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日韓の切ることのできない関係を見つめ直して

日韓GSOMIAが締結されたソウルでの署名式の様子 (2016年11月23日、South Korean Defense Ministry via AP, File)

“Under intense pressure from the United States, South Korea reversed itself at the last minutes Friday and extended an intelligence-sharing pact with Japan, a sign that the Seoul government wanted to halt fraying relations with the two countries.”

(アメリカの強い圧力を受け、韓国が金曜日のぎりぎりの段階で日本との機密情報共有についての条約の延長へと方向転換したことは、綻びた二カ国の関係改善への兆候か)
― New York Times より

日本と韓国、双方にとって大切な隣人

 日本と韓国との関係は、どうしてここまで悪化したのでしょうか。
 ぎりぎりのところでGSOMIA破棄は回避されたものの、隣国同士の国民に生まれた不信感を拭うことはできないようにも思えます。
 
 先日、韓国に出張しました。ソウルの仁寺洞(インサドン)という観光地の近くの建物には「独島(竹島)は韓国固有の領土」という看板があり、そこからさほど遠くない広場には、徴用工の被害者の連名による抗議の看板が掲げられていました。
 
 その翌日から、知人の出版社を数件訪ねました。すると、そうした政治的スローガンとは対照的に、私と応対する人は誰もが明るく日本語で交流してくれました。日本語が話せない人とは英語で、様々な商談を行いました。それは、仁寺洞で見た光景とはまったく異なる暖かい歓迎でした。その席でお互いに政治とビジネスとを一緒にすべきでないことも確認できたのです。
 
 この二つの事実は、日本と韓国との状況をそのまま物語っています。
 実は、日本にとって韓国、そして韓国にとって日本は、失うことのできない大切な隣人なのです。正直なところ、その現実を冷静に見ることのできない双方の政治の世界の貧困さに、思わず絶望してしまいます。
 
 実に単純なことです。
 経済的に、日本も韓国も、中国とアメリカという巨大なIT大国に挟まれています。どのようにもがいても、GAFAと呼ばれるアメリカの巨大IT企業、さらには中国のアリババテンセントといった同様の企業の間に置かれ、二つの国は連携をすることでかろうじて自国の経済的利益を守れるのが実情です。
 軍事的にも同様です。日本と韓国とが分裂した瞬間に、どちらもアメリカに対して強いカードを切れなくなるのみならず、中国の拡張政策にも抗えなくなるのです。今回、GSOMIAの破綻を一番気にしていたのは、実はアメリカでした。日韓関係が破綻すれば、アメリカにとって極東への軍事的な傘の骨を失うことになりかねないからです。
 

隣国の捉え方を狭めるナショナリズム

 さて、ここで日本と韓国とがいかに似た状況に置かれているかを、列挙してみましょう。

1) どちらも経済的には先進国でありながら、人口減少による将来への不安を抱えている。
2) どちらも、高齢化社会への傾斜を危惧しながら、基本的に単一民族国家としての意識が強く、移民政策には慣れていないため、将来の労働力欠如、知的生産物の瑕疵への不安を抱えている。
3) どちらも、旧来の学歴社会への歪みを抱えていて、格差社会の拡大に悩んでいる。
4) どちらも、北朝鮮や中国への脅威にさらされ、同時にアメリカの傘下の中で軍事的に自立できずにいる。
5) どちらも、直接国境を通して人々の行き来のない地理的に孤立した国家である。
6) どちらも、資源に乏しく伝統的に貿易立国として成長しなければならない運命にある。
7) どちらも、漢字文化圏に属し、多くの伝統と文化を共有している。
8) どちらも、アメリカと中国という超大国の間の微妙な環境の中で、政治的にも経済的にも生き抜かなければならない運命を背負っている。

 こうした事例を挙げれば、きりがありません。
 そしてこの二つの国は、狭い海峡を挟んだ隣国なのです。
 
 それでいて、日本は過去に戦争責任について交わした取り決めを盾とした原則論に固執し、韓国は民主化運動の後の韓国の事情に合った戦後処理への対応をしない日本を嫌悪します。どちらが良いか悪いかの問題ではなく、その対立が論理的にお互いの政治的経済的な利益に合わないことは明らかです。双方が偏狭なナショナリズムにそれぞれ縛られていることの不利益の方が、どれだけ大きいかをもっと考えるべきなのです。
 
