今回から、今まで4000名以上の企業エグゼクティブへのコーチ、コンサルティングの内容を、実際の質問やアドバイスの実例にそって紹介します。海外でのビジネス、留学、時には旅行などでも実際に起こる異文化が故のコミュニケーションの課題、誤解のプロセスについての、実践に即したアドバイス集です。是非皆さんからの実例やニーズも、私の Twitter にコンタクトしてください。日本人にとってのグローバルなコミュニケーションのあり方について、ご一緒に考えてゆきたいと思います。
人前でスピーチをするときに、まず自分の英語が拙いことを言っておいた方がいいのではという質問は、私が長年この仕事に携わっているときに、最も頻繁に受ける質問です。
答えは否です。全く必要はありませんと言い切っておきましょう。
何故日本人は自分の英語ができないことを謝るのでしょう。それは、日本文化に謝ることへの「美徳」があり、日本人は常に相手との「和」を優先するために、相手に迷惑かけているのではという危惧に対し、過敏にまで反応するためかもしれません。
そんな意識をもって、海外でお詫びをすると、時には大きな誤解を相手に与えてしまいます。日本人は自分の英語が拙いことで、相手に迷惑をかけることを意識して、まずスピーチの前にお詫びをします。
しかし、外国人からみれば、「この人はなんでいきなりお詫びをするのだろう。私はあなたの英語を聞きにきたのではなく、あなたのスピーチの内容を知りたくてやってきたのだ」ということになります。
冒頭からお詫びをすれば、この話し手は自信のない人で、話す内容もあまり信用できないかもしれないという感想を与えてしまうのです。
もちろん、英語に自信がない人が人前でスピーチをすることはストレスです。しかし、そこでお詫びをすれば、そんなストレスにつぶされそうな弱い人ということになるわけです。
ですから、ストレスを軽減するために、まずしなければならないことを考えましょう。例えば、スクリーンなどにスピーチの内容を簡単に箇条書きにしたものを映し出し、そのアウトラインに従って話すなどして、ストレスを軽減することも一案です。
もちろん、スクリーンばかりに視線を固定して、ただ棒読みすることは禁物。目線はあくまでも聴衆におきながら、適度にスクリーンに視線を移し、自らの自信のない部分を補ってゆくようにしたいものです。
繰り返します。英語に自信がなくても、そのことをお詫びする必要は、まったくないのです。自分は大切なことを喋るのだからという自負をもって、堂々と話をはじめましょう。もし聞き手にわからないことがあれば、聞き手が質問をしてくるはずです。そんなときの対応の仕方は、また近いうちにお話しします。
次回は、日本語から直訳した英語のもたらす落とし穴について、お話しします。