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パイロットの需要から見える日本に必要な進路指導とは

“The job market for pilots looks great. We have a lot of pilots that are going into retirement which means that it opens up for new up-and-comers in the industry.”

(パイロットの雇用機会は素晴らしい状況だ。今、多くのパイロットが定年を迎えようとしている。つまり、業界で新たな人材の需要が生まれているのだ)
― OSM Aviation Academy より

パイロット養成に見る米日キャリアプランの違い

 マーカスという私の知人は、ドイツはマンハイムの生まれです。
今、彼は沖縄の那覇の北、海辺に近いのどかな町に住んでいます。そしてマーカスは週に一度、香港に飛びます。
そして、香港の航空会社の機長として、香港を起点にアジア各地へのフライトで勤務します。フライトは全てが国際線ということもあり、2週間に4回ほどです。規定により、フライトのない日はホテルで待機。そして、2週間の勤務が終わると香港から沖縄に戻り、残りの2週間は休暇というわけです。
 世界の航空業界は今、深刻なパイロット不足に悩んでいます。
日本でも8000人、アメリカでは数万人のパイロットが必要とされているといわれています。
拡大する航空業界では、人材の供給が需要に追いつかないのです。
従って、アメリカの航空業界では、高校卒業後にパイロット養成校で経験を積み、自らがセスナなどのパイロットのトレーナーとなった段階で学費に見合う収入を得ながら、本格的な大型ジェットのパイロットを目指してキャリアを積むコースが組み立てられています。
自らへの投資の期間を短くし、投じた資金の回収をできるだけ迅速に行えるように、業界全体で取り組んでいるわけです。
驚いたことに、一般の高校でフライトシュミレーターを数台設置して、生徒が授業で航空機の操縦を学べるようにしているところもあるのです。航空機の操縦を学ぶことで、生徒は気象や流体力学など様々な科学的知識を得ることもできます。
また、アメリカにはパイロットになるための年齢制限もありません。増える需要に応えるように、極めて合理的に人材育成のシステムが機能しているのです。
 マーカスは、日本の航空会社もパイロットの不足に悩んでいるといいます。しかし、30歳を過ぎてパイロットのキャリアを始めることは、日本の会社では実質的に無理だとのことです。日本では、いまだに大学卒業直後の「新卒」を雇用し、社風に合った人材を育てようとするので、30歳を超えた人の雇用は稀だというわけです。
また彼は、一つの航空会社で採用を拒絶された人を、別の航空会社が雇用することもまずないのではないかと語ります。もちろん、高校教育にフライトシュミレーターを導入する事例など聞いたことはありません。

海外も視野に自分のキャリアを「操縦」するには

 マーカスのように海外の航空会社に勤務し、パイロットとしてのキャリアを積んでゆくには、まず英語の学習が必要です。
語学留学、Skypeレッスンなど様々な方法で英会話の基本を学び、そこから海外のパイロット養成校などで訓練を受けるわけです。学費は地方から東京に出て私立大学に入学し、そこを卒業する場合とさほど変わりません。留学はお金がかかると思い込んでいる人が多いようですが、それほど困難なことではないのです。
問題は、日本ではいまだに、日本国内と海外とを分け隔てし、海外に留学することが何か特別なことだという潜在意識を人々が持っていることです。
さらに、高校や家庭において、海外に向けてチャンレンジしようという気持ちを持たせるような後押しがなく、人生には様々な進路があるという意識や情報が日本の教育界には欠如しているのです。さらに、まずは4年制大学に行って卒業し、就職をしなければ何も始まらない、という固定観念を抜け出せない人も多くいます。海外に出たいと子供が思っても、高校の進路指導や両親の理解を得ることができないのです。
 また、成人してからの進路への観念にも転換が必要です。
アメリカなどでは、選択した職業が自分に合わないと思った場合、キャリアを180度変えてゆくことはそれほど難しいことではありません。30代になってパイロットを目指したとしても、誰も何も言いません。しっかりとキャリアを積めば就職も可能でしょう。
確かに日本でも、転職は昔ほど困難ではなくなりました。
大学を卒業して就職した後で、会社を辞めて別の人生を目指す人も増えてきました。そうした人々にとっては、人生の再出発のための留学も一つのオプションになっています。
また、外資系企業などでは、そうした海外で学歴を積んだ日本人を雇用するために、海外で日本人の留学生を直接リクルートするケースも増えています。こうした現実を日本の教育界が実感し、進路指導の一つの選択肢としてゆけばよいのですが、そうした意識を教育現場の人が持つことはまだなさそうです。
 留学した後、将来は日本に帰って就職を考える人も多いでしょう。
実際、マーカスの事例を見れば、パイロットの場合、例えば東京に居住して毎月グアムに飛んで、そこを起点に太平洋のいろいろな場所を繋ぐ路線で勤務することも理論的には可能です。もちろん、パイロットに限ったことではありません。現在は、人材がグローバルに環流する時代です。かつ、組織は日々バーチャルになり、フラットになろうとしています。従来のピラミッド型の組織図から、平面を流れる水のようにグローバルに拡大する組織図へと、海外の企業は変化しようとしています。
そうした変化を、固定観念を外して注視すれば、日本であろうが海外であろうが、自らの判断でキャリアを磨く拠点を見つけることはできるはずです。

今こそ日本型の進路を見直そう

 外資系企業と比較した場合、日本企業は海外の人材を本社に還流させ、日本で雇用した人材と平等に活用しようという意識がまだまだ希薄です。
海外の人材を育て、日本人と同様に役員まで昇進させている事例は、日本企業の場合まだまだ稀なようです。こと航空業界に限らず、海外との激しい競争を勝ち抜くためにも、高校から大学へ進学し、そこから新卒の雇用へという日本型進路の変革が今必要なのです。

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