【海外ニュース】
Germany Sets Gender Quota in Boardrooms
(ニューヨークタイムズより)ドイツはボードメンバーの性別の割当を開始
【ニュース解説】
面白いニュースです。
ドイツが女性の社会進出を促進させるために、企業のボードメンバー (取締役) の人数の 30パーセント以上を女性とする法律を可決したのです。
実は、この手の法律はヨーロッパでは目新しいものではありません。
ノルウエーがその先駆けとなり、スペイン、フランス、イタリアなど、ヨーロッパの主要国の殆どが、これと似た法律を設定しています。
また、イギリスでは 30%クラブというビジネスのリーダー達のクラブがあり、そのクラブのメンバーが軸となり、会社の中枢への女性の進出を積極的に推進しています。現在、このクラブはアメリカなど諸外国にも拡大しているのです。
ところで、このニュースが流れたとき、新しいアファーマティブ・アクション Affirmative Action だと顔をしかめた人もいたかもしれません。
Affirmative Action とは、アメリカなどで、元々差別の対象となっていたために社会進出が遅れたマイノリティの人々を、優先的に公共機関などの職員に採用するために制定された法律です。しかし、例えば、黒人差別の対象となっていたアフリカ系アメリカ人は、元々差別の対象ではなかった白人系の人々より採用枠が多く、就職に有利であることから、それは逆差別で機会均等の原則に反するのではという議論が根強くあったのです。
しかし、今回の法案は、驚くほど反論も少なく可決されたといいます。しかも、反対意見の多くは 30%という数が少ないことで反対していたのです。平等の原則を根づかせ、より公平で民主的な社会を造るためには、法律による規制や指導も時には必要だというわけです。
これによって、ドイツの多くの企業は、来年までに会社の管理体制に大きなメスをいれなければならなくなりました。女性をボードメンバーに進出させるためには、昇進や昇給、さらに採用にいたるまで、様々な改革が付随してくるはずです。
さらに、ヨーロッパ経済を牽引し、国際企業も多くあるドイツでのこの改革は、海外にも大きな波紋 repercussions となって広がるはずです。
For Germans, the law is the greatest contribution to gender equality since women got the vote in Germany in 1918. (ドイツ人にとって、1918年に、女性に参政権が与えられて以来、性の上での平等を目指した最も画期的な一幕だ) と政府関係者は語っています。
現在、ドイツでは主要企業のボードメンバーに女性の占める割合は平均20%前後といいます。これは、ヨーロッパの主要国の中では決して高い数字ではありません。また、一見平等や自由という概念にうるさそうなアメリカでもその割合は 17%前後にとどまっています。
ただ今後こうした動きが加速し、さらに 30%クラブなどの意識が浸透すると、以前、「環境に優しい」ということが企業イメージの向上につながったように、女性がいかに進出しているかという状況で、それぞれの企業のイメージに大きな差が出てくることも考えられます。
もちろん、これは企業イメージだけのことではありません。女性の進出の状況は、そのまま国家のイメージにもつながります。統計の取り方に多少の違いはあるものの、日本の場合、上場企業での女性の取締役の割合は、いまだ 1.2パーセントといわれています。
企業イメージ、そして国家のイメージという点からみるならば、この差異は日本にとって深刻です。平等という社会正義の問題のみならず、海外からの投資などにも、この数字は大きな影響を与えるのです。企業イメージがよければ、投資家にとって当然リターンへの期待も大きくなるからです。
日本は女性の社会進出という視点でみれば後進国。そして、日本ではいまだに女性が差別されているというイメージを欧米の多くの人々が抱いていることも、事実として知っておかなければなりません。
数字が最も透明にアピールできる結果であれば、このドイツの試みは、我々にも大いに参考になるのではないでしょうか。