【海外ニュース】
President Park Geun-hye said Monday the government should be ready for any possibilities in the wake of last week’s execution of North Korea’s No. 2 man, Jang Song-thaek, the uncle of leader Kim Jong-un, including provocative actions along land and sea borders.
(Korea Times 紙より)パク・クネ大統領は、先週行われた北朝鮮のナンバー2にあたり、キム・ジョンウンの叔父であるチャン・ソンテク氏の処刑に接し、政府は陸海双方での挑発行為など、あらゆる情勢の変化に対応できるようにするべきだと月曜日に言明
【ニュース解説】
北朝鮮問題が年の瀬に大きく取り上げられました。北朝鮮のナンバー2であったチャン・ソンテク氏の粛清について、アメリカでは副報道官 Deputy Spokesperson のハーフ氏が、If confirmed, this is another example of the extreme brutality of the North Korean regime. (もしこれが本当であれば、北朝鮮がいかに残虐な体制下にあるかということを示す事例といえます) と処刑のニュースに即応したコメントをだしています。
当の北朝鮮では、チャン・ソンテク氏を裏切り者 traitor とし、国家への反逆 treason であると厳しく弾劾しています。そして、韓国政府は、強い緊張感をもって、この事態を注視していることが、この Korean Times の記事の冒頭からも読み取れます。
では、実際今回の事件の背景に何があったか、私も早速、韓国の専門家に話を聞きました。その中で、ある人が「元々チャン氏側にいた人物の中で、今回の処刑劇の前後に誰が連座する被害を被らなかったかを見極めれば、その人物こそが事件の鍵をにぎっているのです」言ったことが印象に残ります。
それは、チ・ジェリョン (池在竜) 氏です。彼は現在北朝鮮の中国大使で、先週執り行われたネルソン・マンデラ氏の葬儀にも参列した人物です。
チ・ジェリョン氏は、処刑されたチャン・ソンテクの側近ともいわれた親中派です。すなわち、この人の裏切りがなければ、チャン・ソンテク氏の失脚劇はおこらなかったろうというのがその人の見立てだったのです。
さらに、チ・ジェリョン大使と、チャン・ソンテクとの関係の向こうには、誰がいたか。そこで浮上するのが、北朝鮮の最高権力者キム・ジョンウンの異母兄にあたるキム・ジョンナンなのです。
キム・ジョンナンは、彼の父親で北朝鮮の最高指導者であったキム・ジョンイルと、ソン・ヘリムとの間に生まれ、その生い立ちの事情から後継者には適さないと思われていた人物です。というのも、キム・ジョンイルとソン・ヘリムの結婚は周囲に反対され、ソン・ヘリムのその後の足跡も不明瞭なのです。
しかし、ジョンナンは海外経験も豊富で、北朝鮮に求められていた解放改革を指導できる人物として期待もされていました。
しかし、彼は2001年に、東京に東京ディズニーランドを見学するという口実で密入国したところを拘束され、国外退去となってしまいます。
不幸なのは、日本の国外退去処分がマスコミに大きく報道され、敵対国からそうした処分を受けたことに、父親のキム・ジョンイルが激怒したことです。それでキム・ジョンナムの後継者への芽は摘まれてしまったのでした。
しかし、キム・ジョンウンと今回処刑されたチャン・ソンテクとが対立するようになると、チャン氏はキム・ジョンウンの強権政治を脅威と捉えます。そして、北朝鮮の先行きに強い危機感を覚えたはずです。そこで、チャン・ソンテクとその配下は、キム・ジョンウンを排除し、マカオで静かに暮らすキム・ジョンナムを擁立しようと策謀したのではと思われるのです。より中国との関係を通し、北朝鮮を通常の国家に変革させようと目論んでいたチャン・ソンテクが、似た考えを持つキム・ジョンナムを再評価したのでしょう。
しかも、その策謀は、中朝関係へのビジョンの見えないキム・ジョンウンへの対応に苦慮していた中国政府にとっても、ありがたいことだったのです。
しかし、事は重大です。最終段階で策謀に加担していたチ・ジェリョン中国大使が、自らの保身のために、計画をキム・ジョンウン側にリークします。それを受けてキム・ジョンウンの取り巻きが、その策謀を見事に封じ込めたというのが今回の真相だったのではと、韓国の専門家は語ってくれました。
もちろん、これは憶測に過ぎません。しかし、キム・ジョンナムは長い間、中国に保護された状態でした。指導者になったキム・ジョンウンにとっては、それも不快であったはずです。
従って、今回の処刑劇は、中朝関係に微妙な陰を落としたはずです。これを埋め合わせるために北朝鮮がどう動くか。チ・ジェリョン氏の今後の動向を注視しなければならないことは、いうまでもありません。
北朝鮮問題は、不可解な内情が山積する中で、常に様々な憶測が飛び交います。
しかし、今回の事件が、もしこうしたキム一家の内紛に乗じたものであったとするならば、朝鮮民主主義人民共和国という国名とは裏腹に、「大朝鮮帝国」の皇族の後継者問題が尾を引いたのだと考えれば、様々な辻褄があってくるのではないでしょうか。