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テロの悲劇、なぜスリランカかと問われれば

Eranga Jayawardena / AP

“Sri Lanka attack death toll rises to 290.”

(スリランカが標的となり、死者は290名に至る)
― CNNより

平和な日常を突如脅かすテロ行為

 先日、ソウルで知人と夕食を共にしました。そのとき、夜一人で散歩ができ、ホテルに金属探知機も置かれていない、日本や韓国の安全について話し合うことがありました。
 そもそも韓国は、長年にわたって北朝鮮からの攻撃の脅威に晒されてきたはずです。
 しかし、彼を含め、多くの韓国人は北朝鮮の脅威について、別に差し迫ったことではないと思っています。
「韓国も日本と同じように、平和の中で人々の心が麻痺しているのですよ。朝鮮戦争が終結して以来、今まで何度もいろいろなことが起き、そして何度も統一について話が出ました。でも、その度に結局何も変化なく、現在に至っています。北朝鮮のことは、あまり日常的になりすぎて、誰もが慣れっこになっているのですよ」
その人はそう言います。
 実は、以前インドで知人にパキスタンのことについて尋ねたときも、同様の答えが返ってきたことを覚えています。
「これは日々の生活の一部のようなものなんですよ」
そのインド人は、このように話していました。
 
 そのインド人と出会って間もなく、パキスタンから侵入してきたテログループが、ムンバイの駅やホテルで破壊と殺戮を繰り返しました
 2008年11月のことでした。当時、海上からムンバイの港に秘密裏に上陸したテログループが、駅やホテルで爆破、発砲を繰り返し、3日間で170名以上の犠牲者が出たのです。
 そして今回、インドの隣国スリランカ同じような規模のテロ事件が起こったのです。詳細はまだ見えてきませんが、それが組織的な犯行であったことは間違いのない事実です。
 
 なぜスリランカのような仏教国が、という疑問も湧くでしょう。CNNの記者がこの質問を専門家に投げかけたとき、なぜニュージーランドのような平和な国で、なぜノルウェーのような静かな国でと、過去にも同じ質問を受けていると答えていたことが印象に残ります。
 テロ行為はあえてそうした場所を選ぶことで、人々に脅威を与えるのかもしれません。
 

 韓国の場合、北朝鮮からの侵入者による戦闘行為はしばらく起こっていません。
 とはいえ、2010年11月には北朝鮮に近いヨンピョン島が北朝鮮から砲撃を受け、死傷者が出たこともありました。また、テロ支援国家とされた北朝鮮から、武器や麻薬がテロ組織に輸出されないという保証はどこにもありません。
 
「しかし、北朝鮮が核弾頭を持っていることの本当の理由は、日本やアメリカに対してではないのです」
韓国の知人はそう解説します。
「北朝鮮は、中国の影響力からの離脱を巡ってもがいているのです。韓国を含め、朝鮮半島は日本が植民地にしていた時間より遥かに長い時代を通して、中国から強い影響を受けてきました。朝鮮戦争の結果、南北に分断された後は、特に北朝鮮は中国の支援なしには存在し得なかったのです」
 
 実際、北朝鮮の存亡の鍵を握っているのが中国である、という彼の指摘は当たっています。であればこそ、最終兵器である核兵器を維持することは、北朝鮮が中国に無言の脅威を与えることになり、中国も北朝鮮を懐柔せざるを得なくなるというわけです。
 さらに、北朝鮮は保険をかける意味で、ロシアとの交流を促進します。アメリカとしては、そんな北朝鮮をアメリカに振り向かせるために、スタンドプレーで臨もうと首脳会談を2度も行ったものの、大きな成果は得られませんでした。
 

複雑な国際情勢がもたらすテロの応酬

 テロは大国の思惑に蹂躙された民族や宗教の中で育成されます。
 中国が支配を強めるチベット族ウイグル族。日本の支配から独立後、アメリカや中国、ロシアの思惑がぶつかる朝鮮半島。
 そして、イギリスによる植民地化を経て、アメリカの利権もからみ、多くの難民を生み出した中東。そんな中東と同じ宗教を信奉するパキスタンと、宗教を巡って激しく対立するインド。
 こうした複雑な国際関係によって犠牲となった人々の間に積もる怒りが、テロの温床となるわけです。
 
