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中間選挙を前に分断されるアメリカ社会

“As President Trump and his allies have waged a fear-based campaign to drive Republican voters to the polls, far right communities have parsed his statements. Looking for hints of their influence.”

トランプ大統領が、共和党への投票につなげるために恐怖心を煽るキャンペーンを進めてゆくなか、極右のコミュニティは大統領の発言をいかに利用して自らの影響力へつなげようかと策を練っている。
(New York Timesより)

中間選挙を直前に控えたアメリカ。その状況を理解するために、ここに一つの議論のサンプルを紹介します。
 
まず、一人の人が発言をはじめます。
彼の名前はロバート。彼はトランプ大統領を支持する典型的な人物です。年齢は50代になったばかりの男性で、元工場労働者。妻は地元の会計事務所で長年、会計士のアシスタントとして働いてきました。二人が住んでいるのは、アメリカの中央部にあるミズーリ州のとある小さな町です。

「我々は、週末には教会に集まり、家族を大切にし、勤勉に働く。この教会に集まるのはみんな、そんな仲間だよ。そんな伝統が崩れてゆく。外国から文化も価値も共有できないような連中がきて、我々の生活の中に入り込んでくる。私に言わせれば、今そうした連中によって、我々が培ってきたアメリカ社会が蝕まれているように思えてならないんだよ」

 
この発言に対して、一人の女性が反論します。彼女はシェイリーという名前で、サンフランシスコに住み、現地の大学の図書館に勤務。夫はシリコンバレーのハイテクベンチャーで、マネージャーとして勤務しています。

「あなた方だって、移民の子孫じゃなかったんですか?アメリカは多様な移民が集まることで、知恵も集まり、アメリカならではの平等な価値観が育まれているんですよ。それを閉ざしてしまえば、アメリカはアメリカじゃなくなるし、何をいっても今まで何年もかかって培われてきた、人権や自由を尊重する社会が壊されてしまうと思うんですが」

 
ロバートは、彼女のこの発言に即座に反論します。

「それじゃあ、我々の生活はどうなんだい。私が勤めていた工場は、海外の安い労働力に押されて閉鎖されてしまった。自分たちの生活を守ろうと思っても無理だよ、これでは。しかもそんな国からの移民まで受け入れるって、どういうことだい。我々は自分たちの地域社会を守りたいんだよ」

 

「今、サンフランシスコをみればわかるけど、ここには世界中の人が集まっている。そして、実際に世界中の経済は繋がっているんですよ。あなたの工場が閉鎖されたのは気の毒だけど、資本主義の世の中は、知恵や工夫のある企業が勝ち抜いてゆくのは当たり前のことでしょ。今、アップルグーグルといった世界を牽引している企業は、そんなアメリカ社会で成長した企業なのです。しかも、そこには世界中から優秀な人が集まってくる。肌の色も、宗教も、そして風俗習慣も異なる人々が集まって、我々と一緒になって世界中で販売できる競争力のある商品を作ろうとしている。そのためにも、世界に開かれた社会こそが、これから必要とされているんじゃないんですか」

 
ロバートは、シェイリーの一言一言が気に入らないようです。

「うんざりだよ。グーグルにしろ、アップルにしろ、もっとアメリカ人を雇用するべきだよ。そして、アメリカの企業から部品を買うべきだ。国家が自分の国の利益を考えて、何がいけないんだろう。海外のものには関税をかけ、自分の国の産業を守ろうとするのは当然じゃないか。今の大企業には、そうしたモラルはまったくないよ。アメリカを第一に考えてこそ、我々の生活が守られるはずだと思わないのかい。愛国心がないんだね。君たちには、あの伝統的なキリスト教徒としての家族意識やコミュニティ意識が欠如しているんだよ。それは、あの耳にタコができるほど聞き飽きた、グローバルというまやかしの言葉を使い続ける大企業の連中にもいえることだ。アメリカは元々、偉大な国家だった。でも、君たちによって汚された。アメリカは世界一の超大国だよ。それは、我々のようにアメリカ人としての伝統を守ってきた仲間が創ってきた国なのさ」

 

「一体いつの時代のことを言っているんですか。例えば、アメリカだけで、全ての部品が賄えて、衣食住に必要なものが調達できるとでも思っているのですか。アメリカが他国に関税をかければ、それはあなたが買い物をするときの物価に跳ね返ってくる。それって単純な論理じゃないですか」

 
ロバートは、彼女の話を途中で止めます。

「まてよ。我々だって、世界のどこの連中より素晴らしいものを作れるよ。中国でも日本でも、自分たちだけに都合のいい規制に守られて、安い物をこちらに送り込んでくる。アメリカ人は寛容だったのさ。お人好しといってもいいほどにね。メキシコなんて、自分の国の国民を食べさせてゆけない責任を、こちらに負わせているじゃないか。こんなことをしていたから、あのイスラム教徒の悪魔たちが、セプテンバー11のようなことまで起こしてしまった。我々アメリカ人は、そんな外国の影響から独立して、実直で誠実な暮らしに戻るべきだ。昔のように勤勉に働いて、しっかりと我々のために我々でものを作るんだ」

 
シェイリーはうんざりしたような顔をして、ロバートの話を遮ります。

「あなたが移民を排斥して、アメリカが閉ざされた国家になれば、それこそ、アメリカは偉大ではなくなるのよ。寛容の精神もなく、昔のように他所からきた人を差別する社会に逆戻りすれば、アメリカ社会そのものが萎縮して、経済的にも貧困になるはず。しかも、キリスト教徒の伝統っていうけど、信教の自由は社会の基本ですよ。あなた方だって、祖先はプロテスタントとし迫害を受け、宗教の自由を求めて、アメリカにやってきたのでしょ。そのことをお忘れなの?」

 
今、アメリカはこの二人のように、全く相容れない立場と考え方に分断されているのです。それは、過去にはなかったような敵愾心までお互いに対して抱いています。
150年以上前に、アメリカは南北に分断され南北戦争を戦いました。今は、そうした境界線が人々の心の中に築かれて、新たな分断を生み出しています。
人々が最も危機感を抱いているのは、トランプ大統領を支持する人と、そうでない人との間に、こうした全く妥協を許さない分断が起きていることなのです。
 

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