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アメリカ特殊部隊の電撃作戦の背景、そして今後の課題は

10月27日、米ホワイトハウスで「イスラム国」の指導者バグダディ容疑者について話すトランプ大統領(ロイター=共同)

“Last night, the United States brought the world’s No. 1 terrorist leader to justice,”Mr. Trump said in an unusual morning nationally televised address from the White House. “Abu Bakr al-Baghdadi is dead.”

(「昨夜、アメリカは世界最強のテロリストに鉄槌を下した」トランプ大統領はホワイトハウスから、異例の朝の全米向けテレビ中継でそのように語った。「アブー・バクル・アル=バグダディはすでに死んでいる」と)
― New York Timesより

このタイミングで作戦実行した背景とは

 つい先日、トランプ大統領が、アメリカの特殊部隊がシリア北部に潜伏していたISのリーダー、バグダディ容疑者を追い詰め、彼が3人の息子を道連れに自殺を遂げた、と発表したニュースが飛び込んできました。
 このニュースは瞬く間に世界を駆け巡りました。
 ISは、長年にわたってイラクやシリアでの混乱を利用して活動領域を広げ、インターネットなどを駆使した今までにない動員力とネットワーク力をもって、世界中でテロ活動を試みてきた組織です。
 拘束したジャーナリストを斬首したり、対立する部族や宗派の人々を処刑したりレイプしたりするなど、その残虐な行為は、世界の国々の利害を超えた共通の脅威とされました。
 
 こうした背景から、アメリカの特殊部隊は、通常は微妙な国際関係に揺れているシリアやロシアとも情報を交換し、シリアの領土に部隊を送り込んで作戦を実行したことになります。ある意味で、国際的な軍事ネットワークなどのサポートを土台にした作戦だったと、トランプ大統領が強調しているようです。そして、その協力関係の中にはクルド人組織も含まれていたと言われています。
 
 ただ、ここで一つ疑問がわいてきます。
 なぜ、このタイミングでアメリカは特殊部隊を送り込んだのでしょうか。アメリカはつい最近、シリアのクルド人支配地域からの全面撤退を進めましたYPGと呼ばれるクルド人勢力は、アメリカと共同でISの掃討活動を実施してきた人々です。そんなクルド人は国家を持たない民族として、トルコなどでの差別に直面していました。アメリカ軍の撤退を受けて、トルコはシリアのクルド人居住地域への攻撃を始め、このことがシリアとシリアを支援するロシアとの新たな緊張につながるのではないかと懸念されました。実際、攻撃を受けた市民の多くが死傷したことで、アメリカはクルド人を利用するだけ利用して見捨てたのだという批判に晒されました。
 さらに、こうしたアメリカのプレゼンスがなくなった中東に、権力の空白地帯が生まれ、そこにISが進出して新たな展開をするのではという脅威も強く指摘されていたのです。
 
 今回、シリア領からの米軍撤退によるこうした懸念にピタリと蓋をする絶妙なタイミングで、ISの指導者が殺害されたのです。人々に恐怖を与える指導者がいなくなったことは、決して悪いことではありません。しかし、今回の作戦行動が、ここに記した様々な懸念を払拭するために最適のタイミングで実施されたことから、そこにはトランプ政権による世界からの批判をかわすためのしたたかな宣伝工作の意図があったのではと思われます。
 

PC: ASSOCIATED PRESS

バグダディ死亡の余波と懸念される報復

 中東の情勢は極めて複雑で、安易に評論することはできません。イスラム教の様々な宗派や部族、さらにはイスラム教と対立する人々との利害など、中東のもつれをうまく解ける人は日本のみならず世界でも数少ないのではないでしょうか。それだけに、今回のあまりにもすっきりとした作戦の実行と、その成功の次に起こることへの不安は隠せないのです。
 まず、ISの創始者とされるバグダディ容疑者を暗殺したことで、世界に拡散されたISのネットワークが崩壊するとは思えません。むしろ西欧への反感を刺激し、報復などといったさらなる活動が世界で展開されない保証はどこにもありません。もちろん、日本も例外ではないのです。
 
 例えば、中国を例にとりましょう。
 中国ではウイグル族などイスラム教徒への不平等な扱いへの不満が、中国政府を震撼させるテロへつながるのではという脅威を抱いています。そこで、彼らの政治活動への激しい弾圧と迫害が行われているといわれ、西欧諸国も彼らへの人権侵害を事あるごとに指摘してきました。そして、中国政府の弾圧でさらに追い詰められた人々が過激な行動に出るとき、ISの組織で訓練を受けていたことは周知の事実なのです。
 
 さらに、アメリカがもともと世界戦略のために利用してきた人々が、逆に反米テロの指導者へとなった事実も忘れてはなりません。9.11世界貿易センターなどを破壊したアルカイダの指導者だったオサマ・ビン・ラディンも、元はといえばアメリカのイラン戦略などの折にアメリカに協力した人物だったのです。
 そして、彼らの影響を受け、イラク戦争の折に拘束されたアメリカの収容所の中で、世界へのテロの構想を練りネットワークを始めたのが、今回殺害されたバグダディ容疑者だったのです。
 
