【海外ニュース】
How many Republicans are running for President? It’s a trick question.
(New Yorkerより)何人の共和党員が大統領選挙に参戦するのか?これは難しい質問だ
【ニュース解説】
アイルランドで同性愛結婚を認める国民投票が行われ、賛成多数で可決され、憲法改正が実施されることになりました。ある若者がインタビューに応えて「我々は長い間教会に縛られてきたけど、これで自由を勝ち得たことになる」とコメントしていました。
アイルランドはカトリック教徒の多い国で知られています。
ローマ法王庁が同性愛を否定している中での、この方針転換は、世界に大きな波紋を呼び起こします。
そして、このアイルランドのニュースは、そのままアメリカに飛び火します。人種問題や移民問題、そしてここに紹介した同性愛の権利や人種差別問題などをめぐりリベラルと保守との対立が際立つ中、2016年の大統領選挙で、アメリカの有権者がそのどちらを選択するかを考えるとき、このアイルランドの事例は、多くのアメリカ人にとっても争点の一つとなる課題なのです。
一方、アイルランドの隣国イギリスでは、EUを脱退する可能性に衆目が集まっています。同時に、保守党が再選された中、国内の移民の権利の拡大に歯止めをかけようとする動きも顕著になっています。
こうした閉鎖的な動きの中で、逆にスコットランドは、イギリスから離脱してEUに残留することも選択肢の一つとなりました。
国際的な提携と協調を維持するか、より自らの国益のために国を閉ざすかという議論は、今フランスなどヨーロッパのあちこちで行われています。
この動きも、アメリカの世論に影響が大です。
今まで積極的に移民を受け入れてきたアメリカが、今後も多様な価値観を受け入れて国を発展させてゆけるのか、大統領選挙ではこれもまた大きな課題になります。
こうした海外の動きを見据えながら、目をアメリカ国内に向ければ、今オバマ人気が再び大きくかげりだしています。
特に民主党支持層の中に、ブッシュ政権とさほど際立った外交方針の転換ができないまま、中東の泥沼から抜け出せないでいるオバマ大統領の指導力に幻滅する人が増えているのです。
実は、これは外交問題だけではありません。去年話題になったエドワード・スノーデンによる機密漏洩事件などを契機に、オバマ政権がそれ以前の政権と同様、国家権力を使って個人のインターネットや通信の情報にアクセスしている現状があからさまにでて以来、国民の政府への信用そのものに大きな疑念がでているのです。そこに、最近発表されたGDPの減速のニュースがさらに追い打ちをかけています。
さて、そうした中で、保守色の強いはずのネブラスカ州で死刑制度が廃止されるなどといった興味深いニュースも話題となっています。さらに一方で人種問題とも深く絡む多発する警察官の暴行事件へ対応のあり方など、次期選挙では共和党、民主党どちらからみても、余りにも多く複雑な課題があり、どこに焦点を絞り選挙を進めてゆくか、多くの候補者や有権者は戸惑っています。
アイルランドやイギリスでの動向、中東情勢など、刻一刻と変化し、伝わるニュースをとっても、あるときは保守色を包含する共和党に有利に、そしてあるときは民主党に有利にと、振り子は左右に振れ続けてとどまりません。
さらに共和党をとってみると、ここで紹介した雑誌ニューヨーカーの記事の通り、候補が乱立し、一年以内に誰に絞られるのか、五里霧中です。
候補者の多くは、小さな政府こそがアメリカの伝統的な「自由」を支えるのだと主張し、ガンコントロールや国民健康保険制度などを通し肥大化する政権運営を続ける民主党を牽制しています。
しかし、アメリカの連邦政府が最も肥大化する原因は、なんといっても外交的な不安定さ、軍事介入やテロ問題での権力の行使の多様化など、もとはといえばブッシュ政権に代表される共和党政権下での政策にその根源があるのだという世論も根強くあります。
次期大統領として民主党内で有力視されるヒラリー・クリントン、さらに最近になって共和党の大統領候補の一人として名乗りをあげた元ニューヨーク州知事のジョージ・パターキなど、アメリカを代表する政治家が、この複雑で混沌とした情勢をどのように裁き、リーダーシップを発揮しようと試みるのか。今までにはない、多彩な戦略を必要とすることはいうまでもありません。
このように、世界情勢とアメリカ国内の情勢とを複眼的にみながら、アメリカの世論の動向に注目し、大統領選挙の行方を追いかけることが、これから一年間は特に必要になってくるのではないでしょうか。
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日英対訳
『海外メディアから読み解く世界情勢』
山久瀬洋二 (著)
IBCパブリッシング刊
海外ではトップニュースでありながら、日本国内ではあまり大きく報じられなかった時事問題の数々を日英対訳で。最近の時事英語で必須のキーワード、海外情勢の読み解き方もしっかり学べます。