 そして彼らの怒りは、そもそもこのような混乱を生み出した列強や、彼らの思惑を支持する豊かな国に向けられます。
 同時に、鬱屈した怒りに晒された人々は行き場を失い、難民や移民として豊かな国へと流れ込みます。
 その意識の対立が、今度は豊かな国の中に、中東などからの移民の排除を求める新たなテロの温床を作り出すのです。
 
 その結果、一見平和でテロとは無関係な国家や地域が惨事に見舞われます。
 ノルウェーやニュージーランドで反ムスリムを標榜するテロ行為が起こり、その反動がスリランカに飛び火します。
 外国人の多く泊まるホテルやキリスト教の教会が、ちょうどニュージーランドで起こったイスラム教徒に対するテロ行為への報復のように襲われたのです。
 
 豊かで一見平和な国。そう書いたとき、ふと気付いた人もいるかもしれません。その典型とも言える国が、日本です。韓国の人々ですら慣れっこになっている平和に最も浸っている日本。
 日本人に知ってほしいのは、日本だけは例外だと思うことが自惚れに過ぎないという事実なのです。

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『英語で聞く 世界を変えた女性のことば』ニーナ・ウェグナー(著)英語で聞く 世界を変えた女性のことば』ニーナ・ウェグナー(著)
「世界を変えたい」と本気で願い、人々の心を、そして世界を動かした女性たちのスピーチを集めました。彼女たちの熱い願いを耳で聞き、目で読み、英語と歴史背景を学べる1冊です。タリバンに襲撃されても、女性が教育を受けることの大切さを訴え続け、2014年ノーベル平和賞を受賞した若き乙女マララ・ユスフザイを筆頭に、アウンサンスーチー、マザー・テレサ、緒方貞子、ヒラリー・クリントン、マーガレット・サッチャーなど、名だたる女性たちのスピーチを、雰囲気そのままに収録。

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台湾を知れば、戦後の隣国の複雑な国際環境がみえてくる

“Over the last few years China has made a series of ambitious military reforms and acquired new technology as it aims to improve its ability to fight regional conflicts over places like Taiwan.”

(ここ数年間、中国の本格的な軍事、軍事技術改革によって、台湾など周辺地域での戦闘能力が改善されている)
― CNNより

台湾に感じる日本への関心と複雑な状況

 台湾に出張しました。
 台湾では、出版関係の人々と様々な書籍の企画について話し合いました。
 彼らが一様にいうには、台湾の人は日本への興味が強く、一般的な日本紹介の書籍はすでに出尽くしているということでした。彼らが本当に求めているのは、よりニッチで深い日本の事柄なのです。
 
 その上で、ある編集者が私に日本人の台湾への意識の低さを嘆いていました。台湾へ観光に来る人は多いものの、台湾の置かれている本当の状況を理解しようと思う日本人は極めて少ないというのです。
 
 台北の中心部に、林森・康楽公園という市民の憩いの場があります。ここには日本の鳥居が二つ立っています。これは、戦前に日本が台湾を統治していた時代の第7代総督・明石元二郎とその秘書官を葬ったときに建立されたものといわれています。そこには、この鳥居が歴史の記念碑として保存されている旨の案内板が置かれています。案内板には、日本の統治時代への批判は一切触れていません。
 
 台湾の人々のこうした日本への意識に触れるたびに思わされることが、この国の置かれている複雑な状況です。
 韓国と同様、台湾は戦前日本が植民地にしていました。その後、中国での国共内戦の結果、国民党政府が台湾に逃げ込み、中華民国の本拠地となったことは、歴史を勉強したことのある人であればお分かりかと思います。
 

日本人の知らない台湾の事情と独立の精神

 しかし、それ以上台湾のことを詳しく知る人は、日本には少ないようです。
 もともと台湾には、現地に昔から住んでいた人々がいました。こうした人々を台湾では本省人といいます。
 そもそも台湾は中国の東にある自立した島でした。大航海時代にはオランダやスペインが拠点を置いたこともありました。
 清朝になって、中国本土の主権が及ぶようになったものの、実質上組織的な統治が進められたのは、日本が日清戦争の後に台湾を植民地にしてからのことでした。
 そして、日本が戦争に負けたあと、台湾を引き継いだ国民党が、中国本土からやってきた新たな占領軍となったのです。
 
