海外ニュースの英語と文化背景・時事解説

極東の緊張に困惑するアメリカ


【海外ニュース】

South Korea Disputes North’s Dismissal of Armistice
(ニューヨークタイムズより)

韓国は北朝鮮の休戦協定破棄に反論

【ニュース解説】

北朝鮮が一方的に armistice 休戦協定を破棄してきたことに、韓国側が強く反発しているというのが、この記事の内容です。
朝鮮戦争は 1950年の6月にはじまり、53年の7月に終結しました。その間、一時現在の北朝鮮の勢力は韓国全土を掌握しかけます。しかし、アメリカの介入で今度は逆に北朝鮮軍を中国国境近くまで追いつめました。そこに参戦してきたのが中国でした。冷戦が熱い戦争になった瞬間です。
中国の参戦で北朝鮮軍は現在の北緯38度線あたりまで反撃し、そこで戦闘が膠着状態になります。その結果締結されたのが、今問題になっている休戦協定にほかなりません。

日本では、この休戦協定が北朝鮮によって反古にされたことは、法的にいえばそのまま朝鮮戦争当時の戦闘状態に状況が後退したことになるとよく評論されています。しかし、韓国は少なくとも、今回の北朝鮮の一方的な対応は国際法違反であるというスタンスを崩していません。つまり法的には戦闘状態には至っていないという立場を維持しているのです。

同紙では、South Korea said on Tuesday that North Korea cannot unilaterally nullify the 1953 Korean War cease-fire, calling the North’s war threats a psychological ploy to strengthen Kim Jong-un’s leadership at home and force Washington and South Korea to make concessions to the isolated country.
(韓国は、北朝鮮は一方的に1953年の休戦に関する協定を無効にすることはできないと火曜日に声明を発表。北の開戦の脅迫はキム・ジョンウン体制を強化し、ワシントンと韓国から孤立化を緩和するための譲歩を引き出す心理的策略だと言明)というふうに報道しています。

ここで韓国がとっている立場は、休戦協定は bilateral (両国間) の合意によるもので、双方の合意なく unilaterally (一方的) に破棄できるものではないという国際法の立場です。ちなみに、この文章の中にある nullify という言葉は、協定や契約などを無効にするという意味の動詞で、ビジネス上でもよく使用されます。

韓国にあって、北朝鮮関係の書籍をよく出版するハンヌル社の編集者は、私に今回の北朝鮮の行動は、単にアメリカや韓国だけではなく、中国にも向けられている点に注目すべきだと語ってくれます。
「どうも、キム・ジョンウンと中国の新体制の間に溝があり、北朝鮮をバックアップしていた中国の指導部との年賀の挨拶すらキム・ジョンウンは怠ってきたようだ」と、その人は語っています。

中国は伝統的に朝鮮半島への影響力を意識し、朝鮮半島に形成された歴代の政権は常に中国を親と認識しながら政権運営をしてきました。北朝鮮はたまたま共産主義というイデオロギーを同じくした中国に対して、この伝統的な追従関係を維持してきたわけですが、北朝鮮と中国がくしくも同じ時期に新体制となったとき、その関係の見直しを巡る綱引きが水面下で行われてきたのです。
実際、国連安保理の制裁決議に中国が協力したのも、そうした背景とリンクしています。

では、本当に後ろ盾がなくなった場合、北朝鮮はどのようになるのでしょうか。
ここがアメリカにとっても読み切れない外交の大きな課題であると、今度はサンフランシスコで出会ったジャーナリストが語っています。
アメリカは、中東問題に深く関わり、さらに財政の立て直しなどに懸命に取り組まなければならない現政権下で、極東が噴火することを極度に恐れています。
極東で緊張が高まれば、アメリカは韓国や日本との条約に従い、軍事的なサポートをせざるを得なくなり、それは多大な負担へとつながります。
しかも、東アジアは今や世界最大の経済圏であり、そこが混乱することの世界経済への影響も半端ではありません。
従って、アメリカにとっては、尖閣問題にしろ、北朝鮮問題にしろ、穏便に運びたいという本音があり、北朝鮮はそんな温度を察知して強硬姿勢にでているのではという見方が成り立つのです。

尖閣問題は、アメリカが第二次世界大戦直後に尖閣列島を含む海域を沖縄として管理したことが、その発端になっています。その結果沖縄の施政権がアメリカから日本に返還されたときに、尖閣列島もパッケージとなって日本側に引き渡されたのです。そこには、共産化した中国との力関係を意識するアメリカの思惑があったことは間違いありません。
38度線の休戦協定も、アメリカが介入し、中国や旧ソ連との綱引きの中で固定されました。

このように極東の緊張は、冷戦時の超大国の意図がそのまま現在に陰を落とした結果であるといっても過言ではありません。
それだけに、最終的にはアメリカと北朝鮮、アメリカと中国という図式の中で韓国や日本の利益が左右されることになるというのも、歴史の皮肉なのです。
ただ、北朝鮮は軍部の強行派が暴走した場合、休戦協定の破棄に続いた次の行動へと走らないという保証は何もありません。
先に紹介したハンヌル出版のあるパジュという街からは、北朝鮮の山々を眺望できます。そんな至近距離での緊張は、韓国にとっては正に恐怖以外の何ものでもないはずです。

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