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人類の築く分断の「壁」がもたらすもの(中東問題その2)

【海外ニュース】

Israeli PM defends conduct of Gaza war
(USA Today より)

イスラエルの首相がガザ侵攻を弁明

【ニュース解説】

エルサレムはイスラム教、キリスト教各派、ユダヤ教が混在する古都。
高台から遠くをみると、新造の万里の長城かと思えるユダヤ系とパレスチナ系の人々を分断する「壁」が見渡せます。そんな旧市街にあるダマスカスゲートという城門に、パレスチナ人のタクシーの運転手が集まる一角があります。
そこで、アラブ系の運転手を捕まえ、ガザと共にパレスチナ人の自治が許されたヨルダン川西岸 West Bank、ジェリコ Jericho からさらに南下してヘブロン Hebron という街に行きました。

Hebron はイスラエルとパレスチナに分断され、街と周辺にも沢山の「分断の壁」が民族を分けています。特にパレスチナ人は、壁のために知人の訪問や、必需品の買い物にも大変な遠回りを強いられます。
中心にある古く大きな建物は、半分がユダヤ教徒、残りがイスラム教徒の祈りの場。中にも壁があるのです。コーランを読む声が拡声器から流れるなか、前の広場は重装備のイスラエル軍兵士が四六時中警備に当たっています。

二重の鉄のゲート

パレスチナ人居住区は、そんな広場の脇の陰惨な二重の鉄のゲートを潜った中の薄暗い路地に沿って広がっていました。パレスチナ人の運転手と共にしか入れない地区。その薄暗い路地の頭上には黒いネットが張ってあります。ネットの上に散乱するゴミ。
路地の頭上のネット
「上の陽のあたる場所にイスラエル人の家が並んでいる。あそこから人がゴミをこちらに捨てるんだよ」
乾いた土色の建物が青空の下に並んでいる様子が、塹壕のような路地から見えています。

不毛の地ガザも、同様にイスラエルに囲まれています。出入りは自由にできず、人々は食料を調達し、仕事するために国境を越えなければなりません。それが厳しく制限されると、地下トンネルを掘って密入国です。イスラエル側はそこからハマスなどの兵士が自爆テロとして潜入すると非難します。
それは一部事実でしょう。追い詰められた人々が過激になり、イスラエルに向けて攻撃をします。そのトンネルの入り口が一般市民の住むところにあり、武器を学校や市場に隠しているため、イスラエル軍はそこを砲撃し、子供や老人が犠牲になるのです。
そして、Netanyahu defended his country’s conduct of the fighting as “justified” and “proportional”.(イスラエルのナタニエフ首相は、同国の戦闘行為は正当で、容認できる)と主張します。ここにある proportional とは「相手の行為に対して相応のことをする」という、報復を正当化する極めて明快な表現です。こうしてガザでの紛争は、新たな憎しみの連鎖を産み出します。

Hebron の路地や周辺の壁をみたとき、分断の現実を実感します。憎しみ以上に、生きてゆくことへの不安がそこにあります。実際 Hebron でもガザ地区と同じ紛争が起こり、今も国連の管理下で不安定な平和を保っているのです。
パレスチナの人々はよく話し、人懐っこい。彼らは外国人の訪問者となるとお茶でも飲んでゆけと笑顔で誘います。その笑顔が心に残ります。

今、アメリカ西海岸にいます。昨日シリコンバレーで友人と車に乗っていると、彼のところにある大学のオウナーからメールが届きました。
「やれやれ」
彼はため息をつきます。
「また、長いメールだよ。この理事長、俺のお客だけど、なんといってもイスラエルの強烈な支持者で、今回のガザ侵攻を進めたナタニエフを擁護している。こんな政治的なメールはいやだね」そう、イスラエル系の理事長の発信するニュースレターが届いたのです。

世界がガザの問題に注目する理由の一つは、このようにユダヤ系もアラブ系も移民となって、アメリカや世界各地に拡散しているから。それは、両者とも数百年に渡る苦難の歴史を経ている証拠でもあるのです。そんな人々の論戦が、アメリカの国内でも火花を散らしていることは、人類の歴史の矛盾の複雑な推移がゆえといえましょう。

パレスチナ問題は、テロ対策、石油の利権とも絡み、中東各地の政治問題の原点です。とはいえ、人と人とが対立するために、そこに壁を造り、人を追い込み閉鎖することは愚かなことです。万里の長城などにはじまり、近年ではナチスドイツがユダヤ人を閉じ込めたゲットーの壁、その後東西を分断したベルリンの壁。そして、今イスラエルとパレスチナを複雑に分断する無数の壁。

対話や心の交流を拒絶する「壁」がある限り、パレスチナ問題は続くのです。

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