 国民党政権は、台湾在住の人々を統治するにあたり強権を発動しますが、国民党内部の腐敗や横暴な統治に人々は反発し、大規模な暴動も起こります。国民党が本格的に統治を始める直前の1947年には有名な二・二八事件という暴動が起こり、国民党政府が民衆に発砲、反政府活動をした者のみならず、数万人の本省人や残留日本人が殺害されたといわれています。
 
 多くの本省人にとって、国民党は日本に代わって台湾に入ってきた侵略者だったわけです。中国本土が共産化され、台湾が国民党政権の下に中華民国として存続した後も、外省人と呼ばれた中国本土からやってきた国民党関係者と本省人との対立は続きます。その結果、中華民国政府は政権基盤を強めるために、長期間国民党による独裁政権を維持していました。その結果、多くの血が流れました。その詳細はいまだに闇の中。日本でもほとんど知られていないのです。
 その後、本格的な民主化運動が始まり、総統が選挙で選ばれたのは1996年、李登輝政権のときでした。それは、反共の砦として、冷戦の中で1987年まで民主化運動を封じ込めていた韓国と、極めて似た経緯であったといえましょう。
 
 ここで知っておきたいのは、台湾が自らの独立を保とうと主張するとき、それは中華人民共和国に対して独立を維持しようというのではなく、台湾が台湾として、外省人が打ち立てた中華民国から独立しようという主張であることです。
 台湾では、中華民国ではなく台湾としてのアイデンティティを維持し、その上で中華人民共和国が主張する一つの中国という発想からもしっかりと距離を置き、自立しようという世論が強いのです。
 
 しかし一方で、経済大国となった中国なしには、台湾経済は成り立たないといわれています。それだけに、台湾の人はやっと獲得した民主化された台湾が、中国に飲み込まれることには強い警戒感があるのです。
 
 台湾の人の多くは、日本から独立し、中華民国からも独立し、かつ中華人民共和国からも侵略されずに、台湾として独立したいのです。しかし冷戦以来、中国は台湾を宿敵の国民党の統治する国家として見てきました。そして、台湾は中国の一部であると主張します。そのために、中国への配慮から国際政治の中では、台湾を国家として承認する国はほとんどなくなりました。ここに、台湾の本省人のやりきれない思いがあるのです。
 
 人口2300万人の台湾こと中華民国が、いかに本当の台湾となり、強大な中国(中華人民共和国)の脅威からも自立できるか。この政策をめぐり、台湾では選挙のたびごとに意見が激しく対立します。
 

隣国の歴史を理解し、対日感情と向き合う

 そして、沖縄のすぐ西にある台湾は、日本にとっても極めて重要な国であることも、我々はもっと理解する必要があるのです。

「台湾人に、日本の植民地時代への反発がないかといえば嘘でしょう。しかし、その後の国民党に支配された台湾の悲劇が、それ以前の過去を吹き消しているのです。今、台湾は日本との協力と連帯を強く求めているのです」

 ある出版関係者はそう語ります。確かに書店に行けば、日本語のコーナーも英語と同じほどの大きさで、様々な日本語学習書が並んでいます。

 
 韓国は長年、韓国人の国家でした。ですから、日本が植民地にしたことへの恨みが深いことは否めません。それと比較して台湾は、そもそも日本が統治した後、中国が台湾に進出し、現地の意向をよそに国家をそこに樹立したわけです。この歴史的背景の違いが、韓国人と台湾人との対日感情の差異となっていることも、理解しておくべきなのです。
 

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『旅する台湾華語 台灣好好玩!』簡希蓁(著者) 高向敦子(構成)旅する台湾華語 台灣好好玩!
簡希蓁(著者) 高向敦子(構成)
「旅」をテーマに学ぶ、すぐに使える台湾華語

台湾に興味のある人や台湾華語を学ぶ人にとって、まさに旅行は実践の最大のチャンス!本書では、台湾旅行を9つのシチュエーションに分け、それぞれのシーンで想定される台湾人との会話を通じて台湾華語を学びます。 飛行機の機内アナウンスからはじまり、観光に出かけ、街歩きや買い物・食事を楽しんだ後、台湾人と仲良くおしゃべりを楽しむ…というように、実際に旅の気分を味わいながら学習できる構成になっています。CDつきだから、音声を聞いてすぐに使えます。台湾旅行を存分に楽しむための学習書。

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平昌での「民族意識」に当惑するアメリカ、日本、そして中国

“Kim Jong-un’s Overture Could Drive a Wedge Between South Korea and the U.S.”

