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アメリカの焦りと世界の混沌(中東問題その1)

【海外ニュース】

Gaza Fighting Intensifies as Cease-Fire Falls Apart
(New York Timesより)

ガザでの紛争が激化、停戦も成立せず

【ニュース解説】

これから3回にわたって、中東情勢にスポットをあてつつ、現在の世界情勢を分析してみたいと思っています。

第二次世界大戦終結期から現代までの70年間で、アメリカが本当に焦っていた時期が二つあります。
一つは、正に現在。そしてもう一つが第二次世界大戦の末期、丁度広島と長崎に原爆を投下した頃のことです。
こう書くと多くの日本人は意外に思われるかもしれません。しかし、世界情勢と世界史を分析する時、そこにある「共通した背景」をみるならば、それは誇張ではないことがわかってきます。

現在は、世界がアメリカのいうことを聞かなくなっている現実を、アメリカ自身が思い知らされている時代です。アメリカは焦り、しかも焦れば焦るほど、その影響力の低下が露呈されてゆきます。
今回のガザでの紛争をみるとき、最もアメリカの後押しを必要としているイスラエルですら、なんとか中東を安定させたいアメリカの mediation (調停) になかなか耳を貸しません。

では69年前はどうでしょう。アメリカ主導の戦争が勝利目前というときに、どうしてアメリカはそんなに焦っていたのでしょうか。
それは、当時もし日本が降伏せず、徹底抗戦の姿勢をとった場合、日本本土での泥沼の戦いにアメリカが引きずり込まれる可能性があったからです。
しかも、ソ連は、8月9日には日本と開戦し、北から北海道に迫っていました。
アメリカが戦後一番の痛手を被ったベトナム戦争などを思い出すと、対日戦の終結が遅れ、日本での戦争が日本本土でのゲリラとの戦いになる悪夢に、アメリカがどれだけ苛まれていたかは容易に想像できます。

この二つの情勢に共通していること、それは新しい秩序がまだ見えていない段階での、賭けの行方にあたふたとしているアメリカの状況です。
現在は、そんなアメリカが再び世界に翻弄され始めているなかで新しい秩序が生まれない時代です。イラク戦争終結以来、アメリカはロシア、中国、そしてヨーロッパなどの利害の狭間で、外交的に有効なカードをだせずにいます。
極東でも、どんなにアメリカが調停しても、日韓関係一つ改善の確実な保証は得られないままです。
69年前は、その逆の過渡期でした。
アメリカが世界に君臨する間際の、その試みが成功するか否かの賭けの行方にアメリカの心臓は高鳴っていたのです。
しかし、1945年8月初旬の段階では、戦後の秩序はどうあるべきかという構想はあったものの、まだ未来は混沌としていました。
日本が降伏しないままでは、終戦を迎えて数ヶ月が経過したヨーロッパでの新秩序に向けた駆け引きをソ連とするためのカードもきれません。
1945年2月に開催された Yalta Conference ヤルタ会談で、アメリカは頑強に抵抗する日本との戦いを終え、自国の負担を軽減させるために、ソ連に参戦を促しました。
しかし、これは、モンゴル、中国へのソ連の影響力を認め、場合によっては北部日本をも、その傘下に呑み込まれるリスクを背負ったものだったのです。
従って、アメリカは焦りました。その焦りが原爆の投下、日本の諸都市への無差別爆撃を強行した原因であったことはいうまでもありません。

この70年間に、high tide、すなわち満ち潮のピークに向かうアメリカと、ebb tide 引き潮が顕著になったアメリカがあるというわけです。

今アメリカは、国連をも巻き込んで、頑迷に戦闘を続けるイスラエルをいさめようとします。しかし、イスラエルとハマスとの縺れは、一筋縄ではいかない複雑なものです。
そしてその縺れの向こうには、アメリカを悩ますテロの問題、石油価格の課題、さらにはイランなどと交渉を進める核拡散の問題などが控えていることはいうまでもないことです。

次回は、いよいよ、中東問題のコアあるパレスチナ問題について、現地で実際に目の当たりにした対立を紹介しながら解説したいと思います。

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