 韓国を訪ねていつも感じること。それは韓国人の対日感情は決して一色ではないという事実です。これは日本も同じかもしれません。
 しかし、日本語を話せる韓国人の方が、韓国語を話せる日本人よりはるかに多いことは、我々は認めなければなりません。さらに、決して流暢とは言えないまでも、英語でコミュニケーションのできる人口も韓国の方がはるかに多いように思われます。
 これは韓国だけではなく、台湾に行ったときも感じる、日本にとっては悲しい事実です。過去に日本がこれらの国々を植民地にしていたから日本語ができて当然と思う人がいるとすれば、それは時代錯誤も甚だしい愚かな感想と言えましょう。
 

韓国がGSOMIA延長を発表した翌日、名古屋で開かれたG20外相会議にて、茂木敏充外相と康京和・韓国外相(©YONHAP NEWS/アフロ)

日韓の未来のために今、求められること

 今、日本も韓国も、共に経済大国からの凋落の危機感にさらされています。
 それは、一歩海外に出てみれば誰でも感じることのできる現実です。そんな将来の不安を解消し、自らの未来の生活を守るために日本と韓国とが連携してゆくことが必要だと気づかないとすれば、それは国の将来に対する無責任な誤認であるといっても過言ではありません。
 
 日本も韓国も、アジアにある様々な格言を共有しています。
 特に大切なことは、お互いにへりくだって相手を見つめ合うという伝統的な美徳です。声を張り上げて相手を中傷する行為は、日本人の本来の伝統や美意識にも反する行為です。もし、百歩譲ってナショナリズムを肯定した場合でも、冷静に考えれば相手をなじる行為は日本人としての美意識そのものを傷つけているのだということに、我々は気づくべきなのです。
 その上で、未来の日韓関係をもう少し合理的な方向から見つめ直してゆくことが必要です。20年、30年先のお互いの生き残りのためにも、目先の感情に流されず、心を開き合う勇気が今、求められているのです。
 

* * *

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国際社会でシニカルに笑われる日韓論争

©時事通信社

“An official of South Korea’s foreign ministry told Reuters it has expressed regret over Kono’s ‘rude’ attitude. Anger over wartime history can stir nationalistic feeling in both countries.”

(韓国外務省の関係者は、ロイターの取材に対して河野外相の無礼な態度に遺憾の意を表明。先の戦争をめぐる怒りが両国のナショナリズムをかきたてる)
― ロイター通信より

とある立食パーティーにて、外交について思考する

 たまたまロサンゼルスで出席したある立食パーティーで、日本語で話しかけられました。「なぜ日本語を」と聞くと、横須賀の海軍基地将校として勤務していて、今は業務で帰国後の休暇中だからだということでした。
 そこで、はあえて「Thank you for defending us. (日本を守ってくれてありがとう)」と冗談っぽく話しかけました。相手の反応に興味があったからです。すると彼は、「Oh. It is a partnership. Sure it is. (我々はパートナーだよ。もちろん)」とニコリとして答えてくれました。
 
 Partnerという言葉は、同等の立場で平等の原則に従って一緒に仕事をしている、という前提に基づく発言です。彼はアナポリス(アメリカの海軍士官学校)を卒業した海軍の幹部の一人です。であれば、当然こうした質問にどう答えるかを心得ているわけです。私の質問が、トランプ大統領が「日本はアメリカを守ってくれない」と発言したことを前提とした皮肉であることを彼が理解していたかどうかはわかりませんが、この返答は極めて外交的で軽妙です。相手を尊重しながらも建前を話していることをほのめかした発言です。
 
 そして、日韓関係の話題に移りました。
「どうしてどちらの国も意地を張っているんでしょうね。極東の状況を知る多くの関係者は少々戸惑っていますよ。あなたはどう思いますか」
と質問を受けます。
「70年以上にわたって戦前の問題を引きずって、いまだに解決できないのは、双方に問題があると思いますよ。例え日本がすでに話し合いは済んでいるはずだと主張しようが、韓国がそんなことはないと反論しようが、事実として70年間何も進展しないこと自体問題ですね。おそらくお互いの外交力の欠如でしょう」
と私は答えます。
「いえね。アメリカはアメリカンインディアンへの過去の厳しい仕打ちなど、国内ですら様々な民族問題を抱えていますしね。その補償なんてこともあるんですよ。しかも、ベトナム戦争ときたら、アメリカがベトナムから何を言われても仕方がない部分もあるでしょう。でも、全てに言えることは、未来に向けて動かないことには、過去にこだわっていてもどうしようもないってことです。もっとビジネスライクにいかないものですかね」
横にいた、私の知人がそう言って話に加わります。
 それに対して私も「全く同感。これはどちらの政府にも問題を解決する能力がなく、その言い訳として国民を煽っているとしか言えないように思えますよ」とコメントしました。
 

©Nikkei Inc.

