ブログ

フィードバックのスキル(5): ポジティブな雰囲気作りに取り組もう

フィードバックを行う上での、最大の難関は、フィードバックを受ける側も地位や背景にこだわらずどんどん反論してくる可能性があるということです。
彼らは自らの立場、そして考え方に従って、堂々と説明をしたり反論したりすることは当然のことだと意識しています。従って、フィードバックを与える側のロジックが破綻した場合、気まずい状況になることも当然ありうるのです。

こうしたことを防ぐために最も効果的な一言、それが

Misunderstanding (誤解)

なのです。

例えば、レポートの提出期限に間に合わなかった部下がいたとします。
期限を守ることが大切であるとフィードバックを行ったとき、部下は、あなたから別のタスクを与えられ、プライオリティをそちらにおいたために、レポートが遅くなったのだと反論されたとしましょう。

日本人の上司からみれば、こうした反論をされること自体に、怒りを覚えるかもしれません。しかし、その怒りを抑えて、まず相手の反論をしっかりと聞くことからはじめます。

そして、ここでの会話のゴールについて考えます。この場合、同じことが二度と繰り返されないように、合意に導くことがゴールであり、抽象的な「責任感の問題」などといった言い方は、相手に受け入れられません。第一、異文化の環境では、「責任」そのものの概念が異なる場合もあるのです。

合意をすれば次に合意を破ったときは、完全に相手の責任になります。

ビジネス上の人間関係においては、

Feedback → agreement → next step → performance appraisal

というラインを想定して、相手の反論への対応を考えなければならないのです。

では、反論を受けたときに、どのように misunderstanding という言葉を活用するのでしょうか。
単に誤解があったと表明するのでは意味がありません。
相手からこの誤解を解消するにはどのようにすればよいのかという提案を受けるよう、誘導してゆくことが大切なのです。

Misunderstanding → Prescription (処方箋) → Agreement (合意)

というプロセスがあってこそ、次のステップへとつながってゆくのです。

切り出し方は、

I think there has been a misunderstanding.
(誤解があったようだね)
Perhaps there’s been a misunderstanding.
(おそらく誤解があったんだよ)

というような表現で構いません。
フィードバックの与え手は謝る必要はありませんが、

I am sorry to say we had a misunderstanding.
(残念ながら、誤解があったようだね)
というような言い方で、sorry という言葉を使用することはいいことです。

また、もしも相手の反論がもっともであった場合、そう思ったことに対してのみ、部下に謝罪しても構いません。例えばあなたが多忙なために、充分に指示を与えていなかったことがあったとすれば、

I am sorry. Maybe my direction was not clear enough.
(悪かったね。多分私の指示が明解ではなかったようだ)

というふうに。
しかし、その場合でも、今後はわからないことがあればちゃんとチェックをいれるように部下にアドバイスをして、再発防止へお互いが合意してゆくようにするプロセスには変りありません。

レポートの納期が遅れた部下の反論に対しても、こうした一言からはじめ、次にあなたが期待していたことを説明します。

Well, I expected your report by yesterday as I wanted to use your report for our next presentation.
( いえね。昨日までにレポートは欲しかったのです。次回のプレゼンテーションに君のレポートの内容が必要だったからね)

という風に理由をしっかりと説明します。その上で、今後このようなことがおきないようにするにはどうしたらいいかを話し合います。

Now, do you have any idea not to have a same problem for future?
(さて、今後同じ問題がおきないようにするにはどうすればいいと思いますか)

というふうにして、相手から解決方法を提案してもらいます。もし、うまくいかないようであれば、こちらから提案をしても構いません。

Here’s what I thought could be done. &#8230
(今できることは以下のことではないかと思います)

などといって。

そして次は、

Let’s review what we’ve discussed.
(さて、話したことをまとめてみよう)
といって、あなたは相手からの提案を確認したうえで、

Am I understanding you correctly?
(ちゃんと理解していたでしょうか)

と確認をとります。

このことによって、お互いに同じ問題が起きないこと確認できるのです。

業務を進めてゆく上で大切なことは、お互いに前向きなモチベーションをもって業務にあたってゆくということです。
大切なことは、マイナス指向で注意をするのではなく、未来に向けて期待があるからゆえに、フィードバックを行っているというスタンスを示すことです。

例えば、
I can count on you to manage your time better.
(君は時間管理がしっかりできると期待しているよ)

という表現にある count on は、相手に期待を伝えるときに使用される大切な熟語です。こうした前向きの表現でフィードバックのミーティングを締めくくることで、よりフレンドリーな環境を構築することができるのです。

ではまた。
See you!!

山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」・目次へ

* * *

『異文化摩擦を解消する英語ビジネスコミュニケーション術』山久瀬洋二異文化摩擦を解消する
英語ビジネスコミュニケーション術

山久瀬洋二、アンセル・シンプソン (共著)
IBCパブリッシング刊

*山久瀬洋二の「英語コミュニケーション講座」の原稿は本書からまとめています。文法や発音よりも大切な、相手の心をつかむコミュニケーション法を伝授! アメリカ人のこころを動かす殺し文句32付き!

山久瀬洋二の活動とサービス・お問い合わせ

PAGE TOP