコアを取っていても、実際のビジネスの場では役に立たないという人が多いといわれます。それは TOIEC で高得点を取る技能に走って、最も大切な異文化コミュニケーション力を培っていないからです。異文化コミュニケーションの本質を習得できれば、中学英語と、そこに自らの仕事に関する専門用語を加えるだけで自分の意思を理解してもらえます。本書では、日本人の思考やビジネス文化に基づいて英訳することで生じる誤解などを解説し、文化の異なる相手と交流するスキルを伝授します。

外国人とビジネスをするためのテクニックを学ぶなら

『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊
*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

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未来型のCore Competenceの創造とは

“China e car venture future mobility names brand Byton, eyes U.S.,Europe.”

(中国の未来型の自動車へのカーベンチャーはアメリカとヨーロッパを視野にバイトンというブランド名を)
ロイターより

“Byton has revealed an electric vehicle that it thinks presents a glimpse at the future of how we will drive and interact with cars.”

(バイトンは将来我々がいかに運転とデジタル上のインタラクションとを共有してゆくかというテーマを見据えた電気自動車を披露)
BBCより

Byton が自動車業界に本格参入

中国とヨーロッパ、そしてアメリカの頭脳を集め、自動車産業に新しい台風の目を創造しようという動きが注目されています。ロイター通信、BBC放送などが積極的に報道しています。コンシューマーテクノロジー分野での見本市で知られる CES(Consumer Electronics Show が、現在ラスベガスで開催されています。
そこで注目されたのが、中国の資本により BMW Apple などの技術者が共同して開発した新型の電気自動車 Byton でした。
Byton という名前は、Bytes on Wheels からきています。Byton の母体となる Future Mobility Corp. は中国の電気自動車開発会社で、ここに BMW の技術部門で活躍してきた Carsten Breitfeld 氏が中心となって制作してきたのが Byton という車です。

この車は、我々が日常触れているインターネットの世界を車に導入し、車とインタラクティブな環境との究極の融合を目指した製品で、開発センターは南京とカリフォルニアのサンタクララ、ミュンヘンにあります。そして、技術者の中には、Google やApple、さらには TeslaNissan に関わった人々までが含まれています。
Byton はまずアメリカとヨーロッパの市場で2019年にデビューし、その後販売ネットワークを拡張してゆくことになっています。もちろん中国も重要なターゲットです。

人材ネットワークが Core Competence のあり方を変える

このプレスリリースが物語ること。それは人のネットワークです。
今まで企業はその企業が持つ Core Technology(コアテクノロジー,基幹技術 を基に、その企業技術と文化をいかに大切にしながら海外に進出し、そのテクノロジーを海外に移植してゆくかというテーマに没頭していました。日本の企業はその典型です。ですから、海外に進出するとき、自らのスペックに対するこだわりが極めて強く、海外で採用した社員もそのスペックを学ぶことにプライオリティをおかされてきたのです。これが通常のグローバル企業の Technology transfer(技術移管)のあり方でした。そしてこの Core Technology によって育まれるのが Core Competence (強い競争力)であると考えてきたのです。この企業経営の土台が根本から変化しようとしているのです。
ある意味で日本人が一番苦手としている、海外の知恵とネットワークして、コンセプトを造り、そこに資本を投下して製品を作ってゆくという手法が Byton をはじめとした自動車業界をも席巻する世界各地のベンチャー企業の手法となっているのです。

昔、Silicon Valley(シリコンバレー)と Silicon Alley(シリコンアレー)のコラボという発想がありました。
ハイテク産業都市が集中するシリコンバレーで技術を開発し、もともと出版産業などが多くコンテンツを制作することのできるニューヨークの alley(路地)で技術にコンテンツを注入して製品化するというのが、電子ブックなどの開発の背景にあったのです。

自動車産業の場合、この Silicon Alley にあたるのがコアテクノロジーを有する既存の自動車メーカーと下請けネットワークでした。ここに世界中の未来型知識を導入することが、現在版の Silicon ValleySilicon Alley のコラボなのです。engine(エンジン)と chassisシャシ,車台)の技術にいかに世界の知恵と結合させ、integrate(統合)してゆくかが課題なのです。

日本の製造業の課題とは

そもそも、Byton はなぜ日本のマーケットをターゲットにしていないのでしょうか。おそらく日本は日本の自動車業界が既にネットワークしているため、進出が難しいと思ったからでしょうか。それとも、日本に進出するには日本独特のガラパゴス的な要望に応えてゆく必要があり、その手間とコミュニケーションの難しさを考えたとき、とりあえず日本はスキップしておいたほうが効率的と思ったのかもしれません。こうしたことから推測し、考えなければならない日本の産業に求められる将来像。それは、「世界の人材と自由に交流できるノウハウと人の養成」に他なりません。そして、日本のノウハウの輸出というスタンスから、日本のノウハウと世界の知恵との融合というスタンスに、製造業の戦略をシフトさせることから、新たなCore Competence(強力な競争力)を創造することが必要です。
そのための発想と組織構造を企業が育成してゆくことが求められているのです。

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『海外メディアから読み解く世界情勢』山久瀬洋二日英対訳
海外メディアから読み解く世界情勢
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊

海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