外相の「無礼」パフォーマンスに見る日本外交の落とし穴

 そんなとき、河野外務大臣が駐日韓国大使の発言を「ちょっと待ってください」と強く遮ったことをふと思い出したのです。これは韓国のナム駐日大使が、徴用工の問題で日本と韓国の企業が共同で賠償しようという韓国の提案を日本が拒絶したにも関わらず、それに再び言及したときのことでした。
 「日本の立場は伝えてあるのに、それを知らないふりをして再び持ち出すのは無礼でしょう」と外相が言及したことは、マスコミも大きく報道しています。
 
 そして、日本の世論のほとんども、煮え切らない問題に日本側がきっぱりと、かつ強く言明したことに喝采を送っているかのような論調が目立ちました。
 河野外相は参議院選挙の前に「怒れる日本」を強調したかったのでしょう。しかし、海外のマスコミの反応は極めてシニカルでした。海外の識者の多くはどちら側にも味方せず、少々あきれた反応をしています。それは今回のように、海外から日本を見ているとよくわかるのです。
 
 声を大きくして、感情的に相手に語ることと、しっかりと自らの意思や意見を伝えることとは、そもそも違います。外交のような知的なやりとりが要求される場であれば、なおさらです。日本が不満に思っていることをきっぱりと伝えることは構いません。しかし、冷静に理論立てて明快に伝えればいいものを、普段は曖昧で総花的で、行き詰まると感情的という物事の運び方は稚拙です。
 
 これは日本を含め、アジアの人々がよく陥る落とし穴なのです。
 はっきりとものを言う時に声が大きくなっても構いません。英語の場合であれば、相手が話しているときにそれを遮って、ちょっとコメントさせてくださいと言っても構いません。しかし、そのとき実は、彼らは冷静に自らのロジックを組み立てて、知的に話そうと努めるのです。決して感情的なものの言い方をしているのではないのです。それを、日本人も含め多くの人が勘違いして、強く感情的に話せばよいと思い、そうできた人にすばらしいと喝采を送るのです。これが、大きな誤解につながります。
 河野外相の発言は、日本人の外交力のなさを露呈しています。アメリカ人などと仕事をしたことがある人は、よくアメリカ人同士が意見を闘わせているとき、あたかも喧嘩をしているかのように見えると感想を述べます。しかし、それは喧嘩ではなく、意見をテーブルの上に乗せて叩き合っているのです。感情的なのではなく熱心なだけなのです。だからこそ、後で食事などをするときは、さっきの議論はなかったかのように和やかにしています。
 
 特に、アジアでは欧米と異なり、目上の人への配慮も必要です。ナム駐日大使が年長者であれば、そうした最低限の礼を尽くすことで、逆に日本のしっかりとした対応力が評価されるはずです。そうした意味では、英語ではない日本語と韓国語の会話の場で、相手の話を遮ることも無礼かもしれません。「もともと韓国の方が」と言う人もいるでしょう。その議論には今回は敢えて立ち入りません。仮にそういう人の立場を支持し、もし日本が毅然としたいのであれば、別の方法できっぱりと物事を言わない限り、世界注視の外交舞台ではお笑い種となり、結局どっちもどっちだという印象を与えてしまいます。おそらくあの場面がテレビ中継されたのは、日本の世論を意識してのことでしょう。日本という内側の世論だけを意識した行為は、国益を放棄した売名行為といわれても仕方ありません。それこそが世論を迎合させようというポピュリズムなのです。
 

©Sankei Shimbun

日韓対立の解決に向けて合理的な未来志向となれるか

 「Well, what can we do? I simply hope you guys can solve this awkward puzzle without wasting time. (我々には何もできません。日韓双方がこの気まずい課題を、時間の浪費なく解決できるといいのですがね)」とそのアメリカ将校はにこやかに語り、その後少々ジョークを交わしたあと、お互いに次の相手との話し合いに移りました。
 合理的な未来志向。アメリカ人は得意でも、日本人や韓国人はこうした発想に立つことは極めて苦手なことなのかもしれません。困ったことに、似た者同士が争うと自体がより深刻になるわけです。グローバルなレベルで課題が山積する現代にあって、二つの経済大国のこうした実りのない対立を何年も続けていること自体、大きな損失だと多くの人が思わないとしたら、それこそ極めて危険なことと言えるのではないでしょうか。
 

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『日本人が誤解される100の言動: 国際交流やビジネスで日本を再生するためのヒント』山久瀬洋二 (著者)、ジェイク・ロナルドソン (訳者)日本人が誤解される100の言動: 国際交流やビジネスで日本を再生するためのヒント』山久瀬洋二 (著者)、ジェイク・ロナルドソン (訳者)

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