金正恩の(雪解けの)提案は、韓国とアメリカとの関係を悪化させかねない。
(New York Timesより)

「民族」という言葉。これを翻訳すると race となります。同時に「民族」は tribe です。大陸の長い歴史を通して活動してきた部族tribe が、国家として自らを意識したとき、tribe race となりナショナリズムの原点へと成長したのです。
平昌オリンピックで、韓国と北朝鮮とが急接近したとき、韓国人の多くはこの「民族」という言葉を意識したのでしょう。
 
確かに韓国では「民族」という言葉をよく耳にします。
韓国はいうまでもなく Korean、つまり朝鮮民族による国家です。では、日本はというと、日本人という言葉はありますが、日本民族という語彙には馴染みません。民族という言葉を使用するときは、日本人は「大和民族」として自らを表現しますが、これは戦前の国粋主義への記憶と繋がってしまいます。
島国として戦後の一時期を除きほとんどの期間独立を維持してきた日本人は、自らのことを「民族」として意識するチャンスがなかったともいえましょう。
 
朝鮮半島の利害に絡むアメリカは、自らを多民族国家 multinational state と定義します。「アメリカ民族」という言葉はなく、多様な人種や宗教を持つ人々が共存する国家というビジョンを民族の代わりのスローガンとしてきました。
では、もう一つの当事者である中国はどうでしょう。中国もアメリカと同様に多民族国家です。しかし中国の歴史はその中心で活動する漢民族と、周辺の民族との対立と侵略の反復でした。漢民族が衰退したとき、満州族などの北方民族が常に中国に侵攻してきました。
逆に漢民族が繁栄したときは、周辺民族は服従を強いられました。朝鮮民族はそんな周辺民族の一つでした。
現在の中国では、社会主義を建前として民族の融合を唱えていますが、ウイグル族チベット族など少数民族との対立が国家の課題であることには変わりありません。北朝鮮との国境には朝鮮民族も活動しています。つまり、中国では、今でも漢民族と周辺の様々な民族との対立の中で、「民族」という意識が揺れ動いているのです。この状況は朝鮮半島の隣国ロシアでも同様です。ロシアでも多民族国家をスローガンとしながら、チェチェンジョージアなど、ロシア民族と他の民族との対立に揺れているのです。
 
さらにヨーロッパに目を向けると面白いことに気付きます。
フランスやドイツやイタリアなどは、それぞれの民族で成り立ってきた国民国家です。しかし、民族の対立の歴史の果てに、お互いに加害者と被害者との立場を繰り返した末に第二次世界大戦という破局を経験したヨーロッパでは、とりたて「民族」という言葉を意識しなくなりました。例えば、戦前ドイツ人は「ゲルマン民族」と自らを位置付け、独自のアイデンティティ(identity) を強調しました。
しかし、今ではヨーロッパの主要国は戦争の悲劇の教訓から、自らを多民族国家へと変化させてきたのです。その結果、パリでもロンドン、そしてベルリンでもアフリカや中東、アジアからの移民が目立つようになりました。もちろん、そうした動きに反発するナショナリズムが高揚していることも事実ですが。
 
さて、こうした世界の動きをみながら、改めて韓国人にとっての「民族」という概念を考えてみたいと思います。
北朝鮮の脅威は、韓国人にとっても喫緊の課題です。実際、朝鮮戦争とのそこに至る過程で、民族を分断した対立を通して、家族が分断され、無数の血が流されました。その後も北朝鮮とは武力による小競り合いが頻発しました。
その悲劇の中で彼らは考えます。ドイツは戦後分断された。しかし日本は分断されずアメリカに保護された。でも東西対立の最前線に取り残された韓国は分断されたと。常に近隣の大国の脅威と植民地化、分断に晒されながらも、世界史の陰に置かれてきたことが、彼らの強い民族意識の原点となったのです。
従って、北朝鮮問題、日韓問題を語るとき、彼らは「朝鮮民族」として極めて複雑な心境を抱くのです。この複雑な意識が、国際関係に優先されるとき、日本やアメリカ、そして時には中国をも困惑させる事態がおきるのです。韓国はアメリカの保護によって朝鮮戦争を克服し、国家として自立してきました。ですから北朝鮮に対抗し、資本主義経済を守るにはアメリカとの同盟が必要です。しかしそれは日本も組み込んだ日米韓という連携へとつながります。しかもアメリカは東西対立を促進し、朝鮮半島を分断した片方の加害者でもあるのです。
 