 物事を善と悪の二つの色で簡単に評価し、その時の必要性に応じて自らの利益のためにそうした人々を利用してきた欧米への反感は、中東では特に根深いものがあるのです。そして、インターネットやSNSというツールを使って、世界中でこうした反感を持った人々をバーチャルにネットワークしたことが、ISのようなモンスターを生み出した原因となったのです。
 

10月21日、シリア北東部カミシュリで、米軍の車両にジャガイモを投げる住民ら(ANHA・AP=共同)

目的はテロの撲滅か、再選のための対策か

 トランプ大統領が自らの手柄として、彼への支持率を上げるために今回の行動を指示したことは事実でしょう。もちろん、それによってテロ活動の一翼が粉砕されたことは評価しなければなりません。しかし、大統領がその成果のみを誇示し、テロが起きる中東の複雑な背景に蓋をしたとき、そのツケはさらに大きなものとなって地球上に拡散するはずです。テロの撲滅をポピュリズムとつなげることのリスクを、我々はこれからじっくりと考えるべきなのです。
 
 とはいえ、クルド人支配地域からの米軍撤退への批判をかわすための戦略としては、今回のタイミング良い判断がトランプ大統領への追い風となったことは否めない事実でしょう。
 

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ワシントンでの国際会議の裏側を垣間見て

“I have just authorized a doubling of Tariffs on Steel and Aluminum with respect to Turkey as their currency, the Turkish Lira, slides rapidly downward against our very strong Dollar!”

「私はトルコからの鉄鋼、アルミニウムの輸入に対してトルコリラを基軸に関税を2倍にした。これで我々の強力なドルの前に、リラは価値が下がってゆくだろう!」
トランプ大統領のtwitter 2018年8月10日付より

人々の思惑・情報・利害が渦巻く街、ワシントン

 先月末から今月にかけて、アメリカのオンライン英語検定試験「iTEP」を主催するiTEP International社(iTEPは留学や英語でのビジネス能力試験等、様々な用途に使用される試験を運営する)の世界大会に出席しました。今年はワシントンD.C.で開催され、久しぶりのアメリカの首都への訪問となりました。
 
 会議では私を含め、世界中でこのテストを取り扱う国の会社の代表が、自らの地域での販売活動報告を行います。
 その中に、トルコのディストリビューター(Distributor=販売代理店)のサラーという経営者がいました。彼の会社はトルコの格安航空会社などとのコネクションが強く、売り上げを急速に伸ばしていることで注目されているのです。しかし、昨年は彼にとって大変な年でした。アメリカドルに対してトルコの通貨リラが大きく暴落(devaluation)したのです。アメリカとの政治的緊張、イスラム色の強いエルドアン大統領の強権政治に対する警戒感などがその原因でした。
 サラーは、その逆風の中でiTEP Internationalと交渉し、支払いを調整しながら、現地での強いコネクションをフル稼働させてビジネス英語能力テストの販売を伸ばしたのです。この努力と成果には、会場の人々も賞賛の拍手を送りました。
 
 彼はクルド系トルコ人です。
 クルド人といえば、イラクやトルコに居住し、イスラム教徒ではありながら、その強い民族意識からしばしば迫害や差別の対象になってきたことはよく知られています。そして、トルコ政府はクルド人の民族運動をテロ行為として抑圧します。対してアメリカは、イラク戦争などを通してクルド人に武器を供与するなど支援を続けていました。以来、クルド人問題は、アメリカとトルコとの溝を深めるいくつかの重要な課題の一つとなったのです。
 
 ワシントンにある、デュポンサークル(Dupont Circle)という大きな交差点にクレイマーブックス & アフターワーズ(Kramerbooks & Afterwords Café)というブックカフェがあり、私は同地を訪れるたびにそこを訪問します。Facebookにもそこで出会った一つの書籍をアップしました。同店は今でもワシントンの政界の大物も立ち寄る有名な書店で、併設されているカフェやバーには、ロビーイングを行う人々も多く集います。
 この書店と同様に、例えば有名ホテルの会員専用のラウンジなど、ワシントンD.C.では様々な場所がそうした政治的な打ち合わせに使用されています。ワシントンD.C.で活動する人々は、政治家、企業家、そしてジャーナリストや評論家など、多くが何らかの政治的利害の糸で繋がっていると言われているほど、ロビーイングや情報収集の場所がこの街のあちこちにあるのです。
 
 実は、そんなロビー団体の中でも有名なのが、トルコにあってクルド人と同居してきたアルメニア系ロビーイストの団体なのです。さて、サリーを見舞った苦境を説明するために、ここでアルメニア人について解説します。
 

