【海外ニュース】
Park apologizes for scandal
パク大統領、セックススキャンダルを謝罪Samsung, LG keep close eye on depreciating yen
サムスン、LGは円の下落を注視Japanese Mayor: Wartime sex slaves were necessary
戦時下の慰安婦は必要だったと日本の市長が語る(The Korean Herald より)
【ニュース解説】
14日の韓国のメディアは、パク・クネ大統領の訪米中にユン・チャンジュン大統領報道官がおこしたセクハラ問題を受けて、大統領が沈痛な面持ちで国民に謝罪したことを大きく取り上げていました。
事件は、去る7日夜、ユン大統領補佐官が在ワシントン大使館の臨時職員の体に触り、彼女をホテルの部屋に呼んで下着姿で応対しようとしたことでした。しかし、このセックススキャンダルの真相がだんだんと明らかになるにつれ、同紙は時折 Sexual assault (性的暴行) というより強い表現で報道するようになっています。まだまだユン・チャンジュンがどのような行動にでたのかという詳細はわかっていないのです。
事件は米韓首脳会議が行われた日の夜におこりました。被害者が警察に通報した直後、加害者の補佐官は行方をくらまします。そして13日になってソウルでメディアの前に姿を現したのでした。
事件の翌日、パク・クネ大統領はアメリカの議会で、朝鮮戦争をサポートしたアメリカに感謝すると演説をし、アメリカの議員から standing ovation (拍手喝采) を受けました。
さらに、日本の靖国神社問題や従軍慰安婦の問題を間接的に取り上げて、過去の戦争責任に真摯に向き合わない日本を名指しはしないものの批判をし、米国のメディアを通して世論の支持を取り付けるなど、巧みな外交で評価をあげました。
これは正に安倍政権に対して一本をとったことになり、日本の外交政策へのアメリカの不快感を確認することになりました。
実際、韓国は歴史認識で、いつまでもぎくしゃくする日本を外し、アメリカや中国との連携強化を模索しています。Seoul, Beijing in talks to set up Park’s visit (ソウルとペキンはパク大統領の訪中について調整をする) という記事が13日の同紙には掲載され、同大統領の積極的な外交姿勢をアピールしています。
そんな上り調子のパク・クネ大統領であるだけに、このみっともないスキャンダルには国民も唖然としたものでした。
さて、そんなパク・クネ政権下の韓国は、いま日本からの二つの影響に過敏に反応しています。
まずメディアが常に警戒しているのが最初の影響、つまり最近の円安による韓国製品の国際競争力の低下という問題です。
11日の Korean Herald の一面は、上記のセックススキャンダルに関する記事と日本の円安についての記事に二分されました。その記事によれば、韓国の大企業は円安に対応するための task-force team (問題解決のための特別チーム) を編成していると報道しています。
松下幸之助に学べと創業者のイ・ピョンチョルが社員を激励し、80年代後半にはソニーを追い越せと、当時としては不可能に見えた宣言をして25年。今や韓国のトップ企業として日本の家電メーカーを駆逐して世界に君臨するサムスン電子をはじめ、LG電子などの大企業が、予想に反した急激な円安と、それによる日本企業の再生に神経を尖らせているというわけです。
韓国の世論は、明らかにこの一年で変化しました。
まず政治の世界では、日本との関係の再構築への期待感が急激に冷却しています。もはや一朝一夕で日本のかたくなな歴史認識は変えられないと多くの人が失望した結果や、一部にあった日本への興味やあこがれも、同時に冷めてきているのです。
経済界からしてみても、安倍政権の為替誘導は意図的で、韓国を含む国際社会への脅威だという見方も多く、歴史認識と相まって安倍内閣への二重の警戒感となっています。
そこに飛び込んできた最新のニュース。それが橋下維新の会共同代表の慰安婦は戦争遂行には必要だったと解釈できる発言でした。
韓国は、日本からのこの二つ目の影響に怒りを通り越し、あきれています。同紙は橋下氏のことを Out spoken nationalist mayor (どんどんと発言をする国家主義の市長) として紹介し、彼の言動とそのインパクトを解説しています。
橋下市長の発言は、日本でも批判の対象となりました。しかし、外交的視点に立つと、こうした日本の政治家の不用意な発言が、韓国と中国との連携にさらにアメリカまでを加えた日本への「不信の輪」を造る触媒となっているのは事実です。
まして、米軍の司令官への橋下氏の将兵は風俗を利用すべきという発言は、キリスト教のモラルが文化の基調にあるアメリカの官民に対する日本のイメージの劣化へとつながるお粗末なもので、猪瀬都知事のアラブ系の人々への人種差別ともとれる発言と連動し、日本のイメージを決定的に降下させました。
韓国内での大統領補佐官の不始末、そして円安、さらには大局を見ずにかたくなに歴史認識の相違にこだわる日韓関係の中での橋下発言。韓国では、この3つの事件がなんとも不愉快なニュースとして話題になった一週間だったのです。