海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

相次ぐ銃乱射事件: 大統領選挙にも影響を与える銃規制の課題


【海外ニュース】

Gun-Control, Gun-Rights Groups Ready For Renewed Debate After Colorado Shooting
(ABC Channel 7)

銃規制派、銃容認派は共にコロラドでの乱射事件を受けてそれぞれの見解についての論議を再会する準備が整っている模様

【ニュース解説】

コロラド州デンバーの郊外、デンバー国際空港からもそう遠くないオーロラ市の映画館で20日におきた銃乱射事件は、12人が死亡、58人が負傷 (内10人が重体) というアメリカでも最悪の乱射事件となりました。ジェームス・イーガン・ホームズ容疑者 (24) は、神経科学 neuroscience で博士号 doctor degree を目指す、おとなしく優秀な学生だということです。彼はバットマンの新作を上映中の映画館の前方ドアから侵入、屋根に向かって発砲したあと、いきなり後方に歩きながら観客に向け乱射をはじめました。

銃による大量殺人事件 mass murder がおきる度に、アメリカ中で噴出する銃規制 Gun-Control の是非をめぐる議論。そもそも、アメリカでの銃規制はなぜ困難なのでしょうか。実は、このテーマはアメリカの憲法にも関連し、アメリカ人にとっての「人権と自由」という価値観にも関連する重大な問題なのです。まず、この問題を歴史的な側面から検証してみましょう。

アメリカは 1776年にイギリスから独立しました。重税に対して立ち上がった人々は、自らの立場を公にするために独立宣言を発表します。この独立宣言に記された内容は、そのまま後の合衆国憲法の概念へと踏襲されます。
さて、ここで大切なのが、独立宣言 Declaration of Independence に記された、政府が国民を抑圧するときは、そのような政府を倒すことは国民の当然の権利であるという一文です。これは、アメリカの独立が革命であるということを物語る一文です。この一文こそが、「銃を持つ権利」のルーツとなるのです。

当時、アメリカはイギリスの統治下にあり、独立戦争は完全な違法行為。従って、彼らは自らの法的な立場を正当化することに心血を注ぎます。例えば、武器を持つ権利に加え、政府が令状なしに家宅捜索を行うことを禁止し、犯罪を政府ではなく、地域の人々が公正に裁くための陪審員制度の必要性など、イギリスの圧政から自らを守るシステムの必要性を強く主張します。
また、ばらばらであった 13州を、独立という目標に向け、いかに結束させるかという点にも注力しました。
従って、独立が承認され、1788年に憲法を制定するときも、こうした市民の法的な権利を憲法に明文化すること、さらに 13州のそれぞれの立場を最大限に配慮し、州毎の自治を認めることは当時の指導者が最も強く配慮した事柄だったのです。そうした配慮は、憲法の中の修正条項として特別に記されることになります。それが「権利の章典」といわれる部分で、ここに武器を所持する権利がしっかりと記されているのです。

このことからお分かりのように、銃は開拓時代に身を守るために必要であったことから、今でも人々が銃への愛着を抱いているのではなく、アメリカという国の成り立ちと深く関わった、アメリカ人の精神的バックボーンの象徴として「武器の保持」という意識があるのです。すなわち、銃は個人の人権と自由を象徴する、ちょうど武士にとっての刀と同じアメリカ人であることの「価値観」として、捉えられているわけです。

もちろん、現在は、こうした考えがいかに古くさく、かつ現実に即さない危険なものであるかという議論が絶えず、銃を保持する権利を主張する人々 Gun-Rights Group と激しく対立しています。これは大統領選挙での重要な争点の一つでもあるのです。ちなみに、ニューヨークのように、場所によっては個人が許可なく銃を所持することを禁止しているところもあることは、ここに確認しておきましょう。

国民健康保険と銃規制の問題は、政府が個人の自由を規制し、肥大化することを畏れるアメリカ人にとっては同根のテーマ。イギリスという強大な国家に反発して独立したアメリカ人の遺伝子とも関わるテーマであると共和党などの保守派の人々は主張します。彼らの中には、今回のような凶暴な事件が起きればおきるほど、身を守るために逆に銃が必要であるというのです。

この課題を憲法解釈まで遡り、どう解決してゆくか。多発する悲惨な事件とは裏腹に、まだまだ道は通しというのがアメリカの現実なのです。

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