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沖縄戦終結にみる、戦争を遂行した日本の責任とは

【海外ニュース】

Okinawa is ours after 82 days 45029 U.S. casualties, foe’s 94401 Gen. Stilwell heads 10th Army.
(New York Timesより)

沖縄は82日間かけ、45,029名の死傷者、敵側の 94,401名の犠牲のうえに、我々の手中に。スティルウエル将軍の陸軍第10軍のもとに

【ニュース解説】

これは69年前、6月22日付け (日本時間はその翌日) のニューヨークタイムズの一面のヘッドラインです。そこでは、沖縄での organized resistance (組織的抵抗) が終息し、沖縄がアメリカに占領されたことを解説しています。

この一面には、その他に対日戦の詳細な記事が数多く掲載されていました。
太平洋戦争の経験が風化し、日本が右傾化しつつあると指摘する人達が多くいます。そうした世論の変化を考えるとき、当時の戦争の背景を感情的な側面ではなく、冷静に分析することも今必要です。実は、このニューヨークタイムズの一面には、それを語るに足る多くの事実が掲載されているのです。
一面のいくつかの記事は、アメリカ側が受けたダメージの大きさを深刻に取り上げる一方で、日本側にも9万人以上の死傷者がでたと報じています。もちろん、この数字はその後さらに増えてゆきます。

さらに同紙は、沖縄をアメリカが獲得したことで、日本が覇権をもつ極東地域への攻撃可能な地域を示す radius (半径) が拡大したことを指摘しています。Okinawa conquest expands our attacking radius (沖縄の征服は攻撃の半径を拡大した) という副題がこのヘッドラインのすぐ下に記されているのです。

この二つの記事に、同じ一面に掲載されている Today’s communiqué revealed how costly has been price for the island for which we battled for eighty-two days.(本日の発表は、この82日間の戦いに、いかに多くの Cost (損失) を支払ったかを見せつけることになった)という解説を重ねてみます。そこには、日本軍の頑強な抵抗にアメリカがどれだけ苦しみ、日本側にも犠牲があったかという深刻な事実があぶり出されます。その損失は硫黄島での激戦の比ではないと同紙は強調します。

沖縄戦のあと、アメリカ軍は日本の地方都市への空爆を執拗に押し進め、最終的には広島と長崎への原爆投下へと突き進みます。その日のニューヨークタイムズには、日本軍が九州南部に軍事力を集結しはじめ、アメリカの上陸戦に備えていると報道しながら、沖縄での双方の多大な犠牲への教訓をもとに、日本への上陸作戦を逡巡している様子が如実に語られているのです。

戦争責任ということを考えるとき、日本人はついつい原爆投下や都市部への無差別爆撃などによる悲劇に意識がゆき、当時のアメリカの戦争遂行のあり方に対しても批判的になりがちです。
ただ、ここで忘れてはならないことは、戦争への多大な犠牲にアメリカも悩み、早期終結への方途に手詰まり感を抱き、苦しんでいた事実があったことです。
実は、日本の受けた戦争被害の多くがこの沖縄戦の後であったことに注目するべきです。沖縄戦の終結によって、日本の敗戦は殆ど明白になりました。その後大規模な海戦や陸戦を遂行する能力自体、日本にはなく、特攻攻撃と、いわゆる本土決戦以外のチョイスは残されていなかったのです。

そして、アメリカは硫黄島や沖縄での体験から、日本本土に上陸することがどれだけの被害をうむか深刻に考えはじめていたのです。さらに、ヨーロッパ戦線が終結していたこの時期、ソ連による南下という新たな脅威に、日本もアメリカも共に晒されていた事実も忘れてはなりません。

こうしたアメリカの苦悩の結論の延長戦上に、原爆投下という悲劇があったことを考えたとき、沖縄戦終結から2ヶ月近くにわたって執拗に国民に命がけの戦いを強要した当時の日本政府の責任の重さに、自然に目がいってしまうのも事実でしょう。事実、それから一月後に日本に対して発表されたポツダム宣言をも日本政府は黙殺します。つまり、この紙面に現れたアメリカ側の懸念は、そのまま原爆投下の責任をアメリカだけにもってゆくことができるのかというテーマにつながるのです。
こうした歴史への視点を忘れて、日本での被害を世界に強調する時、周辺諸国なども、日本の反応に冷たい視線を投げかけてくるのだというレトリックを、今改めて正面から見詰めてゆくべきなのではないでしょうか。

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