日本人の表情は曖昧だとよくいわれます。
実は、それには原因があるのです。
日本人は、自らが思っていることを余り直接主張することを控えます。ですから、表情の上でもあえて自分の思いをストレートに出さないように、無意識に気を遣っているのです。
その昔、日本を訪れた外国人は、日本人の「笑み」に魅せられました。
人と接する時、常に笑みを絶やさない日本人の習慣に、安らぎを覚えたのです。
確かに、日本人は心の中で怒っているときですら、相手に向かって怒りの表情をあらわにすることは稀です。曖昧な笑みを浮かべながら、文句を遠回しに言ったりすることは、日本人同士であれば、ごく頻繁にあるはずです。
例えば、体調が悪くて病院に行ったとします。
「先生、ちょっと腹痛が」と、(辛そうな)笑みを浮かべて症状を説明するというシーンは日本ではよくあります。
既に説明しましたように、「ちょっと」という表現も誤解の原因です。
どの程度の痛みで、その痛みの様子について、できるだけ描写するぐらいの説明が英語では必要です。しかも、深刻な表情で。もちろん、これはビジネス上のコミュニケーションでもいえることです。
英語圏では、言葉の表現内容と表情を一致させて相手に対応することが大切です。そしてそれが彼らの常識なのです。深刻な話をするときは、深刻な表情を。楽しい話をするときはそのように。その中間の曖昧な表情はめったに浮かべません。
ですから、英語で相手とコミュニケーションをするときは、その場その場で、言いたいことと表情とを一致させて話をするよう、強く意識するよう心がけましょう。そうすれば、曖昧な表情からの誤解は回避できるはずです。
例えば、相手に大切な依頼をするとします。
その時、まず相手に対して、挨拶をするときはにこやかに話をしても構いません。
しかし、主題となる大切な依頼をするときは、真剣な顔をして、話を進めます。そして、もし相手がその依頼を快諾してくれたときは、再びニコリとして感謝をします。
交渉がうまくいかないときは、残念そうな顔をしても構いません。ただ、打ち合せが終わった段階では、にこやかな表情で握手をして、お別れをすることも大切なマナーです。
つまり、一つの場面の中でも、その状況によって様々な表情をすることが、英語でのコミュ二ケーションでは求められるのです。表情にめりはりが必要なのです。
昔から海外の人々が注目していた「日本人の曖昧な笑み」。
確かに、それは優しく、心を和ませるものだと多くの外国人は思いました。
しかし、実際にコミュニケーションをしてみると、その笑みの向こうにある真意が見えず、困惑し、時には日本人は本心を言わないと失望する人々が多くいるのです。