トルコとアメリカの対立に見える歴史的背景と民族的確執

 アララト山はトルコの東の端、隣国アルメニア共和国にも近い高地にそびえる名山です。雪をかぶる壮麗な山は、その昔『旧約聖書』に書かれた「ノアの方舟」が漂着した場所ではないかとも言われています。
 そんな場所がアルメニア系アメリカ人の故郷です。そして、この地域にはクルド人も多く居住しています。
 アルメニアの人々の多くは、アルメニア使徒教会(Armenian Apostolic Church)というキリスト教を信奉しています。このルーツは、アルメニア人がローマ帝国パルティアやその後のササン朝ペルシアといった東方の強国に挟まれながらかろうじて独立を保っていた、キリストが活躍していた時代にさかのぼります。紀元301年に、アルメニア王国はキリスト教を国教にします。それは、世界で初めての出来事でした。その後、ローマ帝国でもキリスト教が国教となり、何度かの宗教会議を経て、キリスト教がローマの国教として体裁を整えてゆく中で、アルメニア使徒教会はローマには従わず、独自の信仰を維持しました。
 
 その後、トルコ系の勢力が拡大し、イスラム教が浸透する中で、アルメニア人もそんな歴史の波に飲み込まれます。しかし、彼らは当時のイスラム教最大の国家トルコの支配下にあっても、自らの文化と宗教を維持します。特にオスマン帝国末期には、民族運動による軋轢から強制移住や虐殺といった弾圧を受け第一次世界大戦の時期には多くのアルメニア人がトルコを追われます。その多くが移民としてアメリカに流れてきたのです。
 現在、アメリカのアルメニア系の人々は特にカリフォルニアに多く、経済的にもしっかりとした基盤を持っていると言われています。そんなアルメニア人にとって、故郷のシンボルとして慕われているのがアララト山なのです。
 
 そんな歴史的背景もあって、アメリカに居住するアルメニア系アメリカ人はトルコに強い警戒感を抱いています。アメリカ・アルメニアン会議(Armenian Assembly of America)などを組織し、トルコへの経済制裁(Economic sanction)を求めるロビー団体として活動しています。
 実は、彼らのロビー活動はイスラエルの活動と比較されるほど強力で、アメリカの中でも最も強い移民団体の一つとして注目されているのです。
 
 実際、トルコへのアメリカ政府の制裁は、アメリカのアラブ社会への警戒感と、アメリカの保守系政権が伝統的に維持しているイスラエル支援とは無縁ではなく、トルコのエルドアン大統領が、イスラム色の政策を強め、クルド人問題などを通して反米色を強めると、両国の関係が一触即発の緊張関係へと悪化してしまったのです。両国ともお互いの輸入品への関税(tariff)を引き上げ、経済戦争にも突入しています。それが昨年のリラ暴落の直接的な原因でした。クルド人とその隣人アルメニア人、そしてイスラム教国トルコとトランプ政権の利害と確執が、100年以上くすぶってきた移民問題を発火させたのです。アメリカの政策変更の背景にあるこうした複雑な状況は、なかなか日本には報道されません。
 

ワシントンを制する者が世界の政治経済を制する

 そもそもトルコは北大西洋条約機構(NATO)の重要な加盟国で、中東の大国です。伝統的にロシアの南下政策に危機感を持つトルコは、アメリカの友好国だったのです。
 我々は、ともすればアメリカと中国との経済戦争に目を向けるあまり、そんなトルコの最近の急激なアメリカ離れに対して鈍感です。しかし、中東やヨーロッパでは、これは大きな政治問題であり、経済問題となっているのです。今回、第二次世界大戦でのアメリカを中心とした対独戦線でのノルマンディー上陸作戦75年を記念した式典に集まった、トランプ大統領やイギリスなどの関係者、今後開催されるG20に集まる首脳の頭には、トルコの課題が渦巻いているはずです。
 
 クルド系の経営者サラーが、そんなアメリカとトルコとの経済戦争のあおりを受け、アメリカの商品の販売に苦戦し、それを必死で乗り越えようとアメリカの政治の中心であるワシントンD.C.での国際会議にやって来ているのです。
 そして、ワシントンでの人々のネットワークの糸をうまくたぐり利用する者が、世界での外交においてアドバンテージを取れるわけです。
 
 クレイマーブックスは早朝から深夜まで営業しています。そして、アメリカ外交の蜘蛛の糸に関係する人々にも利用されながら、書店経営斜陽の今にあっても、しっかりと経営を続けているのです。
 

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英英辞典の説明文は質が高く、英文のお手本として最適です。また、オムレツの作り方やゴルフのルール、アインシュタインの相対性理論まで英語で説明されています。そんな英英辞典を利用した英語学習法を紹介します。すでに知っている英単語を、辞典を引く前に自分で定義を考えてみて、辞典の定義をネイティブスピーカーの模範解答として答え合わせをしたり、国家・出来事・人物など、幅広い分野の語彙や表現をインプットして、英会話・英作文の力をつける活用法を解説します。

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