海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

不倫と軍の最高機密。オバマ政権を脅かす、思わぬスキャンダル


【海外ニュース】

The improbable story – by turns tragic and silly – could have major consequences, unfolding at a critical time in the Afghan war effort and just as President Barack Obama was hoping for a smooth transition in his national security team.
(サンフランシスコ・クロニクル紙より)

悲劇でありかつ愚かなことに、バラック・オバマ大統領が、彼の国家機密に関するチームの円滑な引き継ぎを望んでいるものの、この予想もできなかった話が、重要な局面にあるアフガン戦争の今後にとんでもない影響を与えるかもしれない

【ニュース解説】

今週は、いろいろと興味深いニュースがあちこちでありましたが、その中からアメリカの政府高官の不倫疑惑について取り上げてみます。

英語で「不倫」というイメージにぴったりあう言葉はありません。あえて言えば、love affair でしょうか。しかし、この新聞では単刀直入に sex scandal という表現を用いています。

問題となったのは、CIA長官ペトレイアス氏 David Petraeus を辞任に追い込んだ不倫疑惑とその後の展開です。アフガニスタンやイラクでの戦闘に大きな功績のあったペトレイアス氏は、CIA というアメリカの軍事戦略などの最高機密を取り扱う組織を不倫疑惑で去らなければならなくなったのです。

スキャンダルの内容は、ペトレイアス氏が取材を受けていたジャーナリスト、ポーラ・ブロードウエル Paula Broadwell 女史と「不適切な関係」にあったというもの。彼女自身もともとテロ対策のプロで、FBI での仕事もしたことがあり、そうした職責を通してペトレイアス氏と親しくなったのです。

事件の発端は、そんなポーラ・ブロードウエルが、ジル・ケリー Jill Kelley というペトレイアス氏の友人で、同じく米軍に関わる人物と同氏との仲を疑って、別れるようにというメールをジル・ケリーに送ったことでした。

そのメールを脅迫と捉えたケリーは、FBI に相談。それを受けて FBI が調査している中で、ペトレイアス氏の不倫の実態があらわにされたというものです。ドロドロの物語ですね。

ところが、それだけでは収まりませんでした。調査の中で、今度は、正にペトレイアス氏の片腕として彼に仕え、その後アフガニスタン駐留米軍の最高指揮官になったジョン・アレン John Allen 氏とジル・ケリーとの関係を疑うメールのやり取りが表面化してきたのです。こうなると、複雑を通り超して、奇怪な事件と、アメリカのメディアは騒ぎ立てます。中東レバノンからアメリカに移住してきた移民の子供であるケリーと、FBI にもからんだブロードウエルという二人の女性に、アメリカの軍の最高機密を司る2人の高官が翻弄されたことになったのです。

アメリカでは、個人のスキャンダルが、その人のビジネスに影響を与えるかどうかは微妙です。以前クリントン元大統領が、モニカ・ルインスキーと不倫関係にあったとき、アメリカの世論は、大統領がしっかりと仕事をし、業績をあげている以上、個人のことは問題とはならないという見解が大半でした。それは、個人のスキャンダルを取り上げて政治生命まで脅かす日本の状況とは異なったものでした。

しかし、スキャンダルのターゲットが CIA 長官や軍の要職を担う司令官となれば話は違います。FBI が恐れたのは、もちろん愛人関係を通して国家の機密が漏洩したのではという疑惑でした。

今のところ、その疑惑を裏付けるものは発見されてはいません。
しかし、二期目に入り、国務長官や国防長官をはじめとした大物の人事の刷新を余儀なくされているオバマ大統領にとっては、これは頭の痛い問題です。
日本の政治家のように、揚げ足をとった「任命責任」などという奇怪な突き上げはないものの、渦中の二人が軍事機密の中枢を担う辣腕であったことは、大きな痛手です。下院を多数派である共和党に握られ、ねじれ状態が続く中、議会でこの問題がどのように取り上げられるかも未知数です。

critical time、すなわち重要な局面と、同紙がアフガニスタンの状況を指している背景は、テロや国内の混乱が収まらない中で、いかにアメリカ軍の撤兵を模索してゆくかという局面を意味しています。
なんとも皮肉なのは、そうした深刻で真剣な局面にあって、中枢となる人物の下半身の問題が取り上げられたこと。 アフガニスタン駐留軍の司令官アレン氏は、自身が以前 CIA 長官をつとめたこともある、パネッタ国防長官に、自分の潔白を伝えていますが、果たして FBI の調査がどのような結末になるか。今後が注目です。

そもそも、アメリカでは FBI と CIA とはライバルで、内部には意識的な対立もあります。あの 9.11 でのアルカイダのテロ行為を事前に封じ込めなかったとして、双方がお互いを批判したことは有名です。そして CIA では過去にスパイ事件で何度か機密が漏洩した経緯もあります。今回も、FBI は執拗な調査をしかけてくるのではないでしょうか。

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