英語コミュニケーション講座・その10

文化背景の違いによる落とし穴


今回は、サンフランシスコからの原稿です。

サンフランシスコには、商談に来ています。
そこで今回は、アメリカ人の価値観に思いを馳せながら、英語でのコミュニケーションに必要な異文化の問題について、まとめてみます。

例えば、日本人の心の中には、好むと好まざるとに関わらず、古くからの伝統や、ものの考え方が刷り込まれています。
「遠慮」、「謙遜」などといった価値観は、長年にわたって、特に日本人には大きな影響を与えています。

では、アメリカ人の遺伝子に組み込まれているそうした価値観とは何でしょうか。彼らの祖先の多くは移民であり、開拓者です。自らの運と知恵に頼り、豊かな土地を求めて新大陸でのチャンスに飛びついた人たちです。しかも、彼らの祖先の多くは英語も話せず、貧困から抜け出そうと、ヨーロッパや中東、そしてアジアからやってきました。
全く背景の異なる人が集まって、生活を築こうとして社会をつくってきたことは、人々の精神構造に大きな影響を与えてきました。
例えば、もってまわった言い方をしていても、背景の異なるところからやってきた人には意図は通じません。何かをしなければならないときは、いろいろと準備や根回しをしたりすることもできず、まず活動しながら試行錯誤の中でお互いに理解が生まれ、ビジネスが成長しました。
従って、思っていることを直接率直に話すこと、自らの意思をちゃんと表現することは彼らにとっての大切な価値観となったのです。阿吽の呼吸は通用せず、相手の目を見てはっきりとロジックを主張し納得させなければ、物事は動かないのです。
また、何かビジネスでプロジェクトを進めるときも、決裁を早くして、まず取り組んでみながら調整を重ねてゆくスタイルが育まれたのです。

これは、遠慮や謙遜という価値観とは対照的です。
また、長年よく知り合った仲間と、春夏秋冬の営みを続ける農村社会に立脚した日本人は、お互いに阿吽の呼吸で意思が通じ、自らを強く主張する必要もありません。
さらに、日本人は前例のない新しいことに取り組むときは、まず全員のコンセンサスをとり、充分に理解し合い、準備を整えた上でなければ、なかなか前には進みません。ビジネスの組み立て方自体の発想がアメリカとは異なるのです。

さて、問題は、こうした価値観はみんなが心の中にもっていて、目にみえたり、きこえたりするものではないということです。目にみえたり、聞こえたりするのは、そうした価値観に支えられて喋った言葉や、行動のみです。

遠慮や謙遜を重んじる日本人が、アメリカ人の行動をみて、言葉を聞いたとき、押し付けがましく思えたり、横柄に感じることがあり、時には彼らは自分たちを見下しているのではと誤解したりする背景は、アメリカ人のそうした言葉や行動のみに接して、その心の中の価値観を理解していないことによることが多いのです。

逆もまた真なり。日本人が相手のことに気を使って遠慮し、自分のことをしっかりとアピールすることは、はしたないことだと思って謙遜したりした場合、その行動をみたアメリカ人は、曖昧で意思のはっきりしない、何か信用できないやつだなと日本人のことを誤解してしまいます。

ビジネスでは、どちらもビジネスを成功させるために話し合い、チームをつくります。すなわち、お互いに前向きな気持ちで仕事をするのです。
しかし、前向きであればあるほど、アメリカ人ははっきりとものを言い、日本人は相手に気遣って遠慮します。
良い意図が、ネガティブな誤解につながるメカニズム、リスクがここにあるのです。このリスクは、単にアメリカ人と日本人の間だけではなく、文化の違う人が集まったとき、どこにでも起こりうるリスクです。
しかし、このリスクを克服したとき、そのチームはそれぞれの文化の強いところを発揮して、単一文化の人の集まるチームより数倍のパワーを発揮することがあるのです。これが異文化での Synergy (シナジー) 効果です。
シナジーとはエネルギーが融合してより強いパワーを発揮することを意味する言葉です。

アメリカからみた日本はまだまだ不可解、時には扱いにくく何を考えているのかわからない人たちにみえるようです。これを解決して、シナジーを創造するために、言葉だけではなく、お互いの文化背景、行動様式を理解するコミュニケーション術が必要になるわけです。
これが異文化コミュニケーションなのです。

そうしたコミュニケーションができる人は、英語が堪能でそれができない人よりも何倍も、相手との信頼関係を構築することができるのです。

今回はお約束通り4日後にブログを公開できませんでした。
次回は、おそらく帰国直前になるでしょう。多分4日後に。

See you!

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