こうした韓国の人々のアメリカと日本への意識が、平昌オリンピックというスポーツの祭典を利用した北朝鮮への接近に彼らを駆り立てたのです。
北朝鮮との問題は、過去から続く民族の悲劇を克服する問題として、自らの力で解決したいという強い意識が韓国の背景にあるわけです。
この民族意識を考えたとき、アメリカも日本も、当惑しながら、対応を考えざるを得なくなりました。これは中国も同様です。中国は2千年にわたって朝鮮半島に影響力を持ち続けてきました。しかし、このところ北朝鮮が中国に対して、「民族」として対抗するようになりました。中国からしてみれば、韓国がアメリカから自立することと、北朝鮮が中国から離反することをどう判断してよいか、文字通り困惑しているのです。
 

「民族」という概念の薄い日本。確かに日本人は、こうした激動の時代に翻弄された大陸国家の微妙な意識の機微には疎いようです。それだけに、アメリカと中国に挟まれた朝鮮半島の動向にはより繊細な対応が必要になるのです。

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アジアの人々と働くこと

『なぜ銀座のデパートはアジア系スタッフだけで最高のおもてなしを実現できるのか!?』千葉祐大 (著者)なぜ銀座のデパートはアジア系スタッフだけで最高のおもてなしを実現できるのか!?』千葉祐大 (著者)
価値観の違うメンバーを戦力化するための17のルール!
訪日外国人の数が、毎年過去最高を記録している現在の日本。お客さまが外国人であれば、接客する側も言葉や文化を理解している同国人のほうがいいと考えるのは当然のこと。
しかし、「はたして外国人に、日本人と同じレベルのおもてなしを実践することができるのか」「どうやって、外国人におもてなしの教育をすればいいのか」と、懸念や疑問を持つ現場関係者が多いのも事実です。
本書は、外国人とりわけアジア系人材を、おもてなし提供者として育成する教育方法について、銀座のデパートで実際に行われている事例を取り上げながら、詳しく解説します。

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メキシコでの日米談義はグローバルなコメントから

“Car plants from Michigan to South Carolina could pay more for the steel used to make engines and auto parts. Farmers across the Midwest would be a prime target for China, the biggest buyer of some American crops.”

(今回のトランプのアメリカの産業を保護するという関税は)ミシガン州やサウス・カロライナ州の自動車製造業はエンジンと部品の調達コストがあがるだろう。そして、中西部の農家も、最大の作物の買い手である中国の輸入制限という報復の対象になるはずだ。
CNNより

「メキシコ人はプライドが高いんだよ。実は本音でいえば、多くの人はアメリカ嫌い。トランプ政権のメキシコ蔑視の発言はそれに拍車をかけたことになるさ。でも、とはいえ、経済的にはアメリカは大きな影響力を持つ。だから、多くのメキシコ人は英語も勉強しようとしているし、アメリカに移住した親戚や友人にも期待しているんだ。」
メキシコ中部の中核都市グアダラハラのレストランで、そこに暮らすマイケルというアメリカの仕事仲間と夕食を共にしました。
「実はね。メキシコ人で英語をしゃべれるのは人口の5%に過ぎない。その5%の中に英語の初心者もいれば、上級者もいる。いかにこの国で英語が通じないかということがわかるだろう。」
すると、アメリカから一緒にグアダラハラに飛んできて夕食に同席したもう一人の知人が私に質問します。
「でも、メキシコ人はトランプ政権に強く反発しているよね。声にだして。日本ではどうなんだい。今回、鉄鋼やアルミにアメリカは関税をかけると発表したろ。日本人は黙ってそれを受け入れるのかねえ。」
これを受けて、もう一人のアメリカ人が言います。
「あれって確か中国に向けられたものだよね。日本も対象なんだ。でもさ、日本は軍事でもアメリカにタダ乗りしているし、まあ関税でもかけないとバランスが取れないんじゃない。」
「それって、事実に反するんだよ。」
私はそう言って反論しました。
「日米安保条約があって、アメリカ軍は日本に駐留しているけど、その経費のかなりは日本がもっているんだよ。むしろアメリカはその経費によって日本に軍隊をおいて極東でのプレゼンスをもつことができるという利益を受けている。知らなかったの。」
「そんな事実アメリカ人は誰も知らないよ。なぜなら日本はそのことを全然主張しないから。主張しなければアメリカの世論に届かないじゃない。」
確かに彼らのいう通りです。我々が思っているより強く主張して、初めて海外にはじんわりとメッセージが伝わるのだということを、日本人は知らなすぎます。日本人の考え方やスタンスについて、自分たちはちゃんと言っているというものの、実際はそのほとんどが的確に伝わっていないことがあまりにも多すぎるのです。
「じゃあ今回の関税の問題も、日本の声はアメリカには届いていないようだね。」
「そうだよ。韓国やヨーロッパ諸国はアメリカに強く反発した。でも、日本からの声は届いていないよ。韓国やヨーロッパ諸国もアメリカにとっては大切な友好国だろ。でも彼らはいうべきことははっきりいうさ。日本人って何か遠慮しているのかな。それともはっきり言いすぎることは美徳じゃないと本気で思っているんだろうか。だから日本だけはしごを外されたんだよ。」
 
