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コロナに強いアクションがとれない、日本の風土と政治とは

“Dear Prime Minister Abe,
I respectfully request action now. Please postpone the school year, advocate social distancing, and promote more testing.
My daughter-in-law was refused a COVID 19 test in Shikoku after days with a fever. She works at the front desk of a major hotel. The doctor clearly got poor guidance from the MHLW. I am certain you can help all of us, but the time to act is now.
A concerned resident and grandfather E.S.”

(安倍首相、私は心から学校での学期開始の延期、ソーシャル・ディスタンシングの提言、診断検査の推進についてアクションを起こすことをお願いします。
私の義理の孫娘は、何日も発熱しているにもかかわらず、四国でコロナウイルスの検査を拒絶されました。彼女は大手ホテルのフロントで勤務しています。医者は明らかに厚労省のガイダンスの不備に翻弄されています。私は首相が我々の苦境に対して、アクションを起こすことを願っています。しかも、時間はあまり残されていないのです。孫娘を心配する一住民より)
― 私の友人E.S.のFacebookへのポストより

露呈する日本社会の決裁の遅滞

 このヘッドラインに紹介した、私のアメリカ人の友人と同様の話を、あちこちで耳にします。
 先日、定期検診でかかりつけのクリニックを訪れた際、それとなく聞いてみると、実際に熱がある人が受診にきても、今では区の相談センターを通して保健所に連絡を取ることを勧めているという返答でした。コロナウイルスが世界を苦しめ、東京もオーバーシュート(爆発的な患者の急増)の瀬戸際にある中で、もし発熱してこのようにたらい回しにされるとしたら、どれだけ心細く、肉体的にも辛いことか、想像しただけでも気の毒になります。そして、「明日はわが身か」と思えば、ぞっとします。
 
 なぜ、日本は緊急時の対応がここまで遅いのでしょうか。
 日本社会の決裁の遅さは、一般的に世界に知られています。日本の組織は充分に根回しをして、コンセンサスを取り、さらに検証を重ねない限り決裁をしません。良い面では準備万端整った上で、全員で前進できることかもしれません。しかし、今回のような緊急時には、その長所の裏側の弱さが突出します。臨機応変に対応することが求められる緊急時には、その場で決裁をし、状況に応じて柔軟に決裁内容を調整してゆく対応が求められるからです。
 欧米流の決裁は、日本の方式の真逆にあります。まず、やろうと決断し、決裁のあと試行錯誤を繰り返し、最終の判断に至るときは当初から方針が大きく変わっていることもよくあります。
 

思い切れない「緊急事態宣言」

 課題は、今世界はウイルスとの「戦争状態」にあるという現実です。
 世界の目で日本の状況を見るならば、沈みかけている船の中で家具の配置を云々しているように見えるのです。在日アメリカ大使館では、日本が積極的にウイルス感染者の検査を行っていないことは、日本での正確な蔓延の状況を図る上でもまずい政策であると、強く是正を求めています。
 しかし、透明な情報公開への確約と、目に見える強いアクションへの政策発表は、今回の緊急事態宣言でも見えてきません。具体的なアクションをして、そこに過ちがあれば、その責任をどこがとるのかという、日本独特の「責任の所在を探す」という常識のために、多くの人が萎縮するのでしょうか。
 
 さらに、日本のピラミッド社会が悪い影響を与えます。地方は中央に、部下は上司に、病院などの組織は、その上部組織を常に見上げながら、その指示に従うことが求められるのです。組織がそれぞれの判断で目の前の状況に対処し、時には上部組織の判断とは異なる対応を決断できる自立性が、各組織構造に欠如しており、人もそれに慣らされているのです。
 その結果、政府といえども、官僚や政党内の力関係の中で動きが鈍ってしまうのでしょう。地方行政は、そんな政府を上として、その動向を見つめながら判断を留保してしまうのです。そこには、法律をどのように解釈するかという様々な検討に時間がかかり、まずは行動に移るという野戦病院的な発想ができない風土が日本にはあるのです。
 
 法律は、人の生活に必要な便宜を図るためにあり、縛られるためにあるのではないという原則を見直さなければなりません。その上で、主権者はあくまでも国民で、その国民が定期的に行政や立法の暴走がないかどうかを選挙で判断する仕組みがしっかりと働いていれば、都市のロックダウン(封鎖)などを含めた緊急時の特別な立法も可能になるはずです。それは、同じ民主主義を国是とするヨーロッパやアメリカでの措置を見れば、おのずとわかることです。
 

政府は情報公開と具体的な行動を

 では、過去に緊急事態の折に超法規的な措置を日本がとらなかったかといえば、決してそうではありません。1977年に、ハイジャックのためにバングラデシュの首都ダッカに緊急着陸した日航機に乗った犯人の要求で、服役拘留中の囚人を釈放した事例などもその中の一つです。まして、今回のコロナウイルスのような大惨事であれば、政府はもう少し大胆で積極的な行動をしても構わないはずです。そのためには、徹底した情報公開と具体的な行動についての明快な説明が必要であることは言うまでもありません。
 
 前回紹介したニューヨークのクオモ州知事は、毎日こうしたブリーフィングを市民に向けて直接行っています。また、最近ではドイツのメルケル首相も、人々の生活を制限することと、民主主義のあり方との関連について、直接国民に向けてしっかりとした説明を行っています。
 
 私の友人のお嬢さんが一刻も早く検査を経て、適切な治療を受けられるよう、現場がしっかりとリーダーシップをとって、そうしたリーダーシップを奨励する権限委譲がなされるためにも、今回のコロナウイルスの問題を通して、日本の制度の改革が求められているのです。
 

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コロナウイルスに関して、今世界がどう向き合っているかという生の声を届けるために、世界の友人に直接行った電話インタビューをYouTubeにアップしています。
アメリカからアジア、ヨーロッパ、そしてアフリカに至る人々の声をYouTubeのIBC
Publishingチャンネル
から閲覧できます。
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『30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法』中山哲成(著)横山カズ(監修)30歳高卒タクシードライバーがゼロから英語をマスターした方法』中山哲成(著)横山カズ(監修)
タクシー乗務員の中山哲成氏は、英語の接客を競い合う『英語おもてなしコンテスト』の最優秀賞受賞者。さらにプロの通訳者や有名予備校の講師らが参加する国内最高峰の英語スピーキングコンテスト「ICEE 2018」では、決勝トーナメ
ント進出の大活躍。
英語力が限りなくゼロで、留学経験はおろか大学受験の経験すらない高卒のタクシー乗務員が、「英語を自由に話すこと」を目標に試行錯誤し、四年間で英語がペラペラ話せるようになった英語学習法のすべてを大公開!

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