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英語を使って意思を伝えるとき知っておきたいことがあれば教えてください。

エグゼクティブ・コーチング(36)

我々が文化背景の異なる人と意思疎通をするとき、相手の国のことばができればとよく思います。英語が苦手な人は、英語さえできればと嘆くわけです。

しかし、実際は英語ができても、相手のコミュニケーション文化が理解できないかぎり、思うように意思疎通はできないのです。
海外の人が日本人とビジネスをしたとき、どこが一番困難かと聞いてみると、多くの人が、「日本人とは情報が共有できないんです」と苦情をいいます。
そこで、日本人にきいてみると、日本人なりにしっかりと相手に自分の意思や意図を伝えているのに、相手がそれに対して期待通りに動いてくれないんだと、逆に悩んでいることが多いのです。

つまり、日本人は英語を使ってちゃんと伝えたつもりなのに、海外の人にはそれが伝わっていないということになるわけです。であれば、そこから思いもよらない誤解が生まれる可能性があります。
実際、このことが原因で、日本人が「なんでお願いしたことを、ちゃんと実行してくれないんだ」と文句をいい、それに対して、「あなたの指示が曖昧なので、私は私の判断で物事を進めたまでだ」と応酬されるなどといった行き違いがあちこちでおきているのです。

この行き違いの原因は英語に起因するのでしょうか。
それを分析するためには、英語力そのものではなく、我々日本人がどのように英語を使っているのかを考えてみる必要があるのです。

よく、日本人はコンテキストの高い民族だといわれます。
日本人が日本語を使ってお互いに意思疎通をするとき、言葉以外の「雰囲気」に頼り、「行間の意味」を推測しながら、お互いに会話を進めることが多いのです。それは「島国日本」の中で長年同じ言語でコミュニケーションをしてきた日本人独特のコミュニケーションスタイルだといわれています。
よく優秀な人のことを語るとき、「彼は一を言って十を知る」ことができるといいます。また、日本の社会では、他の国以上に「阿吽の呼吸」を理解し、「空気を読む」ことを求められます。

日本人は、古くは論語の「巧言令色少ないかな仁」という一言を尊重してきました。これは、言葉巧みに自分をアピールすれば、人徳のない人だと思われるので、慎み深くいるべきだという日本人の価値観を裏付けた言葉ともいえましょう。

これに対して、大陸の環境の中で多文化が共生してきた欧米では、言葉でちゃんと表現をしない限り、相手に意思は伝わらないという常識があります。
移民社会のアメリカではその傾向が特に際立っています。
こうした社会では、雰囲気を読んでミュニケーションをすること、つまりコンテキストの高いコミュニケーションをすることは不可能なのです。
コンテンツを重視した、すなわち言葉そのものをいかに伝達するかというロジックや強調の仕方に重きをおいたコミュニケーションスタイルが求められるのです。

このコミュニケーション文化の違いが、日本人が伝えたつもりでも、相手に伝わっていないという現象の原因となっているのです。日本人が日本語で会話しているときの常識に従って英語を使っている限り、相手に自分の意思を伝えることは困難なのです。

ではどのようにすればよいのでしょうか。
まず、意思を伝えるとき、その理由 (because) をできるだけしっかりと伝えること。次に「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」といういわゆる 5W1H をちゃんと意識して話をすることが肝要です。
さらにだめ押しをしましょう。相手が理解できたかどうか確認することを怠らないようにするのです。
特に、相手に何かを依頼するときは「いつまでに、どのようなものを」という内容を、依頼する理由と共にしっかりと相手に伝える行為が求められます。

異文化間では、ここまでしなくてもと思うくらい、しっかりと相手に対応してはじめて情報は共有されるのだということを理解してもらいたいのです。

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『日本人が誤解される100の言動』日本人が誤解される100の言動
山久瀬洋二・著
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