このアメリカ人のコメントには確かに耳を傾ける必要があります。
こちらでは、親しい友人が様々なことで口角泡を飛ばすように議論します。横でみていると喧嘩をしているように見えることも。でも、彼らはそうした議論をしてこそ、相手との理解を深めることができるというスタンスを持っていることを忘れてはなりません。異なる意見を戦わせることは、むしろ良いことなのです。
日本人で流暢に英語をしゃべり、海外通と呼ばれ教養もある人が、この一点を理解していないために、海外との交渉で思わぬ失敗をする場面が多いのです。
軍事や経済での日米の交渉も例外ではありません。正直なところ、こうした点を踏まえることのない、日本の官僚、大企業の幹部の交渉力のなさには苛立ちを感じるほどなのです。
ですから、今でもアメリカでは、日本に対する様々なステレオタイプが横行しています。ここで取り上げた日本タダ乗り論に加え、日本では女性が奴隷のように差別されている。ほとんどの日本人は内気ではっきりものを言わない。日本人は中国や韓国へ戦争責任について何も謝罪していない。日本には言論の自由がないなどなど。
 
確かにこれらのステレオタイプ(Stereotype)には、それなりの原因があるかもしれません。しかし、はっきりと英語で自らのスタンスを語ることのできない日本人が得る不利益は思っているよりも大きいのです。
「おいおい、アメリカ人は利益があると思えば、平気でスタンスを変えるよ。例えば、関税のことでも同様さ。トランプは今ひどい支持率だろ。だからアメリカの産業を自分が支えていることを強調するために、日本をスケープゴート(scapegoat)にするなんて当たり前のことなんだ。事実に反してもね。俺は中東の出身だからよくわかるけど、アラブ系の人がどれだけそんなアメリカの政策の被害にあってきたことか。トランプ政権はその最たるもの。知ってるかい、中東の混乱のため、俺の親戚の住むレバノンには、シリアから200万人の難民が流れ込んでいる。日本はこうしたことに何もしていない。俺たちからみても日本人は大人しすぎる。大人しければ、アメリカはこれ幸いにアドバンテッジ(advantage)をとってもいいと彼らは思っているんだ。」
同じテーブルにいたイラン系のアメリカ人が話し出します。
「いいかい。なんだったっけ今の日本の首相。」
「安倍首相かい。」
「そうそう、アベ。彼がトランプとゴルフをしたから大丈夫だって。馬鹿な話だよ。結果としてヨーロッパの多くの国はトランプを強く批判して、自分の国の利益を守ったじゃない。仲のいいことと、ビジネス上の利益とは違うんだよ。そこのところがどうしてわからないんだい。」
 
グアダラハラの夏の夜は、メキシコの話題から日本人論へと移りながらふけてゆきました。
その話題に加わる私の複雑な気持ち。それが、海外を実感したときに抱くやるせなさなのです。この気持ちを一人でも多くの人が共有できるようになったとき、日本は少しずつ変化してゆくはずです。そんな未来が来ることを祈りたいものです。
 

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