【海外ニュース】
American Airlines, US Airways merger to alter business travel.
(LA Times より)アメリカン航空とUSエアウエイズの合併で出張が変わる
【ニュース解説】
この記事の内容をみて心配している人は意外に多いのではないでしょうか。
実際、先週アメリカン航空とUSエアラインとの合併のニュースがリリースされたとき、多くの顧客が真っ先に心配したのは、自分が今までこつこつと貯めてきたマイレージのことでした。
「あのさ、US Air は Star Alliance を離脱するんだろう。当然 Gold member だからといってこれから US Air ではなんの恩恵もなくなるんだよね」
長年ユナイテッド航空に乗っていたアメリカ人の知人が、私にそんな不安を語ってくれました。それはこの合併で、USエアウエイズがユナイテッド航空の加盟する Star Alliance を離脱するからです。
ビジネスマンの多くは、マイレージに対して異常なまでの執着を示します。
その異常な執着ぶりは、ある種の「オタク」的心理であり、同時にストレス多き現代のビジネスにおける「はけ口」であるともいえましょう。
以前、マイレージの得点に関するサービスが一番充実していたことで評判だったのはユナイテッド航空。
年間10万マイルを飛ぶことによって獲得される1K (ワンケー) というステータスを求めて、多くのビジネスマンは、やっきになってマイルを貯めたものでした。
「俺さ、12月の段階で9万8千マイルだったんだよ。だから、クリスマスにわざわざ両親の家に自腹で里帰りしたよ。だって西海岸から東海岸まで 2500マイルだろ。これで1Kを継続できたわけ」
私の友人が、正月早々そんなことを語っていたのは、15年も前のこと。
きっと10万円近く支払って、ステータスを維持したはずだと私は思いました。
実は、私も毎年1Kのステータスを手にしていました。
日本とニューヨークとの往復が約1万3400マイル。その区間を何度か出張し、さらにアジアやアメリカ国内、時にはヨーロッパ便に登場する激務の結果の報酬でした。
当時、1Kになれば、空席があれば自動的にアップグレードしてくれ、1K専用のラウンジが使え、予約などの専用デスクやサービスがあるだけではなく、ファーストクラスの顧客と同じく搭乗を優先させてくれるなど、人間の滑稽な見栄を満足させてくれたものです。
ですから、一度こうしたステータスを手に入れると、多少無理をしても、それを守り通そうとしたもので、正にそれが航空会社の思惑だったことになります。
最低なのは、企業が出張によるマイレージの権利を会社の所有とするという方針を打ち出した場合のこと。
実際、あるアメリカの国際企業が、自らの社員が出張で獲得したマイルの所有を認めないという方針を発表したことがありました。会社としては、会社の経費で飛行しているわけなので、そのベネフィットを受けるのは会社であるべきだという理由での方針転換でした。
しかし、それからしばらく、会社の人事部には、ユナイテッド航空が搭乗後最初に配るピーナッツの小さな袋を同封した抗議の手紙が殺到したのです。
ユナイテッド航空は、そうした問題を理解してか、グローバルサービスという、お得意様の大企業の顧客への特別なサービスを設定。
すると、そのサービスが1Kよりも優位であるということで、今度は一般の1K会員から航空会社側にクレームが殺到したというエピソードがありました。
そんなユナイテッド航空が核の一つとなって、航空会社の提携が進み、世界最大の航空会社連合 Star Alliance ができたのは、1997年のことでした。
私は、その後日本に帰国し、Star Alliance での得点を維持するために、Star Alliance メンバーである全日空にマイレージを切り替えました。
“These guys didn’t merge to make our lives better,” he said. “They merged for their own purposes.”(航空会社は我々のことなんか考えてないよ。自分のために合併したのさ)と語る専門家がいますが、それは事実でしょう。
エアライン産業は、コストのかかるビジネス。アメリカでいえば、今まで世界に名を馳せた大手航空会社の中で、経営難によって苦しまなかった航空会社は一社もないほど。
行き過ぎたマイレージサービスの改革は、多くのエアラインにとっては必須の課題かもしれません。でも、そんな「改悪」に既得権と思う顧客は過敏に反応します。
アメリカン航空とUSエアウエイズとのどちらのサービスが良いか。多くの人はアメリカン航空に軍配をあげます。従って、結果として泣きをみるのは、アメリカン航空の顧客ではないかというのが、一般的な見方なのです。