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米出張中にホイットニー・ヒューストンの訃報が臨時ニュースで流れて

【海外ニュース】

Whitney Houston, Pop Superstar, Dies at 48
Ms. Houston reigned as pop music’s queen until her majestic voice and regal image were ravaged by drug use, erratic behavior and a tumultuous marriage.(ニューヨークタイムズより)

ホイットニー・ヒューストン、ポップシンガー48歳で死す
ヒューストンさんのポップ界の女王に君臨した偉大な声と威厳は、ドラッグや常軌を逸した行動や、荒れた結婚生活などで脅かされていた

【ニュース解説】

今アメリカ西海岸に出張中です。

あれは、まだ80年代。
私は、アメリカで書籍のセールスマンをしていました。アメリカはシリコンバレーなどでは先端の技術に触れることができる反面、例えば家電製品やビルの施設など、これがと思うところが意外にロウテクなままであることは、よく知られています。
本も、未だにセールスマンがカタログをもって書店を訪れ販売をしています。80年代には、私もそうしたセールスマンの一人として、日本やアジアに関する英文の書籍をアメリカのあちこちの書店を訪ねては販売していました。

セールスマンにとって、街から街への長いドライブの友は、カーラジオから流れる音楽でした。あれはニューヨーク州の北部ロチェスターにさしかかった午後でした。ラジオからとても深みのある、強い声量で、“We’ll be making love the whole night through” という歌が流れてきたのです。「一晩中愛し合うのよ」というなんとも激しい lyric (歌詞) にびっくり。同時に、そのソウルな声と美しいメロディにうっとりとしたのを覚えています。
それが1985年にリリースされ、全米でヒットした Whitney Houston の Saving all my love for you (すべてをあたなに) だったのです。

それから25年以上を経た今日 (2月11日)、サンフランシスコ郊外のフリーウエイをドライブしているとき、ラジオのスイッチをいれたら、またこの曲がかかっていました。これを聞くたびに、あの森と緑の中を一直線にはしるロチェスター近郊のフリーウエイの風景が懐かしく思い出されるのです。ところが、曲が終わるや否や、それが Whitney Houston の追悼のための一曲であったことを知りました。ラジオでの Breaking News (臨時ニュース) だったのです。

私は特に彼女のファンではありません。
彼女が National anthem (国歌) を唄って話題になった頃から、多くの黒人のミュージシャンとは異なり、多少恵まれた生い立ちだったとはいえ、ニュージャージーのゴスペル歌手からキャリアをはじめたという、彼女のイメージが私の中で崩れていったのも事実です。それは、人種偏見や社会の矛盾の中で反骨精神を様々な形で表現する黒人アーティスト一般に対する、私のステレオタイプな誤解かもしれませんが。

しかし、そんな彼女が、やはりドラッグや離婚、そして様々なスキャンダルに苦しんでいたと聞いたとき、往年のジャズミュージシャンやソウルやブルースシンガーの人生と彼女を改めて重ねてみることができたのです。
現在は、昔と違い、本音で生きることの困難な時代。著名になればなるほど偽善的ともいえるクリーンさを求められるなか、彼女の中で何があったのかは、今では誰もわかりません。

ちなみに、彼女の出演するはずだったグラミー賞は予定通りに。Show must go on. すなわち、「何がおころうとも、ショウは休めない」というところです。

著名な人が亡くなると、その人の記事が掲載されます。それを obituary といいます。また、人が亡くなることを、この新聞の記事のように、He (she) dies と直裁に書くことがありますが、多くの場合は pass away と表現することを付け加えておきましょう。

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