海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

日中問題の鍵を握るアメリカのスタンス


【海外ニュース】

Tensions between China and the United States and its Asian allies escalated on Monday as Beijing immediately criticized an announcement earlier in the day that the United States and Japan had reached a major agreement to deploy a second advanced missile-defense radar on Japanese territory.
(ニューヨークタイムズより)

北京は、アメリカと日本とが日本国内での早期警戒レーダーの2カ所目の設置について合意に達したことを、即座に非難。中国とアメリカとアジアの同盟国との緊張が月曜日に高まった。

【ニュース解説】

尖閣列島の領有権を巡り、日中の緊張が高まる中で、ニューヨークタイムズは、興味深い記事を掲載しました。
「アメリカ国内ではほとんど報道されていないよ。こちらは、選挙と中東での反米騒動で忙しいんだ」
アメリカの友人と電話で話したとき、今回の領土問題について、友人はそう語りました。確かに、この問題は海外では多くは報道されていません。そこに、メディア対応で世論を喚起できない日本の外交戦略の非力さが見えてきます。

そうした中で発表された、このニューヨークタイムズの記事からは、日本と中国との間に立って苦慮するアメリカの姿が見えてきます。日米安保条約 The Japan-U.S. Security Treaty によって日本はアメリカの同盟国となっているものの、普天間問題に加えオスプレイ配備の問題など、最近ぎくしゃくしたことが多く、日本の世論も米軍基地のプレゼンスについては一枚岩ではありません。

一方中国はアメリカにとって無視できない貿易相手国であると同時に政治的、軍事的ライバル。中国やロシアの中東問題などでのスタンスは、アメリカの外交方針に大きな影響を与えかねません。まして、今中東では大衆レベルでのアメリカ離れが顕著です。

そんなアメリカにとって、中国の次期政権の担い手とされる習近平氏の動向も気になります。習氏は、胡錦濤主席の前任者である江沢民氏の派閥である上海閥でありつつ、アメリカとは経済的、人的に太いパイプを持った人物なのです。
従って、アメリカは、この次期主席候補が対米外交にどのように舵をとってくるか、目下その見極めに懸命なのです。特に、上海閥と一線をおく胡錦濤氏が、自らの勢力を維持するために、退陣後軍部にどれだけ影響力を残すかにアメリカは注目します。同紙は、今回の日中関係の緊張が緩和されず、暴動にまで発展している背景には、a challenge to Mr. Xi and an effort to allow Mr. Hu to stay in control of the military. (軍部に影響力を残そうと狙う胡錦濤氏の習近平氏への挑戦) があるのではないかと分析。日本と緊張関係を造り、軍のコントロールを維持し、アメリカよりの習氏を牽制するもくろみだというわけです。

4号前に中国での幹部の失脚のニュースを取り上げたとき、私は、日本と中国の問題は多分に中国の内政と関係があり、そこの人脈やネットワークへの理解が不可欠だと解説しました。加えて、アメリカが中東の大衆運動に手を焼くように、中国の大衆運動がそれを仕掛けた政治的目論みを越えて暴走したとき、北京の中枢に大きな権力闘争が起こる可能性も否めないことを付け加えましょう。天安門事件のみならず、文化大革命もそのようにして拡大しました。

日本は今になって、基地問題などで揺れたアメリカとの関係正常化に懸命です。アメリカにとって、それはありがたいことですが、日本との関係に縛られ過ぎ、中国を本当に敵に回すことにも懸念が残ります。この記事から見えるのは、尖閣問題のまっただ中に、日本にレーダーを設置することに敏感に反応した中国に気苦労する、大統領選目前のアメリカの様子です。超大国はグローバルな駆け引きの中で地域の問題を判断します。アメリカも中国も例えば中東などでの一見日本とは無関係に見える動向なども考慮し、様々な駆け引きを行います。

日本にとって、中国は最大の貿易相手国。そこでの日本企業や日本製品へのボイコットや敬遠が進めば、経済への痛手は計り知れません。であればこそ、こうしたそれぞれの国の状況や事情を斟酌しながら、外交的に先手を打ってゆく器量が求められます。「中国は国内の権力闘争に忙しく、尖閣問題は大きくならない」と浅薄な情報を元にうそぶいた東京都副知事、国民感情を無責任に煽った都知事、新任大使の死去という不幸はあったものの、大使不在のまま中国やアメリカとの太いパイプを活用できない脆弱な政府。つけの支払いは甚大です。今は、日本政府にとって、本腰をいれた戦略が求められているのです。

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